術後の苦労と喜び



術後、母親は腰が痛いのに毎日のように病院に来てくれました。車の運転ができない母親は電車とバスを乗り継いで来るため、体力的にも負担が大きかったと思います。一方息子はまったく病院に姿を見せませんでした。寂しさもありましたが、それ以上に息子の今後のことが気に掛かりました。一人息子で離婚したため父親もいないので、私に何かあったら息子はひとりぼっちになってしまうと心配になり、自身を責めたりもしました。

母親の疲れもピークに感じたころ、息子からLINEが届き、会社の帰りに母親を迎えに来てくれるというのです。母親は息子の雑な運転にビクビクしながらもうれしそうでした。また、お互い子育てや仕事で忙しく、疎遠になっていた姉一家がお見舞いに来てくれたりと、がんという大きな病気にはなりましたが、同時に家族がいる喜びも感じることができました。

ですが30cmも切ったおなかは想像以上に痛く、毎日歩かなければいけないとはわかっていても本当に憂うつで、トイレに行って帰ってくるのに30分はかかり、ベッドから降りるときの激痛が恐怖でもありました。とはいえ医師も驚く回復力で2週間以内に退院もでき、あんな大手術をしてもこんなふうに回復するのかと思うと医学の進歩にも驚き、また医療に携わるスタッフの方にも感謝の気持ちでいっぱいです。

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まとめ

術後5年が経過しました。母親はさらに高齢になり不便なことが増えてきました。一緒にいてもちろん不満に思うこともありますが、手術した夜ひとりでトンカツを食べた母親を想像すると大体のことが許せます。私はというと、今でも再発の可能性が消えたわけではありません。これまでの自身の生活を振り返り、後悔したこともありますが、病気で得られたこともたくさんあります。

自分の命は自分だけのものではないこと、家族がいてくれることのありがたさを痛感した大切な経験でもあります。過去は変えられないけど、今できることを一生懸命にやろう。今の幸せが長く続くよう、この文章を書くことにより再度自分の生活を振り返りたいと思います。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)
2007年東京女子医科大学卒業後、米沢市立病院、東京女子医科大学病院産婦人科、同院東洋医学研究所を経て、2018年1月こまがた医院開業。2021年9月より介護付有料老人ホームの嘱託医兼代表取締役専務に就任し現在に至る。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『子宮筋腫は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力(KADOKAWA)』『自律神経を逆手にとって子宮を元気にする本(PHP研究所)』がある。

イラスト/マメ美

著者/sara(52歳)
22歳で出産後、27歳で離婚。以降一人で仕事と子育てを両立してきたシングルマザー。ようやく子どもも就職し、安心した矢先に大病を患い現在経過観察中の身。忙しい仕事や家事、親の介護など日々のストレス発散は、大好きなお酒とKPOP。そんな趣味を、いつまでも楽しめるよう健康管理に努めている。