1月23日(月)、現地時間午後3時にパリのロダン美術館で開催された「ディオール」の2023年春夏オートクチュール コレクション。細かな手仕事の積み重ねによって生み出された芸術的なルックの数々を堪能して。
歌手のジョセフィン・ベイカーにフォーカス
アフリカ系アメリカ人歌手兼ダンサーのジョセフィン・ベイカーからインスピレーションを得た「ディオール」の2023年春夏オートクチュール コレクション。ショーの演出を手掛けたのは、アフリカ系アメリカ人アーティストであるミカリーン・トーマス。ジョセフィン・ベイカーのような黒人や異なるバックグラウンドを持つ女性たちが人種の壁を打ち破り、逆境を乗り越えてパワフルに生きる姿を称える舞台を用意した。
1920年代半ばにジョセフィン・ベイカーは、アーティストやデザイナーたちが憧れた都市パリにアメリカから渡った。当時の固定観念や偏見を打ち破り、ミックスカルチャーが盛んだったキャバレーの世界を広く世に知らしめた人物として知られている。フランスの市民権を取得した彼女は、グラマラスなアイコンとして戦後のヨーロッパで絶賛され、ニューヨークのストランド シアターやカーネギーホールで行われた公演には、「ディオール」をはじめとするフランスのファッションを纏い、登場。カリスマ性をひときわ華やかに引き立てるファッションが、彼女の大きな成功を後押ししたとも言われている。
コレクションに登場するバスローブに見立てたコートは、彼女がステージ前に楽屋でリラックスして過ごす様子をイメージして制作。会場の光を吸収して輝くシルバーのスタッズやスパンコール、体の動きにあわせて揺れるシルバーとゴールドのフリンジは、パフォーマンスを際立たせるステージ衣装を想起させる。
軽やかなベルベットやダイナミックなシワ加工、キルティングが用いられたオープンスタイルも登場。インナーに用いた軽やかなサテンのアンダーウェアも新鮮な印象を与える。シルクやベルベットに、しわ加工を施すことで、ファブリックにリズミカルな表情をプラスした。
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卓越したサヴォワールフェールの世界へ
繊細で夢のように美しいクチュールピースの創作を支える「ディオール」のサヴォワールフェール。アトリエに集結したクチュリエたちがもつ高度な技術は、オートクチュールにおけるクリエーションの要といえる。中でも、象徴的なルックの制作工程を特別に公開。
Look 1
ファーストルックは、ジョセフィン・ベイカーが楽屋からステージに登場する前に身に着けていた心地よいバスローブを想起させるようなスタイル。インナーのボディ―スーツは、パリで唯一かつ最古のオーダーメイド ランジェリーを扱うアトリエ、CADOLLEとのコラボレーションによって制作されたもの。1950年代のアーカイブピースからインスピレーションを得たというスモッキングの技術によって、伸縮性のある素材に施されたシャーリングが、ボディーにフィットしながら美しいギャザーを生み出している。
©Sophie Carre
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Look 19
伝統的な刺繍(ししゅう)の技法を用いて制作されたルック19。乱れのない完璧な格子の刺繍が印象的なこのルックは、扱いの難しいとされる布と糸を用いて、古書で伝えられている伝統的な製法を駆使している。オートクチュールメゾンと協業するテキスタイル専門のアトリエPALOMAで長い制作時間をかけ、熟練の職人の手作業によって完成した。
©Sophie Carre
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Look 57, 58, 59, 60
コレクションのラスト4ルックを飾ったベルベットドレス。特別に開発された技術で、ベルベットに不規則かつ絵画を描くような自由なタッチでアイロンを当てる。このようにして、まっさらなベルベット生地にヴィンテージ感のある繊細なしわ加工を施すことで、ルックに不規則なリズムをもたらし、ファブリックに“生命力”を吹き込んだ。
©Sophie Carre
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