去年娘が生まれ、結婚してもうすぐ5年がたとうとしていました。私の義実家は有機野菜を扱う農家で、夫は跡取り息子。農家の嫁は大変そうでしたが、持ち前のコミュ力を義父に見込まれ、営業に挑戦。丹精込めて育てた野菜が売れるとやりがいを感じます。そんな、忙しくも充実した毎日を過ごしていました。

お得意先から電話が!

ある日、わが農家の売上7割を占めている取引先のオーナーから電話がかかってきたのです。彼は人気レストランを3店舗展開していて、全店でうちの野菜を使ってくださるお得意様。つい最近息子さんに代替わりしましたが、取引は継続したいと再契約したばかりでした。ところが……。

「いろいろ考えましたが、お宅とは取引を中止します。もう納品しないでください」

突然の電話でサラッと言われた私は思考が停止し頭が真っ白に。つい先日の再契約は何だったのでしょう? 理由を尋ねると、「もう決まったことだからね」の一点張りで、そのまま電話を切られてしまいました。

1年ごとに話し合って締結する契約を踏みにじり、理由もなく一方的に打ち切るなんて違法行為です。売上激減の危機ももちろんですが、「何かこちらに落ち度があるならできる限り善処したい」と、私は諦めきれませんでした。

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その理由とは?

オーナーと直接話をしたかった私は、ひとりでレストランへ。実はこのとき義父は腰を痛めて入院中でした。おまけに多忙な収穫期を迎えており、夫は畑で手一杯。ここは営業を任された私が奮闘しなければ、と覚悟を決めたのです。

レストランに到着すると、慌てたように隠れようとするオーナーをとっつかまえて直訴を開始。「せめて理由を教えてください。改善に向けて尽力します」

するとオーナーはにべもなく言ったのです。

「今どきさ、有機栽培なんて割高なんだよ。虫も多いしすぐに腐る。正直面倒なんだ。改善するって言うんなら、半額以下で卸してよ。できないだろ? うちはもう、あんたのとこの有機野菜は不要。外国産の安い野菜使うから取引停止で」