「子ども・子育て支援金」制度が衆議院で可決されました。これから参議院でも審議されますが、国会の構成上、制度の導入は実質的に決まりました。健康保険料に上乗せされて徴収されるお金は、少子化対策のためのさまざまな取り組みに活用される予定ですが、この制度の導入にあたってSNSでは大反発が巻き起こっています。多くの国民は何に対して怒っているのでしょうか。

夫婦ともに年収400万円なら年に1万5000円超の負担増に

4月19日、子ども・子育て支援法などの改正案が衆議院で可決されました。法案は今後、参議院に送られますが、参議院も自民党・公明党が過半数を握っているため賛成多数となり可決される見込みです。

この法案の目玉の一つが、少子化対策の財源となる「子ども・子育て支援金」。政府が公的医療保険を通じて集めるお金で、さまざまな少子化対策の財源に充てられる予定です。健康保険の保険料に上乗せされて徴収されますが、負担額は健康保険の種類や加入者の年収によって異なります。

政府の試算によると国民健康保険に加入している人の2028年度の負担額は、年収200万円の人で月額およそ350円、年収400万円の人で月額およそ650円、年収600万円なら月額およそ1000円、年収800万円で月額およそ1350円、年収1000万円で月額およそ1650円。なお、このお金は加入者一人ひとりから徴収されるため、夫婦ともに年収400万円の家庭の2028年度の年間負担額は、「650円×12カ月×2人」で1万5600円となります。
徴収されたお金は、以下のような対策に充てられます。

児童手当の拡充(所得制限を撤廃、高校生年代まで延長、第3子以降は月額3万円支給)
出産・子育て応援交付金(10万円相当の経済的支援)
出産育児一時金の引き上げ(42万円→50万円)
出産費用の保険適用
男女ともに育休時の手取り額を維持
時短勤務への給付

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岸田首相「実質的な負担にはつながらない」


挙手
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「社会全体でこども・子育てを支える社会の構築」を掲げる岸田文雄首相肝いりの政策と言えるわけですが、SNSでは評判は芳しくありません。主だった意見を見ていきましょう。

「子ども・子育てを口実に増税したいだけ」

「低所得者ほど所得に占める負担率は大きい」

「支援いらないからその分減税して!」

「そもそも財源は子どもの生活費。子育ての邪魔しかされてない。」

ここまで反発されるのは、負担増により可処分所得がさらに減るだけではないと筆者は思います。政府の説明に多くの国民が不信感を持っているからではないでしょうか。ここで、子ども・子育て支援金に関する岸田首相の国会答弁を振り返ってみましょう。

「少子化対策の財源としては、賃上げと歳出改革によって実質的な追加負担が生じないようにする」(2023年12月8日、参院予算委員会)

「若い世代の所得向上と少子化対策を車の両輪として進めてまいります。財源は、まずは徹底した歳出改革等で確保することを原則としてまいります」(2024年1月31日、衆院本会議)

「支援金については、社会保険負担の軽減効果の範囲内で行うということで、実質的な負担にはつながらないと説明をさせていただいています」(2024年2月26日、衆院予算委員会)