社会保険上では、通勤手当は年収に含まれる


配偶者、配偶者の扶養義務の有
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ここまで税制上の話が中心となりました。基本的に通勤手当は非課税扱いで年収に含まないケースがほとんどです。ただし、年収に含むケースもあります。それが社会保険の場合です。

「扶養の範囲で働きたい」と考えるパート社員の人も多くいます。扶養から外れる年収130万円の壁、または106万円の壁を意識しながら働くことになりますが、この場合の年収は通勤手当も含みます。

「年収130万円ギリギリがベスト」と考えて働く人の中には通勤手当を考慮していない人も多いようです。税制では年収に含まれないため、社会保険でも同じだろうと考えてしまうのです。

社会保険は、税金とは違う考え方や計算方法なので注意してください。また、健康保険料や厚生年金保険料を算出する際の「標準報酬月額」も通勤手当を含んだ上で等級が決まり保険料が計算されます。雇用保険の保険料も同様です。

少し脱線しますが、「遺族年金」や「障害年金」も非課税で受け取るため「年収には含まれない」と考える人が多いのですが、社会保険では年収に含まれます。通勤手当同様、税金と社会保険で取り扱いが大きく異なる例の1つです。

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通勤手当の今後の動向

通勤手当は平成28年の税制改正で非課税限度額が10万円から15万円へと引き上げられました。当時、東京一極集中が加速する中で、地方から新幹線などを使って遠距離通勤をする人への配慮や、地方への人口分散を促すといった意味合いもありました。

通勤手当は会社員の働き方を踏まえて変わっていく制度です。現在はリモートワークが定着した会社も多く、そもそも通勤せず在宅で仕事をする人も増えています。この現状で、通勤手当はどのような扱いになっていくのでしょうか。

1つは固定の通勤手当を見直す会社が増えています。1カ月固定で定期代を支払うのではなく、出勤した日のみ実費で交通費を支払うというスタイルです。会社にとってはとても合理的といえますね。

ただし、在宅ワークがメインになると、従業員として気になるのが光熱費や備品などの出費です。本来、オフィスで仕事をしていれば負担しない費用を各従業員が負担していることになります。これらの費用を通勤手当の代わりに、非課税で支給してもらうことはできないのでしょうか?

国税庁はこの点に関して、実費精算を行い会社から支給されたものは非課税扱いとするという見解を示しています。つまり一律「在宅勤務手当」というような支給ではなく、実際にかかった費用を、領収書をもとに精算することを前提としています。

そうすると仕事用に購入したプリンターやインクなどは精算しやすいですが、光熱費など家事消費分と仕事分と分けることができない費用についてはどうなるのでしょう。仕事の都度、メーターを切り替えるわけにはいきませんので、その場合は合理的な計算で算出することが求められています。例えば勤務時間などを考慮し、生活:仕事=6:4といった比率で光熱費の4割を仕事に伴う支出と考える方法です。自身の働き方や生活スタイルをベースに会社と相談しながら、一定割合を会社に負担してもらえるといいですね。

会社側にとっては、こうした手当の制度化が、優秀な社員を雇用できるかどうかにもつながりそうです。非課税扱いになるかどうかは別にしても、多様な働き方に対応した通勤手当や各種手当が充実しているかどうかが、会社が業績を伸ばす1つの要因になるかもしれません。