認知症の割合はどのくらい?種類別の割合まで詳しく解説

「認知症」と聞くと、それがひとつの原因による病気だと思っておられる方もいるかもしれません。実は、「認知症」という言葉は、記憶、計算、学習、判断などの「認知機能」に障害がある状態を指す言葉です。そのため、この「認知症」という状態のなかに、いくつもの原因があります。そして、その原因によって、具体的な病名に分類されていきます。今回は、認知症の割合や種類、有病率について詳しく見ていきましょう。

1.認知症になる可能性はどのくらい?

まず一般に、認知症はある日突然発症するものではありません。ほとんどの認知症は、ゆっくりと進行していく形で発症するものです。そのため、認知機能が正常の段階から、認知症と呼ばれる段階に至るまでの途中経過という段階も存在することになります。この途中経過の段階の事を、“軽度認知障害”と呼びます。

この軽度認知障害の有病率は65歳以上の高齢者の15~25%程度と考えられています。そして、1年間に新たに軽度認知障害に至る割合が、65歳以上の高齢者1,000人中20~50人程度と推定されています。

そして、研究によって異なるものの、この軽度認知障害から認知症へ進行していく割合は、1年間に5~15%程度と考えられています。

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2.認知症の種類ごとの特徴や割合

ここでは、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症など、それぞれの病気ごとの特徴や割合について見ていきましょう。

調査によって割合に幅はありますが、どの調査でもアルツハイマー型認知症が最多である事がほとんどであり、その割合は認知症全体のおおよそ50~60%台です。次いで、レビー小体型認知症や血管性認知症が続きますが、どちらの割合が多いかは調査結果によって異なっています。ここで挙げたアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症を合わせて三大認知症と呼ばれており、認知症全体の85%程度を占めるといわれています。

2-1.アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、典型的には脳のなかでも“海馬(かいば)”と呼ばれるところから、徐々に脳の萎縮が進行していく疾患です。個人差はありますが、数年から十数年以上かけて徐々に進行していきます。もの忘れが主要な症状となり、視空間認知機能障害による道迷い、時間の感覚が薄れることによって季節や曜日などがわからなくなるなどの症候が見られてきます。もの忘れは特に数分前から数日前程度までの最近の出来事で目立ちやすく、数年以上前の出来事は病初期には保たれやすいことが大きな特徴となっています。視空間認知機能障害の簡単な評価方法として、キツネやハトの手の模倣をしてもらうことも有用です。病初期にはその場その場の会話は上手になさる方も多く、同居のご家族様以外にはなかなか病気に気づかれにくいこともあります。

また、記憶障害に伴い精神症状として“もの盗られ妄想”も非常によく見られます。盗られるものには、財布や現金、貯金通帳や貴金属など財産に関連するものが多く、一番身近な家族や介護者が疑われるケースが多くなります。原因としては大切なものの保管場所を忘れてしまい、自分で見つけられないことによって“もの盗られ妄想”が起こると考えられています。

2-2.レビー小体型認知症

レビー小体型認知症でも、アルツハイマー型認知症と同様に記憶力の低下も見られることが多いです。しかし、レビー小体型認知症の特徴は、記憶力の低下以外にも、さまざまな症状も見られるところにあります。いずれも非常に特徴的な症状といえます。一つひとつ見てみましょう。

1つ目は、認知機能の動揺です。1日の中で周期が見られ、数分から数時間の単位で認知機能の変化が見られる場合はわかりやすいといえます。ただし、数週から数ヵ月におよぶ長期の周期で変動が見られることもあるため、この場合はなかなか変動に気づかれにくいかもしれません。ご家族様から見て、“急に認知症が進んだ”、あるいは “調子のいい時と悪い時の差が激しい” と感じた時は、レビー小体型認知症を疑うサインかもしれません。

2つ目は、幻視(げんし)です。幻視は、目にまつわる幻覚の事です。小動物(猫やネズミなど)や虫、人間が家の中に見えてしまうことが多いです。いずれの場合も、通常は鳴き声や発話を伴いません。そのため、“じっとそこにいる”などと仰ることが多いです。患者さん自身が自覚しやすい症状で、“自分でもおかしいと思っている”と理解されている方も少なくありません。飲食物に虫が見えてしまうと、食欲低下・食事拒否の原因になりえます。また、配偶者のそばに若い異性が見えてしまうと、浮気を疑って夫婦関係が悪化してしまうこともあります。

3つ目は、パーキンソン症状と呼ばれる運動症状です。手足が震えたり、身体の動きが遅くなって、転びやすくなります。

4つ目は、レム睡眠行動異常症と呼ばれる睡眠障害です。比較的鮮明な夢を見て、叫びだしたり、手足を動かしたりすることが特徴的です。夢の内容は、災害に遭ったり、何かに追いかけられて必死で逃げるなど、本人にとって好ましくない内容のことが多いとされています。重症だと、ご本人がベッドから落ちたり、起こそうとした家族や介護者が殴られてしまうこともあります。

2-3.血管性認知症

血管性認知症は、脳の血管が障害されて生じる認知症です。血管性認知症は、詰まったり破れたりした脳の血管の場所に応じて、いろいろな症状を示します。その多彩さとも関係していますが、「ある能力は低下しているけれども、別の能力は比較的保たれている」というように、まだら状に能力が低下することも特徴のひとつです。この血管性認知症の中でも、比較的よく見られる特徴的な症状をご紹介します。なお、初期の段階での記憶障害は、アルツハイマー型認知症に比べて軽いことが多いです。

1つ目は、歩行障害です。血管性認知症では、比較的病初期から転びやすくなることが多いです。通常、アルツハイマー型認知症では初期に見られない症状であり、早い段階でよく転ぶようになった場合は、血管性認知症を疑うきっかけになります。ただ、レビー小体型認知症でも初期から転びやすくなることはあるため、この症状だけで原因を断定できるわけではありません。

2つ目は、排尿障害です。排尿したいという感覚を生じてから、トイレに間に合わずに尿失禁してしまうことがあります。この症状も、通常、アルツハイマー型認知症では初期には見られません。

3つ目は、構音(こうおん)障害、嚥下(えんげ)障害です。構音障害とはしゃべりにくくなる症状のことで、嚥下障害とは飲み込みにくくなる症状です。特に嚥下障害では、固形物よりサラッとした液体を飲み込むことから苦手になりやすいです。お茶やお味噌汁ではむせるけれども、ご飯はしっかり食べられるという形で始まりやすいです。この症状も、通常、アルツハイマー型認知症では初期には見られません。