高知「ゴトゴト石」器物損壊、影響は“前科”にも…「罰金刑」受けた大学生6人の“重すぎる”代償

高知市北部の山中、土佐山地区にある観光名所「ゴトゴト石」を使用できなくした大学生6人が「器物損壊罪」によって高知簡裁からそれぞれ罰金20万円の略式命令を受けたことが報じられ、話題となっている。

ゴトゴト石は崖っぷちにある重さ数トンの巨石で、子どもの力でも簡単にゴトゴト揺れるにもかかわらず決して落ちないことから、“願掛けスポット”として多くの受験生らが訪れていた。

同地区では過疎化が進んでおり、ゴトゴト石は貴重な観光資源だったという。

「俺たちで落としてやろう」東京からレンタカーで現地へ

13日に配信された「朝日新聞デジタル」の記事によれば、罰金刑を受けた6人は関東の大学生。2022年11月26日朝、「絶対に落ちない石を、俺たちで落としてやろう」とレンタカーで東京を出発したという。

26日の夜に現地到着後、石を揺らしたが落ちなかったため、現地調達した工具を使うなどして27日夕方まで石を落とそうとするも、「くたくたになって、道具を放置したまま帰った」。この過程で、石の向きも変わり動かせなくなったそうだ。

器物損壊罪は親告罪のため、被害者からの告訴がなければ起訴できない。裏を返せば、示談が成立した場合は被害者が告訴を取り下げたり、告訴自体せず起訴されることはないが、今回は住民らが告訴に向けて500人分の署名を集めた。そして昨年6月、ゴトゴト石周辺の山林を所有する神社によって高知東警察署へ刑事告訴されたという。

罰金刑でも「前科」 その影響は…

器物損壊罪の刑罰は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」。今回は「罰金刑」だったため、懲役刑に比べれば“軽く”聞こえるかもしれないが、刑罰であることに変わりなく、前科もしっかりつく。

大学生だという6人には、この先「就職」というライフイベントが待っている。履歴書に賞罰(受賞歴と犯罪歴)に関する項目がない場合や、面接で前科について質問されなかった場合は、前科について積極的に伝える必要はない。しかし、SNSなどで容易に個人について調べられてしまう今、彼らの「デジタルタトゥー」が企業側に知られてしまう可能性も決して低いとは言えないだろう。

また医師や看護師を目指している場合、免許申請する際「罰金刑以上」の刑罰は申請書に記載しなければならない。罰金刑の前科そのものが欠格要件とはならないが、免許保留の理由として就職に支障をきたすこともある(医師法4条3号、保健師助産師看護師法9条1号)。

社会人が「罰金刑」を受けたら?

今回は大学生だったが、もし社会人が罰金刑を受けた場合、民間企業では就業規則に「懲戒事由」として定められていれば、何かしらの処分が下されると考えられる。

国家公務員や地方公務員の場合、「禁錮以上の刑」は欠格要件となっているので、原則は失職だ(国家公務員法第76条及び第38条1号、地方公務員法第28条4項及び16条1号)。罰金刑は「禁錮以上の刑」ではないものの、免職(懲戒免職)、停職、減給、戒告といった懲戒処分を受ける可能性もある。

なお現職の医師や看護師であれば、罰金刑以上の刑罰によって最悪の場合「免許取消」となることがあるので、注意が必要だ。

冒頭の大学生に戻るが、東京都心からゴトゴト石までは、ノンストップで走ったとしても車で10時間ほど。現地では丸一日ほどかけて、受験生や地元の人たちの思いを躍起になって踏みにじろうとした。それほどまでして彼らが手に入れたものは、あまりに重たい。