SNSにあふれる「闇バイト」募集の“甘いワナ” Twitter、Instagram、Tiktok各社に「対策」を聞いた

5月8日午後、銀座で白昼堂々行われた強盗事件に衝撃を受けた人は少なくないだろう。この事件で逮捕されたのは、横浜市に住む16〜19歳の“少年”4人。本件については捜査中で動機など詳細はいまだ明らかになっていないが、このところ全国で相次いで発生している「闇バイト」による事件を連想した人も多いのではないだろうか。

“捨て駒”になる若者たち

闇バイトは今や社会問題となり、各都道府県警察も注意喚起しているが、いわゆる「実行役」として“捨て駒”になる若者の多くが、SNSを介して犯罪に巻き込まれていると見られている。

警視庁は「『高額』『即日現金』『高額即金』『副業』『ハンドキャリー』『書類を受け取るだけ』『行動確認・現地調査』等の言葉に注意してください」と呼びかけているが、SNSでこれらのキーワードを検索すれば、「闇バイトの募集」と思われる投稿が山のようにヒットする。

SNS運営会社の対策は?

闇バイトに応募した若者の多くが、応募の際に犯罪組織へ身分証明書を提出しているため、「やめたい」と思っても「家に行く」「家族に危害を加える」など脅され、逮捕されるまでやめることができないという。

判断能力が十分でない若者たちは「楽に稼げるから」と軽い気持ちで応募しているのかもしれないが、逮捕後は懲役刑や、被害者へ巨額の損害賠償(未成年の場合は保護者へ請求)などあまりに大きな代償が待っている。

闇バイトによる事件が相次ぐ中、“捨て駒”にされる若者たちと犯罪組織の“出会いの場”となっているSNSでは、どのような対策を講じているのだろうか。Twitter、Instagram、TikTokの運営会社に質問状を送ると、以下の回答が得られた。

【Twitter】

自動返信で以下のメールが届いた。

今年3月19日にイーロン・マスク氏が自身のTwitterで、広報メールアドレスが上記の絵文字で自動応答するようになったと発信していたが、質問状を送ってみると、現在もその設定が適応されているようだった。マスク氏は闇バイトの深刻さや、Twitterが闇バイト募集に使われている現状について把握しているのだろうか…。

【Instagram】

・Metaのコミュニティ規定では、意図的に他者を欺いたり、故意に虚偽の表示をしたりするなどして他者の金銭または財産を詐取したり、搾取するコンテンツは許可していません。これには、弊社サービスを利用してこうした行為を手配または宣伝しようとするコンテンツも含まれます。また、闇バイトのような求人詐欺は「不正行為及び詐欺」として禁じられています。詳細については、こちら(https://transparency.fb.com/ja-jp/policies/community-standards/fraud-deception/)をご覧ください。

・また、Metaでは、特定の犯罪行為や有害行為について、これらを助長、計画、宣伝すること、またはそのような行為を認めることを禁止しています。詳細については、こちら(https://transparency.fb.com/ja-jp/policies/community-standards/coordinating-harm-publicizing-crime/)をご覧ください。

・Metaでは機械学習技術などのテクノロジー、コミュニティからの報告、コンテンツモデレーションチームによる報告(https://www.facebook.com/help/263149623790594/)のレビューなどを組み合わせて、コミュニティ規定を施行しています。私たちのグローバルチームは日本語を含む70種類以上に及ぶ言語に対応しており、24時間体制でコンテンツを審査しています。

・昨今発生している事件を受け、当社のポリシーに違反するコンテンツを削除したほか、利用者が今後このようなコンテンツを発見しづらくなるようにする措置を講じました。

【TikTok】

TikTokでは、以下の項目で犯罪、または犯罪を助長するコンテンツへの対策を実施しています。

■利用規約・コミュニティガイドライン
TikTokでは、ユーザーの皆様に安心・安全にご利用いただくため、サービス利用規約及びコミュニティガイドラインを設けています。
TikTokのコミュニティガイドラインとサービス利用規約に違反していることが判明すると、アカウントが永久停止される場合もあります。
また、一部、犯罪に関する注意喚起を促す動画など、”許可されるコンテンツ”としてアップされる場合もあります。

