話を聞いた人

鳥居みゆき
2000年に芸人デビュー。白装束で踊る「ヒットエンドラン」のネタでブレイク。映画やドラマ出演のほか、著書に『夜にはずっと深い夜を』『余った傘はありません』(幻冬社)『やねの上の乳歯ちゃん』(文響社)がある。発達障害をテーマにした番組『でこぼこポン!』(Eテレ)に出演中。

でこりんには共感できることばかり

──鳥居さんは2022年からEテレ『でこぼこポン!』に、発達がでこぼこな博士の「でこりん」役として出演しています。さまざまな悩みを抱える役柄ですが、演じる際に意識していることはありますか?

鳥居みゆきさん:とくにないですね、でこりんは私そのものなんです。だからどの困りごとも「私もそう思う!」と共感できることばかりです。友達のぼこすけに共感できることもあります。人混みがイヤとか、初めての場所は緊張するとかね。どのお話も共感できています。

でもまれにでこりんに共感できないこともあります。例えば文字をマスに収められない話です。でこりんがマスに名前を書くんですけど、大きくはみ出しちゃって落ち込むんです。私は絶対にはみ出しません。むしろはみ出すことは悪だと思っているから、はみ出せないんです。こういうところが違うなぁと思います。

──番組ではあらゆる困りごとの解決策をみんなで探ります。鳥居さんは自分の特性に悩んだら解決策を探しますか?

行動を変えてどうにかなることと、努力してもできないことがありますね。できないことは人に頼っています。

私ね、リボン結びが苦手なんです。できるようになりたいから練習したけど、それでもできないんです。だから、めちゃくちゃ努力した自分を褒めてあげて、あとはできる人にお願いするんです。いつもマネージャーさんに「靴ひも結んで〜」とお願いしています。

何もせずに最初から頼るのはダメですよ。できるよう努力はすべきです。努力してもダメであれば、人に甘えるスキルを身につけて頼るんです。

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診断を受けないのは私がそう選んだから

でこりんの話じゃないですけど、私、耳で聞いたことが覚えられないんです。

──耳で聞いたこと?

例えば、人の名前を耳で聞いただけでは覚えられません。でも一度書いたり、文字として読むと覚えられるんです。音楽もそうで、この曲を覚えてくださいって音源だけを渡されても歌えないけど、カラオケの音程バーのような音の運びを見ればほぼ歌えるんです。日本語吹き替えの映画は記憶に残らないから字幕で観ます。これもLD(学習障害)の一種なのかなぁ。

──テレビの現場では「これをやってください」のようなとっさの指示があるのでは?

ありますけど、口頭で指示されただけではできません。『でこぼこポン!』でもよくありますが、変更があったら文章で見せてくれるんです。この現場のいいところは苦手なことを苦手と言えることですね。

──立ち入ったことをお聞きしますが、鳥居さんはこれまで発達障害と診断を受けたことはありますか?

ないですよ。だって、もしも発達障害と診断されたら、誰も私のことを不思議とか変な人って言わなくなるし、言えなくなるじゃないですか。診断を受けないのは私がそう選んだからで、今のままが楽なんです。

でも、病院に行ったら発達障害と診断されるんだろうな。世間に「鳥居は変わってる」と言われなくなったら受診します。