【岩手県大槌町】海と大地の恵みから生まれた新名物料理《前編》

“世界の三陸”に位置する『岩手県大槌町』の新名物料理を求めて

東北最大の県『岩手』。その海側、いわゆる『三陸』に位置するのが、ここ『大槌町』です。

海と山の両方に囲まれたこの地域は、その豊かな自然の恩恵を受けた、まさに「食材の宝庫」とも言えるべき場所。そして、昨年末に発売となった日本酒の新銘柄「源水 純米吟醸」を追いかけた、筆者個人的に思い入れのある場所でもあります。

【岩手県大槌町】清き湧水が紡ぎ生まれた「源水 純米吟醸」《前編》

https://gohantabi.jp/article/18172

その日本酒に続き、今回追いかけるのは「新名物料理」。ここ『大槌町』で昔から親しまれてきた食材たちをギュッと詰め込む新名物料理の主役は、海と大地の恵み ── 

「鮭(ギンザケ)」と「くるみ」です。

まずはこの2つの食材について見ていくことにしましょう。

主役食材 その1「鮭(ギンザケ)」

『大槌町』と鮭との関わりを語る上で外せないのが、「新巻鮭」。

大槌産の新巻鮭は「南部鼻曲がり鮭」や「おおつち新巻鮭」などと呼ばれ、古来より正月の贈答品として大変重宝されてきました。

鮭の内臓を取り除き、塩漬けにする ── その加工法は江戸時代に確立され、この令和の時代にまで脈々と受け継がれているのだそう。「大槌の暮らしの一端を、鮭が長らく支えてきた」と言っても過言ではないはずです。

そして、今回の新名物料理に使われるのが、大槌産ギンザケ「桃畑学園サーモン」

このギンザケの最大の特徴は、「脂分が控えめで、さっぱりとした味わい」にあります。

脂分が控えめなのは、『北山山地』から流れ入る湧水 = 淡水で育てられたため。全国有数の水質の高さを誇るこの湧水は、お米や日本酒造りのみならず、鮭の養殖にも活用されているのです。

ただ、『大槌町』における鮭の養殖は、決して昔から盛んだった訳ではありません。

2011年に突如発生した「東日本大震災」。『大槌町』は甚大な被害を受けたエリアのひとつであり、世界的な漁場である『三陸』、水産業も大きな損害を被りました。

海に出た鮭が、数年経っても帰ってこない ── 

そんな現実を目の当たりにして、「いつまでも待っててはダメだ。とにかく動かなければ前に進めない、という想いだった」と、金﨑 拓也理事(大槌復光社協同組合)はおっしゃいます。

ちなみに、「有限会社 小松組」の代表取締役専務でもあられる金﨑さんの主戦場は、建設業界です。「養殖のノウハウなんて全くない状態だった」にも関わらず、異業種である水産業に乗り出したのは2019年のこと。

翌2020年1月には、養殖の事業化に向けた実証実験をスタートさせます。「ニッスイさんをはじめ、関係者の皆さんに厚くサポートしていただき」ながら、初年度には約2,000尾の稚魚を育成。

そして、2021年6月。ついに、岩手初の淡水ギンザケ「桃畑学園サーモン」の鮮魚販売にこぎつけます。

なお、5期目に入る今期は、淡水ギンザケだけで10トンもの出荷を目標にされているのだそう。脂分が控えめな「桃畑学園サーモン」は新巻鮭の加工にも適しており、まさに『大槌町』のキラーコンテンツとして期待が高まります。

私も「桃畑学園サーモン」を使った新名物料理を楽しみにしているひとりです ── そうおっしゃる金﨑さんの笑顔が印象的でした。

それにしても、「桃畑学園サーモン」なんて変わった名前ですよね?

この印象的な名前は、鮭の稚魚が育てられる『桃畑養魚場』を学園に見立てたところからきています。

『桃畑養魚場』で育てられた稚魚は、11月頃に「海組」と「川組」の2つのグループに分けられ、翌年6月の卒園 = 出荷を機にそれぞれ活躍の場へと巣立っていきます。

海組は「岩手大槌サーモン」と名付けられ、全国の飲食店や宿泊施設へ。

一方、川組は「桃畑学園サーモン」として『大槌町』に残り、地元の活性化に貢献します。例えば、地域イベントに駆り出されたり、お土産用に加工されたりといった具合に。そして、今回、新名物料理の主役に抜擢されたことで、その活躍の場をまた1つ広げることになった訳です。

主役食材 その2「くるみ」

「くるみ餅」や「くるみ田楽」、「ほろほろ(白い御飯の上に、くるみや味噌漬け大根、ゆがいた山菜のうこぎを刻んでのせたもの)」 ───

東北最大の面積を有する『岩手県』には、くるみを使ったさまざまな郷土料理が存在します。これは岩手県内に和くるみが自生するエリアが多いことが影響しているのだそう。もちろん、ここ『大槌町』も例外ではありません。いまや日本国内に流通するくるみの90%以上が外国産ですから、これはまさに“大地の恵み”と言っても過言ではないでしょう。

ちなみに、県内北部や沿岸部などでは「おいしい = くるみ味がする」という方言があるのだそう。こんなところからも、くるみとの近しい距離感を感じられますね。

ところで、皆さんは「オメガ3脂肪酸」をご存知でしょうか?

ご存知ない方も「DHA」や「EPA」といった言葉なら、きっと1度は耳にしたことがあるのではないかと思います。

「DHA(ドコサヘキサエン酸)」や「EPA(エイコサペンタエン酸)」が、まさにオメガ3脂肪酸の一種。中性脂肪や悪玉コレステロールを減らしたり、血流の改善や動脈硬化の予防、美容・ダイエットなどにも効果があると言われています。

そして、この「DHA」や「EPA」を多く含むのが、すばり魚介類。秋刀魚や鯖などのいわゆる青魚はもちろん、ギンザケやウナギなど脂の多い品種も例外ではありません。

一方、植物性のオメガ3脂肪酸である「α-リノレン酸」を多く含むのが、くるみ。ナッツ類の中では群を抜いて多く含まれていることが分かっています。ちなみに、この「α-リノレン酸」が我々の体内に吸収されると、「DHA」や「EPA」に変換されます。

鮭(ギンザケ)と、くるみ ── 

これら『大槌町』で昔から親しまれてきた食材たちの共演・協奏は、そこから『大槌町』を感じると同時に、我々の健康面にも大いに恩恵を受けられるものと言えそうです。

新名物料理の完成に向けて

『大槌町』に縁のある2つの食材「鮭(ギンザケ)」と「くるみ」。次回後編では、これらが新名物料理としていよいよひとつになります。

お料理を提供予定のお店もご紹介しますので、お楽しみに!

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大槌町

岩手県上閉伊郡大槌町

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*この記事は2023年1月時点の情報を基に作成しています。

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ライター:ヤマネコ