レジスタントプロテインは、難消化性たんぱく質の一種で、便秘改善やコレステロールの排出促進、肥満抑制などの効果がわかっています。これを多く含む「甘酒」を被験者に飲んでもらう試験を行った結果、肌質の改善や肥満予防、腸の炎症予防、免疫機能の強化など、多くの健康作用が期待できることがわかりました。【解説】尾関健二(金沢工業大学バイオ・化学部教授)

解説者のプロフィール

尾関健二(おぜき・けんじ)

金沢工業大学バイオ・化学部教授。農学博士。ゲノム生物工学研究所研究員。岐阜大学大学院農学研究科修士課程(農芸化学)修了。大関酒造入社後、醸造資源研究所出向、築野食品工業企画開発室テクニカルアドバイザーなどを経て現職。専門はこうじ菌や酵母などの発酵・酵素利用、発酵微生物の分子育種、機能性食品・化粧品素材の開発など。

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腸内の善玉菌が明らかに増えた!

私たちの研究グループは、米のたんぱく質成分の1つで、甘酒にも含まれる「レジスタントプロテイン」に着目して研究を行っています。

レジスタントプロテインは、ヒトの体内で消化や吸収がされにくい、難消化性たんぱく質の一種です。食物繊維に近い機能を持ち、便秘改善やコレステロールの排出促進、肥満抑制などの効果がわかっています。

私たちはレジスタントプロテインを多く含む甘酒を被験者に飲んでもらい、その効果を調べる試験いくつか行いました。

まずは、20代の男女6名を対象に、甘酒を28日間飲んでもらい、上腕の内側の皮膚の角質水分量を測定しました。すると、レジスタントプロテインを多く含む甘酒を飲んだ人たちでは、角質の水分量が有意に増加し、飲用終了後もその状態が維持されたのです。

このことから、レジスタントプロテインは肌のツヤや潤いを高める作用があることが考えられます。

また、20~50代の男女25名を対象に行った試験では、レジスタントプロテインを多く含む甘酒を30日間飲んでもらい、飲用前と飲用後で便中の腸内細菌を調べました。

その結果、レジスタントプロテインを多く含む甘酒の飲用後、善玉菌の割合が増えることが判明。善玉菌である酪酸産生菌の占有率が、飲用前の平均12.9%から、飲用後は平均14.9%と、2ポイントも上がったのです。

同じく善玉菌であるフィーカバクテリウム属も、甘酒の飲用後に占有率が高まりました。レジスタントプロテインの摂取で腸内細菌叢にこれほど明らかな変化が見られたという研究成果は、世界的に見てもほとんど例がないものです。

レジスタントプロテインを多く含む甘酒飲料前後の腸内細菌の変化。
レジスタントプロテインによって善玉菌の占有率が増加した。