1)TikTokのサービス利用規約では以下通り記載しております。犯罪・犯罪を助長する内容、方法は禁止されております。
https://www.tiktok.com/legal/page/row/terms-of-service/ja-JP

(一部抜粋)
5.お客様による本サービスのご利用
お客様が本サービスにアクセスしまたは本サービスを利用するにあたり、本規約および適用されるすべての法令を遵守してください。お客様は、以下の事項を行うことはできません。
・犯罪、危険行為、自虐行為等を構成するもしくは助長する内容、または、それらの方法を示す内容

2)TikTokのコミュニティガイドライン(https://www.tiktok.com/community-guidelines/ja-jp/)では、犯罪行為、犯罪行為を助長するコンテンツは禁止しています。差し迫った脅威がある場合は、関連する法執行機関に報告します。

(一部抜粋)
暴力行為と犯罪行為
TikTokは、物理的な衝突を起こさない方法で人々を結び付けることに取り組んでいます。暴力に関連するオンラインコンテンツは現実世界に害を及ぼす可能性があることを、私たちは認識しています。暴力的脅威、暴力の扇動、人々や動物、建造物に害を及ぼす可能性がある犯罪行為の助長は許可しません。生命身体に対する具体的かつ現実的な、差し迫った脅威がある場合は、関連する法執行機関に報告します。

削除した内容などについては定期的に透明性レポートも発表しております。
https://www.tiktok.com/transparency/ja-jp/reports/

■コンテンツモデレーション
TikTokでは24時間365日、投稿される動画投稿やLIVE配信を機械と人の目両方で審査しております。上記コミュニティガイドラインに違反している動画は削除などの対応を行います。また、アカウントを永久停止することもあります。

■アプリ内機能
「報告する」ボタンの設置
視聴している動画やアカウントに対して、”不適切だ”と感じた場合、ユーザー様より通報していただける「報告する」ボタンも設置しております。「報告する」ボタンより通報されたのち、再審査にかけることができます。

■安心・安全にご利用いただくための啓発活動
上記以外にも、TikTokのユーザーの皆様に安心・安全にご利用いただくための安全啓発活動も実施しています。

1)安全な利用を促す啓発動画を制作し、TikTok安全推進チーム(https://www.tiktok.com/@tiktoksafety_jp?)アカウントなどから発信しています。

2)政府の「サイバーセキュリティ月間」「自殺予防週間」「若年層の性暴力被害予防月間」等に合わせた啓発キャンペーンも定期的に実施しており、若年層に届きやすい啓発コンテンツとなるように人気のTikTokクリエイターの方々とも連携し、積極的に取り組んでいます。 また、青少年等が犯罪に加担してしまう背景は家庭環境やいじめ、虐待など多様です。その背景にある要因をカバーできるよう、「メンタルヘルス」について理解を高めていく取り組みも外部専門家と連携し、実施しています。

・2022/9/12 TikTok、「#大切なひとを守ろう」をテーマに自殺予防・メンタルヘルス啓発キャンペーンを実施
https://note.com/tiktok/n/nbd5c82732c86?magazine_key=m64d5db8626a1 
・2023/3/1TikTok、2023年サイバーセキュリティ月間において、「#大切なひとを守ろう」をテーマとしたネット上の性暴力防止の啓発キャンペーンをTikTokクリエイターやNPOと実施
https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/tiktoksafetycyber

3)アプリ内のみならず、実際に高校等を訪問して安心安全啓発セミナーを実施したり、親子向けの安心安全啓発セミナーを実施するなど、外部の教育機関等と連携した啓発活動も実施しています。

4)有識者・著名人にもご参加いただき、デジタル性暴力の防止や、安心安全に関するオンラインフォーラムを開催し、TikTok LIVE配信しています。

SNS利用者に求められる「リテラシー」

Twitterは不明だが、InstagramとTikTokでは対策を講じているものの、闇バイトが巧妙な手口で若者たちを誘い込むという性質上、それぞれのSNS上からの“根絶”には苦心しているのではないかと推察された。

プラットフォーム側の対策に頼りきるのではなく、SNSの利用者自身もリテラシーを持って“自衛”することが大事だということだろう。