コンテストガーデンA
Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜

古橋 麻美

(東京都)


信州大学農学部森林科学科卒業。英国Writtle CollegeとSir Harold Hillier Gardensにて園芸・ガーデニングを3年間学ぶ。帰国後は造園会社にて商業施設などのガーデン管理や花壇デザインに従事。独立後もガーデナーとして庭のメンテナンスを中心に、植栽デザインと施工のほかワークショップも行う。

【作品のテーマ・制作意図】
武蔵野のくさはらを表現するにあたり、オーナメンタルグラスとカラーリーフ、特徴的な葉を持つ植物をメインにしたガーデンをつくってみたいと思いました。「グラスガーデン」は馴染みが薄かったり、地味にとらえられたりすることもあるかと思いますが、宿根草に加え、球根植物も多用し華やかさをプラスすることで、多くの方に楽しんでいただけるガーデンを目指しています。

【主な植物リスト】
〇北側(日向)
グラス類…イトススキ/カラマグロスティス/ペニセタム/パニカム/モリニア など
季節の花…アガスターシェ/フロックス/ルドベキア/アガパンサス など
和の花…キキョウ/オミナエシ/フジバカマ類/ヤブカンゾウ/ヒオウギ など
球根…ユリ類/スイセン/カマッシア/ダッチアイリス/アリウム など

〇南側(日陰)
グラス・葉物類…フウチソウ/ベニチガヤ/ギボウシ類/クジャクシダ/クサソテツ など
季節の花…アスチルベ/プルモナリア/ティアレラ/ムラサキツユクサ など
和の花…イカリソウ/ヤマブキショウマ/シュウメイギク/チョウジソウ/ミヤコワスレ など
球根…ユリ類/スイセン/コルチカム など

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コンテストガーデンA 月々の変化

10月の様子


【10月の日向エリア】

秋の陽に輝くたくさんのグラス類の中で、夏の名残りのルドベキアやフジバカマなどの花が美しく映えています。派手な印象を与えがちな黄×ピンクの組み合わせも、グラス類の絶妙な配分によって、落ち着きのあるナチュラル感を漂わせています。植栽の手前一角では、白いタマスダレとヒガンバナが瑞々しいアクセントを効かせています。


【10月の日陰エリア】

10月に入り花壇の手前側で人目を引いているのは、コルチカム(イヌサフラン)。透明感のあるピンクの花が、トーンの低い色彩の中で効果的なコントラストを生み出しています。暗くなりがちな後方では、オトコエシの白花やホスタの白斑が明るい印象を与えていることで奥行き感が高まり、花壇の見応えが増しています。

9月の様子


【9月の日向エリア】

9月に入ると黄×ピンクの花々とグラスのボリュームが半々となりました。ルドベキア‘タカオ’やミソハギの鮮やかな花が、落ち着いたトーンの中で輝くように咲いて見えます。数本枯れ始めた株もありますが、さまざまな形のグラスの穂によく馴染み、情趣あふれる風景が生まれています。


【9月の日陰エリア】

真夏のダメージがなく、気持ちよい眺めが楽しめるリーフガーデン。整然と立ち並ぶアスチルベの穂はややかたい印象ですが、風をはらんだベニチガヤやフウチソウが点在していることで硬軟のバランスをキープ。オトコエシと共にガーデンが軽やかに見えます。

8月の様子


【8月の日向エリア】

先月に続き旺盛に花々が群れ咲き、草丈のあるグラス類が加わってきたことで、ぐっと野趣に富んできました。グラス類の中でも特に、エラグロスティス・スペクタビリスのエアリーな穂が株と株の間を埋め、カラマグロスティス ‘カールフォースター’が背後を目隠しし、花々の引き立て役として効果を発揮しています。


【8月の日陰エリア】

瑞々しかった春~夏の花々は終わりを迎え、ひと足早く秋を感じる風景となりました。この時期は、オレンジがかった黄花のリグラリア‘ミッドナイトレディ’や深紅のペルシカリア ‘ブラックフィールド’の濃厚な花色が、植栽に深みを与えています。

7月の様子


【7月の日向エリア】

野趣あふれたガーデンは、花真っ盛り。バーベナ・ボナリエンシスやミソハギなどの花が奔放に広がり、隣り合う植物がうまく交わりながら、それぞれの美しさを発揮しています。一角では、ピンク×黄の色彩の中に、カノコユリ‘ブラックビューティー’の濃ワイン色がスパイスを効かせて、花壇の存在感をより一層高めています。


