このところさまざまな自治体で水道料金の値上げが発表されています。大阪府岸和田市、岡山県岡山市、愛知県豊田市、兵庫県宝塚市が今年4月から、新潟県新潟市、愛知県一宮市などが今年10月からの水道料金値上げを発表しています。物価高が続く中、水道料金も値上がりすることでため息をつく人も多いと思いますが、水道料金の値上げはなぜ必要なのでしょうか。そして今後も続くのでしょうか。水道料金を抑えるちょっとしたコツと合わせてお伝えします。

岸和田市では18.9%の値上げ


水道代の
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大阪府岸和田市は2024年4月1日から水道料金を18.9%値上げすると発表しました。2024年6月分から実際の水道料金に反映されます。岸和田市では、一般用水栓で1ヵ月の使用水量が25m³の場合、2024年3月31日までの料金は3608円です。これが、2024年6月~2025年7月の経過措置期間は3905円、経過措置期間終了後の2025年8月以降は4180円にまで値上がりする計算になります。なお、1ヵ月の使用水量が25m³というのは、4人家族のひと月の使用量とほぼ同じです。

水道代を値上げする自治体は岸和田市だけではありません。このところ、全国の自治体が水道代の値上げを発表しています。岡山県岡山市、愛知県豊田市、兵庫県宝塚市などが今年4月から、新潟県新潟市、愛知県一宮市などが今年10月から値上げする予定です。また、神奈川県は今年10月に16%、2025年10月に19%、2026年10月に22%の3段階での値上げを発表しました。

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値上げの理由は?


書類を見て驚く女性
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このように、全国の自治体で水道料金の値上げが相次いでいますが、その理由はどこにあるのでしょうか。それは水道事業が各自治体の独立採算制で運営されている点にあります。

水道事業を運営する原資は、各自治体の水道料金収入です。現在、日本は深刻な少子高齢化社会となっており、特に地方において人口減少に歯止めがかからない状況になっています。人口が減るということは、水を使う人や使う量が減るということです。水の使用量が減れば、水道事業の原資である水道料金収入も減ります。

たとえば、宮崎県日向市の場合、1998年の水道料金収入は、約11億2000万円でした。それが、2020年には約9億7000万円に減少しています。人口減少により、約20年間で約1億5000万円も収入が減っているのです。程度の大小はあれ、多くの地方都市で似たような傾向になっています。ちなみに東京都は、人口が多いため「向こう40年間は水道料金の値上げはない」と言われています。

「収入が減っているのであれば支出を抑えればいいのでは」と思う方もいるでしょう。もちろん、各自治体とも経費削減に努めていますが、それには限界があります。水道事業を運営するには、浄水場や配水場、水道管などさまざまな施設や設備が欠かせません。安全な水道水を確実に各家庭に届けるためには、これらの維持・管理費用を削るわけにはいきません。

加えて、現在、日本に張り巡らされている水道管の多くが老朽化しています。水道管の法定耐用年数は約40年ですが、耐用年数を超えた水道管は全国に約13万kmあると言われています。厚生労働省の資料によると、2015年時点の管路経年劣化率(老朽化)の全国平均は、13.6%。最も管路経年化率が高かった大阪府では、28.3%の水道管が老朽化しています。この資料が作成されてから10年近くが経つため、現在の老朽化率はより上昇しているでしょう。古くなった水道管を新しいものに替える費用の原資も、水道料金収入です。

つまり、人口減少により収入は減ったにもかかわらず、従来と同等あるいはそれ以上の規模の支出が必要というわけです。不足する財源を借金(公営企業債)で賄っている一部の自治体もあります。しかし、いつまでも借金に頼り続けることもできないため、多くの自治体では水道料金の値上げを行っているのです。