朝夕の寒さも日に日に増してすっかり秋らしい陽気に。山々も色づき始め栗やお芋が美味しい季節。スイーツで秋の味覚と言えばやっぱりモンブランは欠かせません。

今回紹介する『Pat i s serie Les annees folles(レザネフォール )』は恵⽐寿と中野に店を構えるパティスリー。レトロモダンをテーマに様々なケーキを展開し、特にモンブランは⼀度⾷べたら忘れられないと⾔われるほどの必⾷スイーツです。


『レザネフォール』オーナーシェフの菊地賢一さん

本記事ではオーナーシェフの菊地賢一さんにクラシックにこだわりつつ、現代的ニュアンスを取り込むスタイルについて取材。菊地シェフは日本の名だたる名洋菓子店や、海外の一流ホテル、フランスで修業を積み、さらにフランス三大コンクール「ガストロノミックアルパジョンコンクール」で優勝の経験も持つなど、日本が世界に誇るパティシエの1人です。

唯一無二の艶やかな『レザネフォール』のモンブラン

『レザネフォール』のモンブランが他と違うことは一目見れば分かるはず。通常、マロンクリームを絞り出すことで高さを出すモンブラン。しかし『レザネフォール』のものは表面がつるんとしています。

菊地シェフ「元々、モンブランとは白い山のこと。フランスとイタリアの国境に位置する広大なモンブラン山からインスピレーションを受けて作られたのが生ケーキ“モンブラン”。

そこで、高くそびえたつ尖った山と山頂を覆う雪を表現したいと思い、5年ほど前に開発したのがこのモンブランです」

食べると栗のクリームと丸々入った栗は上品ながら、素材の風味や食感をしっかりと主張。ボトムにはパリパリのパイ生地がひかれています。

菊地シェフ「モンブランにしても、他のケーキにしても大切にしているのは、クラシックでありモダンであること。これを僕は“レトロモダン”と呼んでいます。この2つは対照的に思われるかもしれませんが生涯飽きずに食べていただくためには、歴史あるものを基盤にした菓子作りが必要不可欠だと確信しています」

モンブランは見た目も然り、食べた時の食感でレトロモダンを表現したんだとか。モンブランもパイ生地もクラシックなケーキでありパーツですがあまり見ない組み合わせ。中のシャンティはとても軽くて滑らかな舌触りです。組み合わせ方によってこんなにも印象の違うモンブランができるのかと驚きの連続。

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クラシックとモダンの融合を学ぶためにフランスへ。“レトロモダン”を象徴する「ノアゼットカフェ」


店には“レトロモダン”をテーマにした菊地シェフならではのケーキがずらり

これまで様々な名店で修業を積んできた菊地シェフ。中でも尊敬するシェフはセバスチャン・ゴダール氏で、わざわざ彼の考えや哲学を学ぶため、当時の仕事を辞めてフランスへ修業しに行ったそう。

菊地シェフ「セバスチャンは昔、ピエール・エルメの右腕として⻑くスーシェフを勤めていたパティシエ。パティスリー界のピカソとも呼ばれるピエール・エルメの店ですから、モダンで⾰新的なお菓⼦が ずらりと並ぶパティスリーでした。

セバスチャンが独立してパリに店を構えてからほどなく、急にスタイルがクラシックに回帰したんです。同じころ僕もクラシックなケーキに強い関心を持っていたので、直ぐに彼の元で働かせてくれないかと直談判しに行きました。すると、快く受け入れてくれたんです」


「ノアゼットカフェ」

「ノアゼットカフェ」は菊地シェフオリジナルのケーキ。クラシックなフランスケーキに見られる四角いフォルムが特徴です。アーモンドを使った生地にザクザクとした食感。ふわりと軽いムースからは、ほのかにエスプレッソの風味とホワイトチョコレートのリッチな甘さを感じます。

菊地シェフ「“ネグレスコ”という、フランスで大変古くから伝わるチョコレートケーキから着想を得たのが『ノアゼットカフェ』です。“ネグレスコ”とはスポンジとクリームで作られるこってりとしたチョコレートケーキ。しかしそのままでは現代人の舌に合わないので、クリームをムースに。ビスキュイ(生地)にサクッとした食感を加えました」

チョコレートケーキに代表されるザッハトルテやオペラをイメージしながら食べると、想像を覆されるまろやかで軽い口当たり。それでいて、昔からあるケーキですと言われれば納得してしまうほど、味が確立されています。


これまでに菊地シェフが獲得した賞の数々

菊地シェフ「セバスチャンと共に働き、自分がどのようなスタイルをやるべきか定まりました。そうしてできたのが、ここ『レザネフォール』です。オープン時、フランスから小包が届いて、送り主はセバスチャン。開けると1冊の本が。フランス料理の古典となったレシピ本の著者ユルバン・デュボアの『LA PATISSERIE D’AUJOURD’HUI』という150年も前の本でした。Amazonでは絶対買えないような代物です。彼の心使いがすごく嬉しくて、一生大切にしようと思いました」