貯蓄をしたい、無駄な支出を抑えたいといった家計の見直し。その代表格の1つが住宅ローンの借り換えや繰り上げ返済です。いずれもローンの契約内容やタイミング次第では大きな節約につながります。今回は住宅ローンの繰り上げ返済について、「適したタイミングはいつか?」「繰り上げ返済を行うならいくらぐらいが良いのか?」など、繰り上げ返済の仕組みから実践方法まで確認していきましょう。注意点もありますので、参考にしてください。

住宅ローンの繰り上げ返済とは

毎月コツコツ住宅ローンの返済をする中で、ボーナスや臨時収入があった際に借入残高の一部または全部を前倒しで返済することを「繰り上げ返済」といいます。そして、繰り上げ返済の方法は「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つがあります。

「返済期間短縮型」

前倒しで返済した分、返済期間を短縮させる返済方法です。下記のイメージ図のように、まとめて返済した分、期間が短くなります。それに伴う利息も支払う必要がなくなります。通常、返済額軽減型よりも利息軽減効果は大きくなります。ただし、毎月の返済額が変わらないので、その後の家計管理を行う上で、繰り上げ返済をした効果を実感しにくいかもしれません。

「返済額軽減型」

一方、返済額軽減型は、返済期間は変わりませんが、毎月の返済額を少なくする返済方法です。繰り上げ返済を行った直後から返済額がその分少なくなるため、繰り上げ返済の効果を感じやすいメリットがあります。

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繰り上げ返済をしていい人、いけない人、判断のポイントとその理由は?

繰り上げ返済は大きな利息軽減効果が期待できるため、積極的に行う人も少なくありません。特に最近はネットで手数料が無料(または低額)、かつ少額からこまめに返済できるため、少しでも余裕資金ができたら繰り上げ返済に回している人も少なくありません。当初予定していた利息負担額がどんどん減っていくため、繰り上げ返済を何よりも優先したい気持ちもよく分かります。ただし、注意点もあるため、シミュレーションを通して確認したいと思います。

・当初借入元金   2000万円(ボーナス返済なし)

・当初借入期間 25年 

・借入金利 1.5%(全期間固定)  

・月々の返済額 7万9987円

上のようなローンを組んでいる人が1年後に100万円繰り上げ返済を行った場合、どうなるでしょうか?「返済期間短縮型」、「返済額軽減型」それぞれ確認します。

「返済期間短縮型」の場合、100万円の繰り上げ返済で40万円以上の利息負担が軽減されます。よって、「100万円で40%の利回り。他の金融商品に投資するよりかなり有利」という考え方をしがちですが、これは要注意です。

確かに銀行預金の金利は超低金利でほとんどゼロ。株式や投資信託は値上がり益や配当(分配金)が魅力ですが、値下がりするリスクもあります。「40%の利回り」は大変魅力的ですが、住宅ローンはそもそも「負債」です。株式や投資信託で行う資産運用とはまったく科目が異なるのです。

貯蓄や投資は自分の財産として管理・運用をしていきますが、もし100万円を住宅ローンの繰り上げ返済に使うと、その100万円は手元から無くなってしまいます。「資産を増やす」行為と「負債を減らす」行為は全く別物として考えておく必要があります。

例えば繰り上げ返済をした後に大きな病気をして多額の治療費が必要になるかもしれません。車が故障し買い替えることになるかもしれません。そんな場合にまとまった資金がなければ、フリーローンやカーローンなどを通してお金を借りることも考えられます。

住宅ローンは土地や建物が担保として高く評価されることもあり、各種ローンの中で最も金利の低いローンです。積極的に「最も低いローン」を繰り上げた結果、「高い金利のローン」を借りることになっては本末転倒です。

繰り上げ返済により住宅ローンの金利負担を減らすという観点だけではなく、家計の状況や資産の状況などに視野を広げて判断をしていくことが大切です。
ここまでをまとめますと、「繰り上げ返済をしていい人」は以下のようになります。

・生活費の数カ月分の貯蓄(金融資産)があり、毎月一定の貯蓄もできている

・予期せぬ出費が生じてもある程度対応可能である

・教育費、車の買い換えなど今後のライフプランを明確にしている

繰り上げ返済の適した金額は収入や貯蓄状況によって異なりますが、目先数年の大きな支出を考慮しながら、無理のない範囲内で返済することを意識してください。

「繰り上げ返済をしてはいけない人」は、繰り上げ返済をしていい人の逆となります。手元の金融資産が少ない時に積極的に繰り上げ返済を行うことはあまりおすすめできません。

また、住宅ローンを組んでいる人は通常、団信(団体信用生命保険)に加入しています。返済中に契約者が亡くなった場合はローン残高が保険で返済されることになります。よって住宅ローンを組んだ際に、団信を踏まえ死亡保険の解約や減額など、保険の見直しを行う人も多くいます。

このような場合、住宅ローン残高があることが、ある意味「死亡保障」としての役割を担っているのです。リスク管理の1つとして契約者が死亡するというシナリオも頭の片隅に入れておいてください。そういった時のためにも一定の資産を形成しておくことは大切です。これも繰り上げ返済の利息軽減効果ばかりに目を向けてはいけない理由の1つです。