もうすぐ75歳を迎える私は、夫と結婚して50年。いろいろあった結婚生活ですが、この人と共に人生を歩んで幸せだったと思っています。夫婦でささやかにおこなおうと決めた金婚式には、高級フレンチレストランを予約してくれました。当日、おしゃれな店内に胸を躍らせて入ったのですが……。
サプライズメニュー登場!
レストランでは、さわやかな風貌の若いウェイターが案内してくれました。「金婚式と伺っております」とにこやかな彼に、夫はなんと最高級の5万円コースを注文! 仰天した私ですが、「今日は特別。サプライズはこれだけじゃないぞ」と楽しそうに笑うのです。
どうやら、メニューにない特別料理が出てくるとのこと。ワクワクしてきた私が待ちきれないでいると、先ほどのウェイターが戻ってきました。
「最初に、ご要望のサプライズメニューをお持ちしました」と言ってテーブルに置いたのは、なんと大盛りのフライドポテト。高級フレンチにはあまりに場違いな一品に、私は目が点状態です。
「わしらの人生に、これは切っても切り離せない。記念すべき金婚式の食事に入れてもらったんじゃ」
そう言われて私は、50年前の新婚当初のことを思い出していました。
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あのころは…
当時、会社員をしていた夫。ある日突然、独立してファーストフード店を開業したいと言いだしました。そのとき私は息子を妊娠中。しかし熱意を持って脱サラするという夫を支えようと覚悟を決めたのです。
夫が力を入れたのは、とにかくおいしいフライドポテト。料理の腕はたしかだったのです。しかし経営には向いていなかったようで、開業から4年で閉店を余儀なくされました。
その後は負債を抱え、返済のため夫は日夜肉体労働に明け暮れるように。私もパートを掛け持ちしましたが、貧しい日々が何年も続きました。
さらに息子が高校生になったころ、苦労がたたって私が入院することに。夫は毎日息子にフライドポテトを作ったのですが、「これのせいでうちが貧しくなったんだ。もう我慢できない、家出してやる!」と父子で大喧嘩。悲しいことに、私の入院中に息子が家を出て、そのまま高校もやめてしまったのです……。