若者の和菓子離れや冠婚葬祭の縮小、さらには原材料の高騰。そして一番大きなコロナ禍という甚大な影響を受けて、和菓子界は大きな課題を抱えたまま凋落の一途をたどり、気づけば多くの老舗和菓子屋が驚くほどのスピード感でなくなって行く現代。

文化の継承もままならない、そんな和菓子界に新しい一石を投じるかのような取り組みが行われました。あの腕時計メイカーである「Grand Seiko(グランドセイコー)」が、10日間しか開かない幻の和菓子屋「和菓子屋 とき」を今年もOPEN。時計が刻む「時」と、和菓子の時代の「とき」の流れを持続可能なものとして繋ぐ新しい取り組みを担う、この「和菓子屋 とき」はフードエッセイスト・フードディレクターの平野紗季子氏がクリエイティブディレクターを務め、本イベントをプロデュース。日本の四季や自然にインスピレーションを受け、一瞬しかない美しさや時の移ろいを感じさせる、そんな和菓子屋です。

クリエイティブな空間で感じる光と風の花畑

2022年が第一回目として行われ、今年はその第二回目として「果実と花の和菓子屋 とき」として装いを新たにOPENしました。神宮前5丁目にある、荒木信雄氏(アーキタイプ)が設計した「StandBy(スタンドバイ)」に会場を移し、2023年10月27日(金)~11月5日(日)までの10日間開催。

店舗や菓子のパッケージなど全体のアートディレクションは、アートディレクター・グラフィックデザイナーの田部井 美奈氏が務めます。空間の至るところに組み立てられた「和の余白作り」は、感嘆するほど。

また空間に入った瞬間に果実や花が咲き誇る空間の演出には、フローリストの越智 康貴氏。数々の空間デザインプロジェクトを手掛けてきた設計事務所・「DAIKEI MILLS」とともに演出した会場は「光と風の花畑」をテーマにしているんだとか。

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一流シェフたちによる、和菓子との邂逅

入った瞬間に目に入る美しい和菓子。これが本当に和菓子なのかと、目を疑うお菓子を手掛けるのは今をときめく菓子職人たち。宝石のようなパフェで多くの人の心を奪った「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」(世田谷区・等々力)シェフパティシエール岩柳 麻子氏。そして日本の食と文化を未来に紡ぐ資生堂「FARO」のシェフパティシエ加藤 峰子氏が参加。

「果実と花の和菓子屋 とき」の10日間のOPENでは、「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」のこのイベントでしか食べられないテイクアウトパフェ(写真一番左)はもちろん、秋の穏やかな白日をイメージした「白日(はくじつ)| 秋風の吹寄」(写真右から2番目・3500円)、そして加藤峰子氏が手掛けるのは「薄明(はくめい)|マスカットの草露錦玉(そうろきんぎょく)」(写真左から2番目・1500円)、そして「小夜中 (さよなか)| 金木犀と烏龍茶の琥珀羹(写真一番右・2000円)などが購入可能。

イタリアで活躍し、日本に帰国後は資生堂が運営するイノベーティブレストラン資生堂「FARO」で腕をふるい、世界でも注目される加藤峰子氏に、今回なぜ和菓子なのか? シェフの想いを取材させていただきました。