「書店ゼロの町」全国で約3割の“本離れ”  自治体が取り組む「子どもの読書活動」推進法の中身とは

書店のない市町村が全国で26.2%に上ることが分かった。これは2022年12月8日、出版文化振興財団(JPIC)により明らかにされたものである。

調査によると、全国で書店が全くない市町村の割合は、沖縄県56.1%、長野県51.9%、奈良県51.3%と続く。さらに、この15年で書店の数は約40%減少しており、紙の本離れが確実に進んでいる。

一方で日本には「子どもの読書活動の推進に関する法律」があり、第九条によれば、市町村は子どもの読書活動の推進に関する施策を策定するように努めなければならない。このような中で、自治体はどのような取り組みを行なっているのだろうか。

子どもが本と触れあう“機会”を設ける

「千代田区子ども読書活動推進計画」、「千代田区子ども読書調査」など、子どもと読書にまつわる施策に積極的な東京都千代田区で文化振興課長を務める加藤伸昭さんに話を聞いた。


取材を受ける千代田区文化振興課長の加藤伸昭さん(1月下旬/弁護士JP編集部)

加藤さんは区の取り組みについて「『子どもの読書活動の推進に関する法律』が平成13年に、『文字・活字文化振興法』が平成17年に制定され、それを受けて平成19年に『子ども読書活動推進計画』に区として取り組むようになりました。平成19年の5月には千代田区の庁舎が新しくなり、9階と10階に千代田図書館が設置されたため、『子ども読書活動推進計画』は新千代田図書館での新たな取り組みを示すという側面も持っていました」と話す。

さらに「千代田区の場合は、区立図書館の司書が小学校・中学校の図書館や保育園・幼稚園・こども園を訪れ、本の読み聞かせや本の整理、図書館の利用指導などを行っています。このようにして子どもが本と触れあう機会を設け、その後の読書活動の推進につなげています」と、区独自の取り組みについても説明。図書館の充実にとどまらず、司書を交え地域での読書体験の推進に力を入れている。

千代田区ならではの「文学賞」も

さらにユニークなのが、世界一とも称される古書街・神保町を有する千代田区ならではの施策だ。

「神田神保町の“古本まつり”は非常に有名で、例年10月末から11月上旬まで開催しています。また千代田区は『ちよだ文学賞』『ちよだジュニア文学賞』を主催しており、作品を募集しています。文学賞の授賞式も“古本まつり”の中で行っています」(加藤さん)


秋に行われる「神田古本まつり」は多くの人で賑わう(2022年10月下旬/弁護士JP編集部)

書店のない自治体で「電子図書館」活用へ

今回の取材では加藤さんから「スマホで書籍購入や電子書籍をみることが可能な時代では、無理に書店を増やそう、存続させようというのは、自然な流れではないと思われる」という指摘もあった。確かに時代を考えると、ここから書店を増やしていくことは難しいのかもしれない。

そのような中で、各自治体は工夫して図書館の活用を推進し、その一つとして電子図書館サービスをスタートさせている市町村もある。千代田区にも千代田Web図書館があり、千代田区に在住・在勤・在学であれば誰でも利用可能である。

また、先ほどのデータで書店ゼロの市町村が全国で2番目に多かった長野県は、2022年8月より「デジとしょ信州」という電子図書館を導入。県民がよりスムーズに読書体験をできるよう取り組みを進めている。

書店の数は減り続けているが、各自治体のさまざまな取り組みが根付くことで、読書好きな子どもが増え、さらには地域の活性化にもつながっていくことだろう。