東京・秋葉原の飲食店で、サラリーマンのように見える6人組が飲食代を支払わずに「食い逃げ」した――。先週、防犯カメラの映像とともにこのニュースが報道されると、そのあまりに堂々とした“手口”に、ネットやSNSには驚きやあきれ声が多く寄せられた。
報道によれば、6人は先月8日18時頃に店を訪れ、アルコール、牛タン焼き、刺し身盛り合わせなどを飲食して“宴会”を楽しんだ後、自動精算機で代金を支払ったと見せかけて店を後にしたという。金額は合計1万7700円。同店は被害を警察に相談しているそうだ。
罰金刑なしの“重罪”
法律上、食い逃げ(無銭飲食)は刑法第246条「詐欺罪」にあたる可能性がある。一般的に詐欺といえば振り込め詐欺、特殊詐欺、結婚詐欺などのイメージが強く、意外に思う人もいるかもしれない。
刑法第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
食い逃げにあたる行為のうち、
そもそも代金を支払う気も所持金もなく、料理を注文し提供を受けた場合は「1項詐欺罪」
注文後に代金を支払う気がなくなり、会計の際に「必ず後で支払いに戻る」などと言って店の了承を得、そのまま立ち去った場合は「2項詐欺罪」
に該当するとされる。
ちなみに詐欺罪には罰金刑が規定されていない。たとえ出来心で食い逃げしたとしても、有罪となれば執行猶予がつかない限り、確実に刑務所へ収容されてしまう“重罪”である。
食い逃げしても「罪に問われない」ケースがある!?
前述のように、食い逃げを大きく分けると、いつから支払う意志がなかったのかによって「1項詐欺罪」「2項詐欺罪」となるが、実は詐欺罪どころか刑法上の犯罪そのものが成立しないケースがある。「食事を終えた後に支払いができないことに気づき、店側が気づかないうちに退店したり、トイレの窓などから逃げたりした場合」だ。
詐欺罪の成立には「欺罔」(ぎもう、相手にうそをついてだます行為)、「錯誤」(相手がうそを信じ込んでしまった状態)、「交付または処分行為」(うそによって錯誤に陥った相手が自ら財産を差し出したり利益を移転させたりする行為)の3要件が必要となる。
しかしこのケースでは、飲食物の提供を受けたり、退店を許可されるために店側をだます「欺罔行為」が存在していない。
詐欺罪以外では、財物をこっそり奪う「窃盗罪」(刑法第235条)が近いようにも思えるが、食い逃げの場合は「財物」ではなく「利益」を奪っており、現状の刑法ではこれを処罰する規定が存在しないことから、刑法上の犯罪は成立しないと言われている(いわゆる利益窃盗)。
とはいえ、飲食代金を支払うという民事上の義務が消えるわけではなく、証拠次第では「飲食の後に所持金が足りないことに気づいた」といくら主張しても認められない可能性もあるため、食い逃げをするべきでないのは言うまでもない。