相続にかかる費用とは?相続財産別の手続きや必要書類、注意点を解説

相続には「相続税」以外にも、さまざまな費用がかかります。相続する財産の種類によっても、必要な手続きやかかる費用の内訳が異なります。いざというときに慌てずに済むよう、どんな費用がどのくらいかかるのか、目安を確認しておきましょう。

不動産の相続の流れ

【STEP1】不動産についての情報を集める
被相続人の固定資産税納税通知書などから、被相続人が所有している不動産について地番や家屋番号を確認します。

【STEP2】遺言または相続協議で相続人を決める
遺言書がある場合は、その遺言で不動産を引き継ぐ人を確認します。遺言書がない場合は、相続人による遺産分割協議で遺産の分け方を話し合い、不動産を誰が相続するかを決めます。決めた内容に全員が合意したら、それを遺産分割協議書にまとめ、相続人全員の署名・捺印をします。

【STEP3】登記に必要な書類を収集、作成する
前述した登記に必要な書類を収集、作成します。

【STEP4】管轄の法務局へ申請する
対象の不動産の住所地を管轄する法務局の不動産登記窓口で登記申請書と添付書類一式を提出して申請します。なお、登記申請には登録免許税の納付が必要で、先に法務局内の別の窓口でその分の収入印紙を購入し、申請書に貼り付けて提出します。

【STEP5】登記完了
法務局での書類審査と登記にかかる期間は、書類に不備や不足がない場合は1週間~10日程度。登記が済んだら、登記識別情報の通知や登記完了証を受け取ります。

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もちろん、預金や不動産以外の財産の相続にもそれぞれ費用がかかります。たとえば、有価証券、自動車の場合はそれぞれ次のような費用がかかります。

有価証券の相続にかかる手続きと費用

基本的に預金の相続と同様の書類(戸籍謄本、印鑑証明など)を証券会社に提出する必要があるため、その交付手数料が必要です。証券会社の相続手続きでは、同じ証券会社に相続人名義の管理口座を新たに開設し、その口座に被相続人の有価証券を移動します。
その後、名義変更の手続きが完了すれば管理口座に移した有価証券の売却が可能になります。
一連の手続きを司法書士などの専門家に委託した場合の委託料は、1件あたり数万円~10万円程度です。

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自動車の相続にかかる手続きと費用

被相続人が所有していた自動車を相続した人が乗り続ける場合も、売却・廃車する場合も、必ず運輸局に届け出て名義変更をする必要があります。
相続に伴う自動車の名義変更には、次の書類の提出が必要です。

・自動車検査証
・車庫証明書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、または除籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・自動車の新たな所有者となる相続人の印鑑証明書
・車の新たな所有者となる相続人の実印
・遺産分割協議書

自動車の相続には、これらの書類の交付手数料に加え、次のような費用もかかります。

・移転登録手数料 2,500円
・車庫証明取得費用 2,500円~3,500円(都道府県によって異なる)
・ナンバープレート購入費 約1,500円(ナンバー交換する場合のみ)

なお、自動車相続の手続きを行う運輸局は平日しか業務を行っていないため、司法書士などの専門家に手続きを委託する人も多く、その場合の手数料の相場は2万円~5万円とされています。

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相続手続きの注意点

相続の手続きには、細かい注意点があり、守れていないとさらに費用がかさむ可能性があります。

自筆遺言の場合は検認が必要

被相続人による遺言書がある場合は、原則として、その内容に沿って相続が行われます。ただし、遺言が公正証書遺言(公証人が被相続人の依頼に基づいて作成した遺言)ではなく、個人的に作成した自筆遺言だった場合は、家庭裁判所の検認(遺言書の内容の確認)が必要です。

不動産の相続登記にあたって、家庭裁判所の検認を受けなくてはならず、検認を受けていない遺言書では登記の手続きができないためです。なお、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立ち会いの上で開封することが民法で定められており、家庭裁判所以外の場所で開封してしまうと5万円以下の過料が課されることになります。

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遺産分割協議書は専門家に依頼

遺言書がない場合は、法定相続人が遺産分割に関する協議をし、その結果を遺産分割協議書にまとめます。遺産分割協議書には、「パソコンで作成可能だが、署名だけは手書きにする」「被相続人の最終本籍地と住所地を記載する」など、いくつかのルールがあり、不備があると相続に関する手続きができなくなる可能性があります。
スムーズに手続きを進めるために、遺産分割協議書は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。その際の手数料は3~5万円が目安です。

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相続の手続きには期限がある

自力で手続きを行うことは不可能ではありません、ただし、相続手続きには期限があることに注意してください。

ここまで見てきた通り、相続には様々な書類を準備せねばならず、手続きも煩雑です。そのため、自力での手続きをあきらめ、司法書士などの専門家に代行を委託する人も少なくありません。手続きにかかる費用や時間の観点から相続手続きの進め方を検討する上で以下の、期限を参考にしてみてください。

■期限がある手続きの例
・相続放棄:相続があることを知ってから3ヶ月以内
・準確定申告(被相続人に代わって行う確定申告):相続開始から4ヶ月以内
・相続税の申告:相続開始から10ヶ月以内
・遺留分の減殺請求(法定相続人として遺留分を取り戻すための請求):相続があったことを知ってから1年以内

これらの期限を過ぎてしまうと大きな不利益を被る恐れがあるので、相続の手続きは常に早めを心がけることが大切です。