こんにちは、ファイナンシャルプランナー(FP)の内山貴博です。今回のテーマは「債券」について。
現在、投資信託や運用系の保険(変額保険や変額年金)などが資産運用商品として人気を博していますが、こういった人気運用商品を通して債券に接する機会は今後も多いでしょう。特に企業型DC(確定拠出年金)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の普及によって自ら運用商品やその比率を決める際、債券の種類や特性、リスク、メリットとデメリットを知っておくことは非常に役に立ちます。利回りの計算など、やや複雑な点もありますが、例を用いてわかりやすく説明していきましょう。初心者におすすめの債券投資についても紹介していきます。

1.債券とは

債券とは「お金を借りる際に発行する券」であり、借用証書のようなものです。一般的に国や企業が資金調達のために発行するため、私たちはむしろ「お金を貸す側」として債券と接することになります。お金を貸している間は約束された利息を受け取ることができ、期日になるとお金が戻ってきます。このように債券の発行体にお金を貸し、利息を受け取ることを「債券投資」といいます。よって「お金を貸す」と同じ意味合いで、「債券を買う」といいます。

1-1 債券と株式の違いって? 
投資といえば、「株式」を思い浮かべる人も多いと思いますが、債券と株式の大きな違いは何でしょうか? 債券に投資をした人は「お金を貸している人」であるため、償還日(満期)には額面(債券に記載されている価格)で返還されますが、株式に投資する場合は、「その会社に出資した」という位置づけとなります。

債券の場合は「債権者」という位置づけですが、株式の場合は「株主」となります。株主=オーナーです。つまり、株式投資の場合は、株価の値上がりや値下がり、業績不振での倒産など全て株主が責任を取ることになりますが、債券の場合は、お金の貸し借りをしている関係に過ぎません。その分、株式投資よりリスクが低いといえます。もちろんリターンも低くなります。

1-2 債券投資の仕組み
株式は、証券取引所に上場されている株式を証券会社などを通して購入する取引所取引であるのに対し、債券は原則、店頭取引です。

いうなれば、株式は魚や野菜のように市場があり、漁師や農家と多くの業者が売り買いに参加することで価格が決まるような仕組みである一方、債券は店頭での相対取引のため、売り手と買い手が直接交渉するフリーマーケットでのやりとりをイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。出店しているお店が金融機関で、投資家がそのお店に出向くような感じです。

よって、魚市場に行けば多種多様な魚が水揚げされていますが、フリーマーケットはお店によって販売しているものが違っていたり、少ししか商品を取り扱っていなかったりと、お店次第というところがあります。債券も同様で取引先の金融機関がどれだけ債券を取り扱っているか異なるため、債券投資を本格的に始めたい人は、品ぞろえの良い金融機関に口座を開設し、取引を行ってください。

また、債券投資を理解する上で押さえておきたいのが新発債と既発債の違いです。新発債は、まさにこれから国や企業が資金調達を行うために発行する債券のことで、発行価格は決まっています。既発債は既に発行されている債券で、価格は日々、そのときの価格で取引されます。つまり時価です。車でいうと新車と中古車の違いに似ています。

新車はさまざまな販売店で購入でき、画一的で販売価格も同じです。一方中古車は、年式や走行距離などさまざまで、また価格もさまざまな要素を考慮して決められ、日々見直されています。よって、既発債は以前、別の人が購入した債券が流通していることになりますので、例えば「額面100円・償還期限10年・利率1%」という債券であっても、償還まであと3年しか残っていないかもしれませんし、「今の経済状況で年間1%も利息がもらえる債券は魅力的だ」ということで価値が高まり、額面100円に対して101円や102円で取引されているかもしれません。

なお、利率は一部変動するものもありますが、その多くが最初から最後まで変わらない固定金利です。

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2.債券の種類

債券は大きく2種類に分けることができます。1つが国や地方公共団体が発行する公債。もう1つが企業などが発行する民間債です。公債のうち、国が発行する債券を国債といい、各種類の債券の中で最も発行残高が多く、債券の代表格といえるでしょう。

ただし、さらに細かく分けると、少人数だけに発行する「私募債」や、元本および利息の支払い順位が通常の債券よりも低い「劣後債」、外貨で発行される「外貨建て債券」などさまざまなタイプの債券があります。

2-1 公共債(国債、地方債、政府保証債)
国や地方などが発行する債券です。公共債の代表例は国債、地方債、政府保証債です。以下概要を紹介します。

・国債:国債は「国庫債券」の略称で、国が発行する債券です。日本の国債の中では「10年国債」が最もメジャーで、長期国債と呼ばれ毎月発行されています。2016年1月以降、マイナス金利の発動の影響で、今現在の金利水準はほぼゼロ付近で推移しています。

・地方債:一部の都道府県とすべての政令指定都市に発行が認められている「全国型市場公募地方債」などがあります。地方債とはいえ、全国の投資家を対象に発行することができます。その他、原則として購入者を発行団体内に居住している個人などに限定した「住民参加型市場公募地方債」など一定のルールの下、地方債は発行されています。

・政府保証債:特別な法律によって設立された政府関係機関などが発行する債券をいいます。元本の返済や利子の支払いに対して政府保証が付せられており、国債と同等の信用力を有しているとみなされています。日本政策金融公庫や高速道路関係の機関などが発行体の代表例です。

2-2 民間債(社債、金融債)
民間債は一般企業が発行する債券のことをいいます。国債などの公共債よりも民間債の方が期間が同じであれば、やや利率は高くなります。民間債の代表例は社債と金融債です。

・社債:文字通り民間の会社、つまり企業が発行する債券です。

・金融債:特定の金融機関がそれぞれの特別な法律に基づいて発行する債券です。