【7月の日陰エリア】

清楚さと華やかさをもたらしていたヤマユリが上旬で咲き終わり、下旬からはリーフで魅せる時期となりました。フウチソウなどのグラスが細いラインを、リグラリアやホスタの葉が広い面を描き、色や形が異なるリーフ類の対比の妙が楽しめます。株張りが大きく旺盛に伸びる日向の花壇とは対照的に、日陰の花壇は、花色は控えめながら、全体的にまとまりを感じさせます。

6月の様子


【6月の日向エリア】

6月の庭で最も目を引くのは右前面のコーナーで盛りを迎えるフロックス‘ブルーパラダイス’。植わるのは1カ所のみですが、同じ花色のバーベナ・ボナリエンシスで背景を埋めることで、まとまりと見応えが生まれています。後半になるとアリウム‘丹頂’とヒオウギが開花。濃いワインレッドと反対色となる黄花が、ガーデン全体のピリリとしたスパイス的存在となっています。


【6月の日陰エリア】

ピンクのアスチルベ‘タケッティスペルバ’や‘ビジョンズインピンク’、そしてカンパニュラ・ラプンクロイデスの花穂があちこちで上がり、縦のラインを強調したデザインが楽しめます。後方ではホスタやリグラリアなどのカラーリーフが明るさや陰影を生み出し、植栽の表情に深みを与えています。

5月の様子


【5月の日向エリア】

すらりと伸びて高くなった草丈が、初夏の風に揺られながらワイルドなうねりを見せています。中旬になるとリナリア・プルプレアやバーベナ・ボナリエンシス、フロックス‘ブルーパラダイス’、ペンステモン‘ダークタワーズ’ の花が一斉に開花。後方ではカラマグロスティス‘カールフォスター’がブルーグリーンの花穂を上げ、ガーデンは青みを帯びたピンクに色づきました。


【5月の日陰エリア】

ティアレアやムラサキツユクサ‘スイートケイト’、アスチルベなどの、明るくやわらかい葉色が美しいガーデンを構成。上旬はピンクの花を咲かせるツツジ ホンコンエンシスがアクセントになり、下旬になるとリーガルリリーの大輪花が開花して、初夏到来のインパクトを高めています。ホスタやリグラリアなどの葉物がガーデンに落ち着いた印象を与えるなか、手前ではルズラ・ニベアが幻想的な風景を描いています。

4月の様子


【4月の日向エリア】

4月前半に咲いていた白や黄色のスイセンが中旬には終わり、後方のブルーのカマッシア‘ライヒトリニー’にバトンタッチ。スラリと伸びる花穂が乱立するように広がり、この時季らしい勢いを見せています。まだ花をつけていないその他の宿根草も、形の異なるリーフをこんもりと茂らせ、共演する様子も見どころです。


【4月の日陰エリア】

4月上旬はコンパクトなスイセン‘ベビームーン’が主役で、緑が少なく素朴な風景でしたが、中旬には白いスイセン‘タリア’とプルモナリア‘トレビファウンテン’が咲き始め、ぐっと華やさが増してきました。また、手前ではイカリソウやティアレアの小さい花が咲き、デザイナーがイメージする‘春の森の景色’が表現されています。

3月の様子


【3月の日向エリア】

日向のエリアでは、上旬はクロッカス‘ホワイトウェルパープル’が彩りを添えるものの、表土がまだ寂しい印象でしたが、後半になると随所に散らしたスイセン‘ベビームーン’の明るい黄花が咲いて、春らしさがぐんとアップ。一方、数か所に植わる銅葉のペンステモン‘ダークワーズ’のダークカラーが引き締め役となり、アイリス類の細い葉が青々と伸び始め、空間を埋めています。


【3月の日陰エリア】

日陰のエリアでは、上旬はカレックスや銅葉のティアレラ‘ピンクスカイロケット’の葉の間から球根の芽色が確認できる程度でしたが、下旬になると日なたと同じスイセン‘ベビームーン’が開花をスタート。まとめて数か所に植えられた小さなシラー・ミスクトスケンコアナも満開を迎え、原生地の林床のような風景を描いています。奥の方ではユリがニョキリと芽を上げ始め、穏やかながらも秘めたパワーを感じさせています。

2月の様子


【2月上旬】

日向のエリアでは、リナリア・プルプレアの銀葉やペンステモン‘ダークワーズ’の紫の葉がアクセントになって、パニカムやペニセタムの枯れ色の葉が風に揺れています。地際をよく見ると小さな芽が伸び始めています。日陰のエリアでは、イカリソウやティアレラの赤紫の葉が寒さに耐え、花壇の奥では、ヤブラン’シルバードラゴン’が細葉を伸ばして明るい彩りになっています。日向・日陰とも後方に剪定枝で形作ったバイオネストが備えられ、メンテナンス時に出た枯葉などが入れられています。

1月の様子


「Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜」作庭後、1月の様子。