やっぱり思った通り!
さらに何日かして、私はまた、すでに父がいなくなったあの会社に打ち合わせに行きました。すると相も変わらず社長の息子の怒鳴り声が聞こえてきたのです。
「お前、俺様にたてつく気か!?」
私は素早く壁の後ろに隠れてスマホのカメラをONにし、録画ボタンを押しました。音声より動画のほうが証拠として説得力があるだろうと思っての行動です。
録画されているなど知らない社長息子は、「この間、勤続20年のジジイがリストラされたのは、俺に歯向かったからなんだよ。逆らうヤツは全員つぶしてやるからな!」と高笑い。やっぱりアイツが、父を解雇に追い込んだ張本人だったのです。
(絶対に許さない……。しかるべき制裁を加えてやる!)
私はそう決意して録画を終了し、廊下を後にして会議室へ向かいました。
(広告の後にも続きます)
決定的証拠はこの動画
この翌日の夜、私たち一家は、とある人物が訪ねてくるのを待ち構えていました。夕食後にインターホンが鳴ると、思わず顔を見合わせてニヤリ。父が扉を開けると、そこには予想通り社長息子が焦った様子でつっ立っていたのです。
「あ、あんたさ、会社に戻ってきてもいいぞ! お、俺は寛大だからな、何なら給料も上げてやる……」口調はやはり高飛車ですが、妙におどおどし、目を泳がせています。
母はそんな彼に容赦なく言いました。「あなた、父親である社長に謝罪してくるよう命令されたのよね。うちの人に許してもらえないなら、解雇するとか親子の縁を切るとか言われたんじゃない?」
驚く社長息子でしたが、図星だった様子。「あなたの会社の主要取引先に、私の古い友人が社長をしている企業があるのをご存じ? 夫が突然不当解雇されたことを話して証拠動画を見せたら、友人はカンカンに怒ってね。あなたの会社とは今後取引しないそうよ」
そう、母の友人が社長をしている企業とは、私の勤め先であり業界内でも最大手の1つ。横暴息子を囲うような会社とは付き合わないと宣言し、他社にも情報を共有してくれたのです。