5.債券価格と金利(利回り)の関係とは?

債券投資をする上で重要な考え方が「金利と利回り」です。通常、「A債券よりもB債券の方が金利が高い」という場合、実際の利率ではなく、利回りを表すことが多いです。
ここまで聞いて、頭の中に「?」が浮かんでいる人も多いと思います。「金利と利回り」の関係は少し難しいので、以下1つ1つ説明していきます。

5-1 利回りと利率の違いって?
特に利回りの考え方は重要なので、それを理解するために債券の基本的な仕組み、用語の確認をしましょう。債券は現在、ペーパーレスとなっていますが、以前は実際に券面が発行されていました。「10年後に100円返すのでお金を貸してください。毎年3%を利息としてお支払いしますので」といった条件が券面に記載されていたのです。


債券
【画像出典元】「iStock.com/tupungato」

この場合の100円を額面といいます。そして10年を償還期間、3%が利率となります。もし銀行預金であれば、100円を預けて毎年3%の利息をもらえるため、利率=利回りとなりますが、債券の場合は必ずしも100円で取引されるわけではありません。この場合の額面はあくまで「10年後に返す金額」であり、発行時や経過途中においては、さまざまな要因によって100円よりも高く、または安い価格で取引されることもあります。

つまり100円をベースにしながら日々価格が変動しているため、売買のタイミング次第で「利率以外にも運用成果に影響する部分」があるのです。よってこれを考慮したものが「利回り」となります。

もう一度確認します。利回りとは、投資額に対する1年あたりのリターンです。そして、このリターンが利息+(売買または償還差額)となるのが債券の特徴です。最終的には額面で返還されるとはいえ、最後まで保有せずに途中で売却するかもしれませんし、そもそも購入額が100円ではない場合も。よって、利息以外に運用成果に影響を与える部分を考慮したものが、利回りということになります。そして、利回りは1年あたりで考えるのが大前提です。

5-2 利回りと利率の計算方法
1年あたりでどれだけリターンを得られるのか?を計算するのが利回り計算で、債券の場合は毎年どれだけ利息がもらえるかという割合である利率と、取引によって生じる差額を計算することで利回りを求めることができます。

預貯金であれば計算は簡単でしたよね?
100万円銀行に預けて1年間で1万円の利息がついた場合、「利回り1%だ!」と、すぐ分かりますよね。債券の場合は、「利息以外に運用成果に影響するもの」があるので、それを考慮することで利回り計算ができます。

ここで例題を見てみます。

残存期間1年、表面金利2%の長期国債(額面100円)を99円で購入した場合の最終利回りは?

上の問題の場合、債券を購入し1年後に100円が戻ってきます。その間、表面利率が2%なので、1年間で2円の金利を受け取ることになります。(利息は額面に対してなので、100円×2%=2円となります。)

ここまでは預貯金と全く同じです。ただ、債券というものは必ずしも額面どおりでは購入できません。高い金利などが人気となれば、多くの人が購入したいと思うため、額面100円のところが101円、102円というように高めで購入することになります。一方、人気がない場合は99円、98円など額面より低い価格で購入することができます。

今回の購入価格は99円です。1円安く購入していますよね。ただ、債券の大原則で、満期(1年後)まで保有すれば100円で換金されます。ということは、この差額分1円得をしたことになります。そして、利回りを計算する際に、この1円も利息とみなして計算しましょうということです。よって、99円で購入して1年間で3円の儲けがあったので、預貯金と同じように考えれば99円預けて3円のリターン(1年あたり)があったことになります。式で表すと以下のようになります。

これが債券の利回りの計算方法です。最初から所有しても、途中から所有しても全て発想は同じです。購入額に対していくらの利息(経済的利益)を受け取ったか? それを期間を考慮して計算するだけです。

また、計算方法から分かるように債券価格が下がると利回りが上昇し、債券価格が上がると利回りは低下します。100円で買うより99円で買った方が購入額も低くなり、最終的には差額の1円が利益になりますよね。99円ではなく98円だといかがでしょうか? 価格が下がるほど利回りが高まり、価格が上昇すると利回りが低下することもしっかりと覚えておいてください。

5-3 オーバーパー、アンダーパーとは
上記で紹介したように、発行時から必ず額面(100円)で発行されるわけではなく、さまざまな要因を考慮して101円や99円で発行する場合があります。100円をパーとして、100円より高い状況をオーバーパー、低い状況をアンダーパーといいます。

アンダーパー発行の場合、100円よりも低い価格で発行され、最終的には100円で償還されます。このような場合、利息収入以外の償還差益が期待できるため、利率よりも利回りの方が大きくなります。

(広告の後にも続きます)

6.初心者におすすめの債券投資とは?

額面(償還額)が100円であるにもかかわらず、発行価格は100円とは限らず、その後も発行体の状況、マーケットの状況次第で価格が変動するため、投資初心者にとってはやや難しく感じるかもしれません。よって、初心者におすすめの債券投資方法として「個人向け国債」が挙げられます。購入も1万円からで、価格の変動もありません。非常にシンプルで分かりやすいため、おすすめです。

ただし、個人に対して分かりやすい商品設計となっている分、金利水準は通常の国債よりもやや低くなります。そもそも超低金利の現状、日本の国債利回りは非常に低いため、通常の国債も個人向け国債も定期預金とほとんど変わらない水準です。よって、多少リスクを取れるということであれば高金利が期待できる外貨建て債券などもおすすめです。どの国がどのような債券を発行しているのか、一度調べてみてください。