有給休暇の日数はどうやって決まる?

前項の要件を2つ満たせば、雇用形態に関係なく有給休暇が付与されますが、具体的にどれくらいの日数をもらえるのか気になりますよね。有給休暇は、長く勤めれば勤めるほど付与される日数も増えていく仕組みになっています。

正社員とパート・アルバイトで付与される日数が違いますので、それぞれの雇用形態の勤続年数でどれくらい付与されるのか具体的にみていきましょう。

正社員の付与日数

フルタイムで働く正社員の場合、半年間勤務すれば10日間の有給休暇が付与されます。その後勤続年数が長くなれば年々付与される日数は増えていき、6年6カ月以上継続勤務すると毎年20日の有給休暇が付与されます。

【通常の労働者の付与日数】


出典:厚生労働省「リーフレットシリーズ労基法39条」

例えば入社後半年間勤務した場合、有給休暇が10日間付与され、その1年後も継続して勤務していれば、さらに11日間付与されます。もしその間有給休暇を使っていなければ、入社1年6カ月後には21日間の有給休暇を所有していることとなります。

パート・アルバイトの付与日数

週の所定労働日数が4日以下、週の所定労働時間が30時間未満のパートやアルバイトの雇用形態で勤務する労働者の場合でも、下表のとおり有給休暇が付与されます。

【週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数】


出典:厚生労働省「リーフレットシリーズ労基法39条」

例えば週3日のパート労働者でも所定労働日数が年間121日以上であれば、入社後半年後には5日間の有給休暇が付与されます。

また、パート労働者であっても、週の所定労働日数が5日以上、かつ1年間の所定労働日数が217日以上あるか、労働日数にかかわらず週の所定労働時間が30時間以上の労働者については、前述の正社員同様の日数が付与されます。

有給休暇には期限があり、付与されてから2年間で消滅してしまいます。例えば先ほどの正社員の場合、入社後2年6カ月後に付与される有給休暇は12日間に増えますが、今まで使っていなかった21日間と合算して33日間になるわけではありません。最初の6か月で取得した10日間分の有給休暇が消滅してしまうのです。したがって2年6カ月後に取得できる有給休暇は23日間となります。

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その他有給休暇について知っておきたいこと


ポイント
【画像出典元】「stock.adobe.com/takasu」

その他にも有給休暇取得の義務化や、繰り越しの条件や期限について詳しく見ていきます。

有給休暇取得が義務化

2019年4月の働き方改革(労働基準法の改正)により、全ての使用者に対して「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられました。

使用者すなわち企業は年次有給休暇を10日以上付与されている正社員、派遣社員、契約社員、パート・アルバイトなどの労働者に対して毎年5日間の有給休暇を確実に取得させなければいけません。

この有給休暇取得の義務化の背景には、同僚や上司への気兼ねなどにより、有給休暇取得をためらうことなく、促進させることが狙いとされています。

有給休暇が付与されないケース

有給休暇の付与は出勤率8割以上が条件です。出勤率が8割に満たなかった年があればその年は有給休暇が付与されません。

しかし、出勤率が8割に満たない年でも継続勤務年数には含まれるので、次の年出勤率が8割以上となれば継続勤務年数に応じた有給休暇が付与されます。

有給休暇の繰り越しの条件と期限

付与された有給休暇を使い切らなければ、翌年に繰り越すことができます。ただし、前述したように有給休暇には期限があり、労働基準法により付与された日から2年間と定められています。よって2年以内に取得しないと有給休暇は消滅してしまいます。

そして繰り越せる最大日数は20日間です。継続勤務が6年6カ月以上の場合、毎年20日間付与されるので、繰り越された20日間を加算すると最大で保有できる有給休暇は40日になります。

毎年5日間の取得義務があるので、最大で保有できる日数は35日と間違えやすいのですが、繰り越した有給休暇は古い順に消滅(失効)していき最大20日間繰り越せるので、次の年新たに付与される有給休暇と併せると最大40日間保有できることになります。

休む理由はなんでもいい

有給休暇を取得する理由について、法律上会社へ伝える必要はありません。多くの場合「私用のため」としています。もし上司や先輩から取得する理由を聞かれても答える義務はありません。「私用のため」とだけ伝えて休むことができます。

休みたい日は労働者が決め、会社はそれに従う

有給休暇を取得する日は労働者が自由に決めることができます。会社は労働者から有給休暇取得の申し出があった指定の日について希望に従う休暇を与える必要があります。

企業が休暇日を変更する権利もある

休みたい日を自由に決められるとはいえ、労働者が一斉に同じ日の有給休暇取得を申請してくると業務に支障を来します。会社側は事業の正常な運営が妨げられると判断した場合は、労働者の休暇日を変更する権利「時季変更権」が認められています。

ただし忙しいからというだけの理由ではこの権利は認められません。繁忙期などに一度に数人の方から休暇取得の申請があった場合など明らかに業務に支障を来す場合にのみ時季変更権は認められています。

使用者が労働者にしてはいけないこと

有給休暇を取得する際、使用者は労働者に対して取得する理由を聞いたり、不利益になることをしたりしてはいけません。有給休暇取得に関して以下のような行為はしてはいけないことになっています。

有給休暇取得の理由を聞き取り、理由によって拒否する
有給休暇を労働者が希望する日程で取得するのを拒否する(ただし、従業員の有給休暇取得によって事業の正常な運営が妨げられる場合、企業は「時季変更権」で日程を変更させることができるため、例外もあります)
有給休暇の取得によって、給与面や昇進面で不利な扱いをする(有給休暇を取得すると賞与が減るなど)