高級ブランド「FENDI」“はぎれ”販売で書類送検…ダイソーと仕入れ担当社員“連帯責任”問われたワケ

今年3月3日、高級ブランド「FENDI(フェンディ)」の規格に合格しなかった布が、はぎれとなって100円ショップ「ダイソー」で販売されたとして、ダイソーを展開する大創産業(広島県東広島市)と、仕入れ担当の20代女性社員が商標法違反の疑いで横浜地検に書類送検された(※3月28日にダイソーと仕入れ担当者は不起訴)。

もともとSNS上では昨年7月に、「ダイソーでFENDIのはぎれが売っている」と話題になっていたもの。ダイソーによれば、捜査機関からの指摘を受け、商品を即時販売停止し、全面的に捜査に協力していたというが、SNSでの騒動からおよそ8か月後となる3月に書類送検となった。

送検時の報道によれば、社員は仕入れの経緯について「仕入れ先から大丈夫と言われ、それ以上確認しなかった」と供述したという。一方のダイソーは「弊社と弊社社員が商標法違反の容疑で書類送検されたことは、誠に残念なことと考えております。弊社としましては、引き続き捜査に誠実かつ全面的に協力してまいるとともに、本件を重く受け止め、品質管理体制の一層の強化に努め再発防止に向けて万全を期してまいります」とコメントを発表している。

商標法は企業と従業員の「連帯責任」?

仕入れ担当者はダイソーの従業員であり、会社名義で仕入れた“はぎれ”が、店舗で販売されたという今回のケース。社員の“職務”が法に触れ企業が責任を負うだけではなく、その個人も共に送検され“連帯責任”となったのはなぜか。刑事事件や一般企業法務に多く対応する池内満弁護士に話を聞いた。

今回の事件では、なぜ企業(ダイソー)も、仕入れ担当の社員個人の責任も共に問われたのでしょうか?

池内弁護士:商標法には「両罰規定」といって、商標法に違反した従業員等の「行為者」を罰する他、「法人」も罰する規定があるためです。

商標法上では、個人も企業もいずれも必ず責任を問われるということでしょうか。

池内弁護士:はい。本件は珍しいものではなく、企業の従業員が職務上行っていたことだとしても、違反した者が処罰されるのは通常です。

商標法上では、基本的には行為者である個人がまず責任を問われますので、企業で仕入れなどを扱う部署の担当者は、ご自分の行為や判断が法令に違反しないか常に気に掛ける必要があります。

疑わしいと感じたらまず“調査”

具体的にアパレルや雑貨など企業の仕入れ担当者が「商標法」について気を付けるべきことがあれば教えてください。

池内弁護士:商標は登録されていて、調査可能なものです。「仕入れ先に大丈夫と言われた」としても、仕入れ担当者が少しでも疑わしいと感じたものであれば、調査するのが無難です。社内に法務部や商標に詳しい部署があれば、そこに調査を依頼することや顧問弁護士や特許事務所があれば、そこに確認をするのがいいでしょう。

また、仕入れ担当者は、仕入れの物品について法令違反のおそれがあると気づくために商標法や著作権法、独占禁止法などの仕入れの業務に関連する法令についての習得や業界についても精通している必要があります。会社のほうでも社員向けに法令の習得のための研修などをして、社員が法令違反をしないよう予防に努めることも必須でしょう。

商標法の他に、業務上行ったことについて、故意ではなかったとしても個人の責任が問われる可能性のある法律があれば教えてください。

池内弁護士:入札談合や優位的地位の濫用などを禁ずる「独占禁止法」や、インサイダー取引などを禁ずる「金融商品取引法」があります。ただし、いずれも法令に特別の定めがない限りは、「故意をもって行ったこと」が罪の構成要件です。