「貯蓄から投資へ」という世論の中、NISAやiDeCoといった制度も注目されており、お金の貯め方、増やし方に関する情報に触れる機会が多くなってきました。ただし、よく考えてみると、そもそもなぜお金を貯めるのでしょうか?漠然とお金を貯めている人もいるかもしれませんが、基本的には何らかの「お金を使う」目的があるはずです。

つまり、「お金を貯めること」は「お金の使い方について考えること」と表裏一体です。今回は新社会人向けにお金の使い方やお金の貯め方、家計管理全般についてアドバイスいたします。

新卒の平均給与、手取りはいくら?

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、新社会人の平均給与は以下の通りです。近年物価の上昇に伴い各企業の賃金も上昇しており、新入社員の給与水準を引き上げる企業も増えています。ただし、平均値を見ると新社会人の給与はそれほど大きく上昇はしていないようです。

引用:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」から一部抜粋

例えば2年前の同じ調査では、大学卒の男女計の平均給与は22万6000円でした。2500円、1%程度上昇はしていますが、ここ数年の物価上昇と比べると上昇幅はやや小さい印象があります。よって、より一層上手なお金の使い方が求められます。

特に赴任先で初めて一人暮らしをするなど、新しい生活を始める場合は慣れない環境とあって、食事の面を始め何かと出費がかさむことが想定されます。あらかじめ手取りから逆算し、どの程度生活費がかかるのか?いくら貯蓄に回すのか?など早い段階で計画を立てておくと良さそうです。

なお、上記金額は給与支給額であるため、手取りではありません。税金や社会保険料を差し引いた可処分所得、つまり手取りはおおよそ給与収入の8割程度となります。よって大学卒の場合、22万8500円の8割、18万円程度が手取りとなります。

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生活費のうち気を付けておきたい支出や目安金額は?

以下は総務省統計局が公表している「家計調査」(令和5年)の単身世帯の消費支出データを用いて主要な支出が消費支出全体のどれくらいの割合を示すか筆者が計算したものです。ただし、単身世帯とはいえ新社会人を対象にしたものではないため、あくまで目安程度としてください。

<単身世帯の支出に占める主要費目の割合>

表:総務省統計局「家計調査」(令和5年)を基に筆者計算

「衣食住」という表現があるように食事や住環境はとても重要です。「食」の部分、「食料」と「外食」を合わせると支出全体の3割以上を占めていることが分かります。「食」についていえば、一人暮らしの場合、外食やテイクアウト、デリバリー系のサービスを利用するとどうしても食費が高くなりがちです。なるべく自炊をすることで当初は出来る限り食費を抑えたいですね。もちろん、社会人としての人付き合いも始まりますので、会食や飲み会の機会も増えると思います。これは交際費という側面もありますが、常に節約志向ではなく、こういった支出は自分自身にとって成長につながる場合もありますので、上手に判断しながら向き合っていきたいところです。

住居・家賃は持ち家かどうかで支出の内容が大きく変わります。新社会人で一人暮らしをする人の多くは賃貸で生活することになると思いますが、「手取りの4分の1程度」の家賃を1つの目安に物件探しをすると良さそうです。また水道・光熱費や通信費も上記比率が参考になると思います。特に今はスマートフォンやインターネットは生活に欠かせません。性能やオプション等を追求するほど値段は高くなります。一般的には通信費は毎月支払っていくものです。1ヶ月でみると少しの差であっても、1年を通してみると大きな差となってきます。当面は手取りの4%程度を意識して、なるべく通信費を抑える工夫をしてください。