月収50万円・都内在住54歳おひとりさま女性の「貯金額500万円」…これって大丈夫?【FPが解説】

3.50代半ば、いまからでも間に合う「3つ」の資産形成術

Aさんが安心してセカンドライフを送るためには、現在の貯蓄額500万円を“定年までにいくらまで増やせるか”が重要になります。

3-1.資産運用

たとえば、Aさんは54歳ですから、10年以上はこの500万円を運用で増やしていくことができます。

・年1%で運用した場合
  ……10年後:552万5,000円/20年後:610万円/30年後:674万円

・年2%で運用した場合
  ……10年後:609万5,000円/20年後:743万円/30年後:905万5,000円

・年3%で運用した場合
  ……10年後:672万円/20年後:903万円/30年後:1,213万5,000円

しかし、どんなに資産運用でお金を増やしたとしても、運用率がインフレ率を上回らなければ「元本割れ」と同じ結果になってしまいます。インフレは、せっかくの運用結果を“水の泡”にしてしまう怖さがあるのです。

3-2.退職金を“長生き”させる

また、Aさんの会社には「退職金制度」があります。当然、会社にいつまでいられるかによって金額は変わってきますが、中小企業のモデル退職金は[図表1]のようになります。



[図表1]学歴・勤続年数ごとにみた中小企業のモデル退職金 出所:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」

長い老後生活のためには、退職金もできるだけ“長生き”させる必要があります。まとまったお金を受け取ると気が大きくなって、「海外旅行に」「自宅のリフォームに」などとつい使ってしまいがちですが、将来のことも考え、計画的に使っていきましょう。

3-3.年金の「繰下げ受給」を検討する

さらに、定年後も長く働けるようであれば、「年金の繰下げ受給」も検討してください。

年金は、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰下げて受給すれば、その分増額した金額を受け取ることができます。繰下げた期間の長さに準じて年金額は増額され、いまの制度では最大で84%増額させることが可能です。また、その増額率は一生変わることはありません。

なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げることができます。女性は男性よりも長く生きることが多いですから、おひとり様女性の場合、可能であれば積極的に繰下げ受給を検討すべきです。


[図表2]繰下げ増額率早見表 出所:日本年金機構HP「年金の繰下げ受給」

3-4.“終の棲家”の検討も重要

また、1人暮らしの方は、現役時代はできるだけ住まいにお金をかけすぎないことも重要です。定年後も1人暮らしを続けるのであれば、急に倒れたり具合が悪くなったときでも安心して生活できるよう、介護施設や老人ホームへの入居を検討すべきでしょう。

とはいえ、こういった施設にもさまざまな種類があり、入居一時金が必要な施設と不要な施設、毎月支払う金額等、かかる費用も異なります。そのため、事前にどんな施設に入りたいのか、どれだけお金がかかるのかを確認しておきましょう。

また、介護業界は人材不足が続いているため、かかる費用は今後より一層増えていくことが予想されます。増加を見据えて、余裕をもって準備する必要があるでしょう。

(広告の後にも続きます)

4.「インフレ」は老後の大敵

さまざまなモノやサービスの値上げが続いていますが、今後もインフレはしばらく続くことが予想されています。実は、高齢者にとって最大の敵がこの「インフレ」です。

いま、たとえば毎月17万円で生活できているとしても、将来同じ金額で生活できる保障はありません。日本銀行は「物価2%目標」を掲げていますが、もし毎年2%ずつ生活費が増えていくと、同じ生活を続けるためにかかる金額は以下のようになります。

・現在 ……毎月17万円
・10年後……毎月約20万7,000円
・20年後……毎月約25万3,000円
・30年後……毎月約30万8,000円
・40年後……毎月約37万5,000円
・50年後……毎月約45万8,000円

一生涯働けるわけでもなく、預貯金の金利は一向に上がらず、年金額も増えたとしても物価上昇分には追いつきません。

つまり、「せっかく作った老後資金が減るスピードが上がっている」ということです。このままでは、高齢者の貧困問題は深刻化する一方です。

老後資金に“長生き”してもらうためには、「運用しながら少しずつ取り崩す」といった手段も考えていく必要があります。

たとえば、老後資金1,000万円を老後30年間かけて取り崩す場合を考えてみましょう。運用せずに使う場合には毎年33万円(1ヵ月あたり約2万8,000円)しか使えませんが、運用しながら取り崩す場合、利息に応じて使える金額が以下のように増やせます。

・運用せずに取り崩す……毎年約33万円(毎月約2万8,000円)
・年1%で運用しながら取り崩す……毎年約39万円(毎月約3万2,500円)
・年2%で運用しながら取り崩す……毎年約45万円(毎月約37,500円)
・年3%で運用しながら取り崩す……毎年約51万円(毎月約42,500円)

自分が働けなくなっても「お金に働いてもらう」ということになりますが、この場合、現役時代から資産運用に慣れておく必要があるでしょう。