インダストリアルな雰囲気が漂う『circulation』の店内。手前には販売中の商品が並び、木の温もりを感じる奥のスペースがリペアの工房となっている。


『アンド プレミアム』が創刊以来大切にしてきた「ベターライフ=より良き日々」という考え方。その世界観を叶えるショップを巡る連載が新たにスタート。第1回目は、今年2月に東京・恵比寿にオープンした、〈エンダースキーマ〉が手がける初のリペア専門店『circulation』を訪ね、ベターライフを叶えてくれる3つのポイントを見つけました。

01 直接対話をしながら、パーソナルな提案を受けられる。

 恵比寿の裏路地にある、一見ガレージのような空間の奥に広がる靴の修理工房。〈エンダースキーマ〉の旗艦店『スキマ 恵比寿』の向かいに位置するここは、ブランドが掲げる“循環”を体験することができる場所だ。

 2010年に柏崎亮がスタートさせた〈エンダースキーマ〉は、職人の確かな技術とモダンなアイデアを掛け合わせた、上質で唯一無二のデザインのレザー製品を届けるブランドだ。そんなブランドが2023年に立ち上げたプロジェクトが店名にも冠した「circulation」。「リペア」「リセール」「カスタム」「ワークショップ」の4つを軸として、プロダクトを循環させ、長く愛してもらうことを目指す。ともすれば、今も毎シーズンさまざまな新作プロダクトをローンチするブランドにとっては、リペアをして長く使用することを促すのは、生産的ではないのかもしれない。それでも、今回のフィジカルストアをオープンした理由を、PRの井上恵さんはこう話す。

 「“循環”というテーマは、デザイナーの柏崎が長らく大切にしていたテーマです。我々が作っているのは完成品としての製品ではなく、“人が履くこと、使うことで完成していく”という考えでものづくりをしているので、ケアしながら長く使う、自分らしいプロダクトに育てていくというのは、ずっと伝えたい想いではありました。ブランドとして、これまで修理は承っていましたが、お客様に足を運んでいただき、直接相談できる場は初めて。対話を通して、より多くの人が革製品を愛し、プロダクトを長く愛用するきっかけとなればと思っています」。


もともとガレージだった半地下のスペースを生かし、コンセプトである“循環”を体現した店内。これまでも〈エンダースキーマ〉の店舗を手掛けてきたDDAAの元木大輔氏が担当。


人が使い、その人なりの完成品になったプロダクトを新しい使い手へつなぐ「リセール」のラック。唯一無二に経年変化した、「パティーナ」と名付けられたシューズも並ぶ。今後は、顧客から買取した製品のリセール販売も計画中。


既存のデザインを新しい解釈で再構築する「カスタム」。現在はカスマムされた製品が並ぶだけだが、今後は個別の希望に合わせたカスタムオーダーも段階的に実施予定。


〈エンダースキーマ〉のアトリエで使われていたシューズラックを用いた什器。カスタムやリセールのプロダクトがディスプレイされている。


工房の奥の机はデザイナーの柏崎さんがブランドを始めた当時に使っていたもの。


店内の至るところに〈エンダースキーマ〉の革小物が。ブランドをスタートした当時から、革靴作りで余る小さな革を生かした小物を製作しており、循環を意識した素材使いのアイテムも数多く展開する。

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02 レザー製品からスニーカーまで、さまざまな修理に高い技術で対応してくれる。

 “循環”のために現在提供しているプログラムは4つ。ケアすることでモノを長く使えるように、愛せるようになる「リペア」、人が使い、その人なりの完成品になったプロダクトを新たな使い手に届ける「リセール」、アーカイブの製品を新しい解釈で再構築する「カスタム」。また、昨年『スキマ 恵比寿』にて〈フライターグ〉とのコラボレーションをおこなったように、顧客が自らの手を動かし、自分だけのプロダクトを完成させる「ワークショップ」も開催していく。

 「リペア」は〈エンダースキーマ〉の製品だけでなく、他社の革靴、ピンヒールやパンプスなどのレディースシューズ、スニーカーも受け付けてくれる。壊れた箇所を直すだけでなく、破けがちなスニーカーの踵の内側をレザーに張り替えて補強するというような、より長く大切に使うためのリペアも可能だ。修理だけではなく靴作りの知識を持ち、当然ながら修理の経験も豊富な専任の職人が常駐しているため、直接コミュニケーションをとりながら、自分が求めるリペアの相談ができる。〈エンダースキーマ〉の製品以外もリペアを受け付けるところにも、ブランドが目指す“循環”への強い思いを感じる。それを可能とする確かな技術もここにはある。


左がリペア前、右がリペア後。 歩き方や姿勢のクセにより一人一人異なる傷み方をするため、その癖を考慮しながらしっかりと補強していく。


修理に使用するミシンは、前後左右どの方向からも針を送れることが魅力。


靴を知り尽くした、腕利きの靴職人が常駐。その丁寧な手作業を眺めることができるのも、この場所を訪れる理由のひとつとなりそうだ。


靴修理の道具が並ぶトレーも〈エンダースキーマ〉製。


工房の奥に設置された、靴修理用の大型のグラインダー。


手作業で丁寧に、スピーディーに行われるソールの修理。リフトの張り替えやトウの張り替えなら3日ほどで修理してくれる。