【確定申告シリーズ】個人事業主だから可能…“節税”しながら“資産形成”できる「小規模企業共済」とは

会社勤めのサラリーマンには勤務先によっては退職金制度が備わっていますが、個人事業主や中小企業の経営者は、勇退しても退職金がありません。したがって、現役のときからあらかじめ自分で老後資金を積み立てていく必要があります。そのために役立つ制度のひとつが、「小規模企業共済」です。税理士・辻哲弥氏(税理士法人グランサーズ共同代表)が解説します。

小規模企業共済とは

小規模企業共済は個人事業主や小規模企業の経営者のための積み立てによる退職金制度です。国の機関である中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。

毎月「掛金」を積み立てていくことで、事業を廃止したときや、65歳以上で一定の条件を満たしたとき等に「共済金」を受け取ることができます。共済金は3種類あり、個人事業主の場合、共済金の支払事由は以下の通りです。

  • 共済金A:廃業した場合や亡くなった場合
  • 共済金B :65歳以上で掛金を180ヵ月以上払い込んだ場合
  • 準共済金:法人成りして個人事業主でなくなった場合

掛金は月1,000円~7万円の範囲内で、500円単位で自由に設定することができます。

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小規模企業共済のメリット

小規模企業共済のメリットは以下の通りです。

  • ①掛金が全額所得控除になる
  • ②共済金の受取時に税制優遇を受けられる
  • ③低利で契約者貸付を受けられる
  • それぞれについて説明します。

    メリット1. 掛金が全額所得控除になる

    前述のように、小規模企業共済の掛金は月額1,000円~7万円までの範囲内において500円単位で自由に設定できます。そして、この掛金の全額を所得税及び住民税の計算上、所得金額から控除することができます。

    たとえば、掛金月額最大の7万円を1年間払い込む場合、所得控除額は7万円×12か月の84万円となり、退職金を積み立てながら所得も控除することができるため、高い節税効果を得られます。

    メリット2. 共済金の受取時に税制優遇を受けられる

    退職・廃業時に受け取れる「共済金」は、一括で受け取った場合も、分割して受け取った場合(年金受け取り)も、税制上の優遇措置を受けることができます。

    すなわち、一括で受け取った場合は「退職所得」扱いになり、「退職所得控除」を受けられます。また、年金受け取り(分割受け取り)の場合は公的年金等の「雑所得」扱いになり、「公的年金等控除」を受けられます。

    メリット3. 低利で契約者貸付を受けられる

    小規模企業共済に1年以上加入している場合、加入者は契約者貸付を受けることができます。借入限度額はそれまでに払い込んだ掛金総額の7割~9割となります。

    利率は、「一般貸付け」の場合は年1.5%と低く、また、面倒な審査もないためすぐにお金を受け取ることができます。

    銀行からお金を借りる場合は2%前後の利率となるため、低金利で融資を受けられることになります。

    資金の使い道に制限はなく、一般貸付けは事業資金全般に利用できるため、いざという時にまとまった資金が必要になるケースのある経営者にはぴったりの制度といえます。

    契約者貸付の借入期間は貸付額によりますが、100万円以下の場合は1年以内に一括で返済する形となります。ただし、「一般貸付け」だと借入限度額の範囲内であれば何度でも借り入れができます。したがって、新しく借り入れることによってそれまでに借りていた借入金を返す「借り換え」も可能です。

    もし返済期限までに一括で完済できなくても、この借り換えを利用することにより、借入期間を延長することができるのです。なお、この場合、新しい借入金の利子(100万円を借り入れる場合は年1.5万円)を一括で前払いする必要があります。

    もし、借入期間を過ぎても返済せず、借り換えもしない場合は、延滞利子が年間14.6%となってしまうため注意が必要です。