相続の限定承認とは?相続放棄との違いや複雑な手続きの流れを解説

親が多額の借金や住宅ローンなどを残して亡くなった場合、プラスの資産の範囲でマイナスの資産を相続する「限定承認」があります。今回は、限定承認のメリットや相続放棄との違いを解説します。複雑な手続きや注意点もまとめているので、検討に役立てください。

相続の限定承認とは?

親が多額の借金や住宅ローンを残して亡くなった時、こうしたマイナスの資産を相続したくないという理由から相続放棄を考えることもあるでしょう。しかし、相続放棄をすると、マイナスの資産だけでなく、故人と一緒に住んでいた家や家宝などプラスの資産も相続できなくなります。

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このような場合に検討すべき選択肢が「相続の限定承認」です。限定承認とは、相続財産にプラスの資産とマイナスの資産が混在する時に、プラスの資産の範囲内でマイナスの資産も相続することです。プラスの資産がマイナスの資産を上回る場合は、両者を相殺して残った財産を相続します。逆に債務超過の場合は、故人から引き継ぐ財産の範囲内で借金を支払うことになります。

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限定承認をするべき人はこんな人

次の①~④のようなケースでは、限定承認を検討するといいでしょう。

①故人の財産を相続したいけれど、後から借金が出てくるかもしれない
②遺産を合計すると、プラスの資産よりマイナスの資産の方が多くなると予想される
③故人の住居や大事な形見の品、家宝などは手放したくない
④相続人の一人が家業を引き継いで再建を図りたい

負債の相続がどのくらいか分からない

故人に債務があることが予想される場合は、金額の多寡にかかわらず、限定承認を検討するといいでしょう。限定承認をしておけば、亡くなってから数年後に多額の借金が判明しても、相続した財産の範囲内で弁済するだけで済みます。

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どうしても引き継ぎたい遺産がある

相続財産の中に家宝や自宅不動産など引き継いで残したいものがある場合も限定承認を検討することをおすすめします。限定承認を行うと家庭裁判所を通して今あるプラスの資産を競売などでお金に換えて、借金などの支払いに充てていきます。その際に限定承認者は「先買権(さきがいけん)」という権利を行使でき、守りたい財産を自ら買い受けることが可能です。

家業の後継者に遺産を集中させたい場合は、相続の遺留分放棄を選択することが多いですが、他の相続人が相続放棄をするという方法も可能性として考えられます。さらに、相続を機に債務を整理し、改めて家業を再建していくのであれば限定承認も有効な方法の一つです。ただし、家業を継続する上で重要な取引先から債務がある場合は、限定承認をしてもいいか、慎重に検討する必要があります。限定承認をすると相続人は相続財産の範囲内で債務を引き継ぐことになり、債権者は満額の弁済を受けられるとは限らないため、禍根を残すことになりかねないからです。

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