帰山あるさん、ひろこさん、こうすけさん一家のリビングは、子ども部屋の通称「ARU HOUSE」に隣接。ワンルームながら開放感とプライベート感を併せ持つ。
壁の色もあるさんが自ら選んだという。ペパーミントグリーンが、家全体の基調色であるラベンダーピンクとマッチ。
アンティークの戸棚はじめ、厳選されたものに囲まれたキッチン。
こうすけさんのワークスペース。仮眠は後ろのハンモックで。
家族みんなで手を動かして、スケルトンからフルリノベーション。
帰山ひろこさんとこうすけさんが結婚と同時に都内マンションの一室を購入したのは20年ほど前。ともに美大出身でものづくりが得意なふたりは、この築50年超のスケルトン物件にペンキを塗ったり家具を作り付けたりと、ワンルームをできるだけ自らリノベーションした。数年後、あるさんが生まれ、家族それぞれのスペースが必要になった。
最初の「ARU HOUSE」は、今より狭い半個室だった。当時幼稚園児ながら、アイデアを出し、手も動かして一城の主に。中学3 年生になり、よりプライベートで集中できる環境をつくるべく昨夏、改装に着手。
「3Dソフトを使って図面を描いて。飾り棚も自分でデザインしました」
家具は、アンティークやオーダー品に〈IKEA〉もうまく取り入れて白色に統一。ミントグリーンでペンキ塗りした壁には「自分で描いた絵や海外の古いポスターなどお気に入りを飾って」カラフルに。彼女の世界観が凝縮された空間が完成した。
あるさんがデザインしたという、壁二面を利用したコの字形の本棚。
ダイニングテーブルの隣には、夫婦の寝室コーナーが。特注したベッドフレームの下は収納になっている。扉のようにペイントされた背面の棚には、食器類や洋服が。
お気に入りの古いイラストや雑誌の記事が張られた「ARU HOUSE」の壁面。
リビングと玄関サイドの仕切りにもなっている棚の一角には、あるさんが4歳から続けているバレエで履き潰したトウシューズがぎっしりと並んでいる。
対向にはこうすけさんのワークスペースも。デスクチェアに座ったままで必要なすべてに手が届くコックピットのような秘密基地だ。ひろこさんだけが専用のスペースを持っていないが「広い場所にポツンといるほうが好き。だから夫と娘が部屋に引っ込むと、広いスペースが独占できていいんですよ(笑)」。だが、こうすけさんもあるさんも自室に籠もりきりのことはない。一家がメインで過ごすのは、あくまでもリビングスペース。一緒にいるのが基本だ。
どこにいても家族の気配が感じられるのは、ワンルームならではのよさだ。とりあえずものを押し込んでおく、開かずの間がないのは、心晴れやかに暮らせるポイントだという。
「ものの量は増やさないと決めています。欲しいものがあってもよく吟味するし、新しく増えたら、代わりに何かを手放します。はみ出さずに、すっきり収めるのは厳守です」とひろこさん。自らのルールに則りながら、そうやって家族の変化に合わせ、都度形を変えてきた帰山家。
「古い家はリフォームがしやすいし、それがまた似合う。気兼ねなくいろいろ挑戦できるのも楽しいんです」
アンティークショップや雑貨店で見つけてきた海外のポスターの模写やコラージュが、多才なあるさんの趣味のひとつ。
カラフルな室内とは対照的に、あえてリネンまで白一色で統一したというバスルーム。洗面台は〈コーラー〉のものを。
ひろこさんの作業場にもなるダイニング。ライトは古い実験器具をパーツにしたものや、溶岩でできたものなど。
築53年のマンションをスケルトンの状態で入手。広いワンルームを生かしたまま、家族各自のスペースも確保している。
帰山ある、帰山ひろこ、帰山こうすけモデル、金継ぎ講師、映像作家
編み物やアクセサリー、家具まで自作する両親の元で育ったあるさんは、モデルとしても活躍。Instagramは。創作する際にはまず図面を引く。
photo : Yuka Uesawa text : Mick Nomura (photopicnic