新しい出会いが生まれる月には、 仲間と寄り添える社交的な花を。

4月の和名は卯月。由来は卯の花とも呼ばれる白いウヅキの花が咲く頃だから、ともいわれている。また、新年度を迎え、新しいスタートを切るフレッシュな時期でもある。交友関係も広がることから、4月は別の花と組み合わせたときに相性のいい、お互いを引き立てる花を中心に。


クレマチス ダッチェスオブエジンバラ
Clematis ‘Duchess of Edinburgh

新しい環境でスタートする人への門出祝いに。
科名/キンポウゲ 原産地/北半球の温帯地域。和名で鉄線(てっせん)という種類があるほど茎が細くてしなやか。「そのたおやかさを生かすように枝ものやバラと組み合わせて、ふんわりとした優しい雰囲気のブーケにすると素敵です。もし、一種類だけでまとめたいという場合は、八重咲きのダッチェスオブエジンバラを。華やかさがあるので十分、主役になってくれます」。ほかの花や植物も引き立てる協調性に優れた花は、新しいプロジェクトを進める人や環境に変化があった人に贈るのもおすすめだ。


スカビオサ
Scabiosa

インテリアにも馴染みやすい、エレガントな花。
科名/スイカズラ 原産地/西ヨーロッパ、西アジア。茎が細くて柔らかく、曲線を描くのが特徴。一輪でもかわいらしいが、向きが変わりやすく、動きが出るためブーケにすると魅力が引き立つ。「オレンジなど強い色もあるのですが、4月は芽吹きの季節。外の世界の花はまだそれほど強さがないので、優しい色合いを贈りたいです。パープル系でも濃いものから薄いものまであります。シックな色合いでまとめると、インテリアの邪魔をしないので、引っ越し祝いなどにも向いています」


ブラックレースフラワー
Daucus carota var. sativus ‘Black Knight’

小花が集まった、スタイリッシュな一本。
科名/セリ 原産地/地中海沿岸、西アジア。ニンジンと同じ属の植物なので、根っこは小さな黒いニンジンの姿をしている。「切り花として最近、人気が高まっている花。こちらも本来ならば〝添え〞にしたい花でもありますが、ブラックならば存在感があります。主役として贈るのにもぴったりです」。褐色の小さな花がレース状になっていて、一目見ると忘れられない花姿。アンティークのインテリアにもよく似合う。「大人の雰囲気を持つ花なので、シックな印象の方に贈りたくなります」


ラークスパー
Consolida ajacis

伸びやかで、愛らしい小鳥をイメージ。
科名/キンポウゲ 原産地/南ヨーロッパ、北アメリカ、アジア、アフリカ。英名のラークスパーとは〝ヒバリの蹴爪〞という意味。和名では千鳥が飛ぶ様子を連想することからチドリソウ、飛燕草と書いてヒエンソウとも呼ばれ、洋の東西問わず小鳥の姿を思わせる愛らしさがある。「下方からどんどん咲いてくる、スッとしたフォルムが格好いい草花です。丸みを帯びたブーケが多いなか、これは縦長に束ねることができるのでスマートに贈れます。花持ちがよく、ワキ枝の花もちゃんと咲いてくれます」

平井かずみ Kazumi Hiraiフラワースタイリスト

草花が身近に感じられる、暮らしに根付いた日常花を提案。東京・恵比寿のアトリエ「皓SIROI」を拠点に、日本全国で花の教室をはじめとしたワークショップや展示を開催。著書に『あなたの暮らしに似合う花』『花のしつらい、暮らしの景色』(ともに扶桑社)など。

illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Wakako Miyake
参考文献:『花屋さんで人気の469種 決定版 花図鑑』(西東社)、『花の名前、品種、花色でみつける 切り花図鑑』(山と溪谷社)

&Premium No. 126 Life with Flowers & Greens / 窓辺に、花と緑を。

人はなぜ、こんなにも花や草木を愛するのでしょうか。植物と触れ合うことは、その美しさを愛でるということにとどまらない大きな喜びを、私たちに与えてくれます。植物とともにある生活は、毎日が発見の連続。 季節の移ろいに敏感になるだけでなく、住まいや暮らしそのものを、心地よく、健やかにしたいと願う気持ちまでもが、ふつふつと湧いてくるように思います。さらに、私たちの中に潜む原初的な感覚の扉をそっと開き、心にやすらぎをもたらしてくれるのです。今号は、花を飾ること、植物を育てることを楽しみながら、心地よく暮らす人たちを訪ねました。

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