神戸大非公認サークル“旅館破壊”、ゴトゴト石…大学生の“悪ノリ” 思いもよらぬ「代償」リスク

国立難関・神戸大学の非公認サークルが、合宿していた旅館で障子を破る、天井に穴をあける、物品を破壊するといった写真や動画がSNSで拡散され、物議をかもしている。

騒動を受け、神戸大学は19日に「重要なお知らせ」としてホームページに謝罪文を掲載。詳細については「現在、学内で調査中であり、調査結果により大学として厳重に対処いたします」としている。

また報道によれば、被害を受けたとされる旅館も事実であることを認め、学生らと弁償に向けた話し合いを進めているという。

「ゴトゴト石」の大学生は罰金刑

大学生の“悪ノリ”による迷惑行為といえば、1週間ほど前に高知県の「ゴトゴト石」が話題になったばかり。こちらは落ちそうで落ちない石を「俺たちで落としてやろう」と思い立った関東の大学生6人が東京からレンタカーで高知市内の現場へ向かい、工具を使うなどして石を落とそうとするも失敗。その過程で石が動かなくなり、貴重な観光資源が「使用不可」となった。

これを受け、周辺の住民らが500人分の署名を集め、ゴトゴト石周辺の山林を所有する神社が昨年6月に刑事告訴。今月、大学生6人が「器物損壊罪」によって高知簡裁からそれぞれ罰金20万円の略式命令を受けたことが明らかになり、批判が広がっていた。

器物損壊罪は「親告罪」

神戸大学の大学生らによる物品の破壊行為も「器物損壊罪」にあたるのではとの見方があるが、同罪は親告罪だ。つまり被害者が告訴しなければ起訴されず、刑事事件となることはない。今回も、現時点で旅館側は「話し合い」による解決を目指していると見られる。

ただし大学生らに反省の色が見られず、話し合いが決裂すれば、告訴される可能性もなくはない。万が一そうなった場合、器物損壊罪の刑罰は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」だ。

器物損壊罪の懲役は刑期が1か月~3年、罰金額は1万~30万円、科料は1000円以上1万円未満の金銭を徴収されることとなるが、いずれにしても刑罰であることに変わりなく、「前科」がつくことになる。

“悪ノリ”が起こす悲劇

自由と誘惑の多い大学生活では、ちょっとしたきっかけで“悪ノリ”が起きやすいことも事実だ。ただしその代償はあまりに大きく、ひとたび前科がついてしまえば就職活動でつまずくことは想像に難くない。

たとえば履歴書を提出する場合、賞罰(受賞歴と犯罪歴)項目がない場合や面接で前科について聞かれなかった場合はそれを積極的に伝える必要はないものの、昨今は企業側も就活生のSNSを“特定”する動きがあり、一度刻まれてしまったデジタルタトゥーを隠しきることは容易ではないだろう。さらに今回は、迷惑行為の様子がSNSで拡散されてしまっている以上、たとえ話し合いで解決したとしても企業側にその事実を知られてしまうかもしれない。

また医師や看護師を目指している学生であれば、罰金刑以上の刑罰は免許申請書への記載が必須だ。前科そのものが欠格事由とはならないものの、「免許保留」の理由として就職に支障をきたす場合もある(医師法4条3号、保健師助産師看護師法9条1号)。

その他、海外旅行の際に犯罪経歴証明書などの提出を求められたり、渡航先によっては前科のある人が入国する場合にはビザ(査証)が必要になるなど、自由な渡航が制限される可能性もある。

大学ではこれからお花見、新歓シーズンとなるが、一時の“ノリ”で将来に暗い影を落とさないよう、十分に気をつけてほしい。