マイナンバーカードの全機能をスマートフォンに搭載することを含めたマイナンバー法の改正案が国会に提出されました。現在の国会の議員構成上、この改正案は確実に成立すると見られています。改正案が成立すると、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか。マイナンバーカードの経済的メリットと共に詳しく見ていきましょう。

マイナカードがスマホの中に入っているのと同じ状況に

政府は3月5日、マイナンバー法の改正案を国会に提出することを閣議決定しました。今年1月26日から始まった今国会での成立を目指しています。この改正案が成立すると、マイナンバーカードの全機能をスマートフォンに搭載できるようになります。

例えば、現在はオンライン上で銀行や証券会社の口座を作成する場合、スマートフォンでマイナンバーカードを読み込んだり、顔写真を撮影したりしなければなりません。しかし、改正案が成立するとその手間は必要なくなります。また、マイナンバーカードを常に持ち歩くことなく本人確認ができるようになるほか、さまざまな各種手続きがスマホ1台で可能になります。

マイナンバーカードのスマホ搭載は昨年から始まっていますが、対応しているのはAndroid端末のみでiPhoneでは利用できません。さらに、搭載されているのは保有者本人であると示す電子証明書の機能だけ。保有者の氏名・住所・生年月日・性別・個人番号・本人の写真といった券面の画像データ、券面の記載事項の文字データなどの情報は搭載されていません。

そのため、スマートフォンだけでマイナポータルへのログインや各種行政手続きを実施することはできますが、多くの人がポイントをもらったマイナポイントの申請時等には、スマートフォンでマイナンバーカードを読み込むなどのひと手間が必要でした。

改正案が成立すれば、電子証明書の機能以外の残りの情報もスマートフォンで使えるようになります。実質的にマイナンバーカードがスマートフォンの中に入っている状況となるため、カードを常に手元に置いておく必要がなくなるわけです。カードを持ち歩くことによって生じる紛失や盗難のリスクは大幅に低減するでしょう。

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マイナンバーカードの取得率は8割を超えるも…


マイナンバーカードを持つ男性
【画像出典元】「stock.adobe.com/gugu」

政府はマイナポイントを付与したり、より便利に使えるように法改正をしたりなど、普及に躍起になっています。マイナポイント事業も手伝い、マイナンバーカードの取得率は2024年時点で86.6%(デジタル庁「業種別マイナンバーカード取得状況等調査」)となっています。一見高いように見えますが、まだ10数%の人が取得していません。しかもこの調査は、現役で仕事をしている人を対象に行われたもので、10数%の中には手続きを自分で行えないような高齢者は含まれていません。

現在の健康保険証が今年12月2日に廃止され、マイナンバーカード(マイナ保険証)に一本化されることが決まった今でもなお、なぜ少なくない人がマイナンバーカードをまだ取得していないのでしょうか。同調査で「マイナンバーカードの未取得の理由」を尋ねたところ、「メリットを感じないから(43.3%)」が最も多くなっています。

筆者は「情報漏洩が怖いから」(35.1%)がトップなのだろうと予想していたので、この結果は少々意外でした。決して少なくない人がメリットを感じないと思っている中、本当にマイナンバーカードにはメリットはないのでしょうか。ここからは、マイナンバーカードのメリットについて、経済的側面から考えていきたいと思います。