グリーンは暮らしのなかで長く付き合うものだから、突然の不調には焦るもの。生育のトラブルのなかでも〝あるある〞な症状をピックアップして、『プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店』 スタッフの佐藤健太さんに尋ねました。

長旅で不在にすることが多くて
水やりができず枯らしてしまいます。

簡単な方法が2つあります。ひとつは「腰水」。水を張った容器に鉢底を浸けておく方法です。深さは5㎝程度で構いません。もうひとつは表面に湿らせた水苔を敷いておくこと。土からの蒸発を遅らせる方法です。とはいえ根腐れやカビの原因になるので、くれぐれも水やりができないときの特例的な手段だと心得てください。観葉植物なら、おおまかな目安は夏は4、5日ほど、冬なら2週間以上持ちます。

ずっと室内で育てているのに
虫が出てくるのを何とかしたいです。。

殺虫剤も有用ですが、いたちごっこになることもしばしば。土を替えるのが確実です。コバエやアリは有機物のある環境を好むので、鹿沼土や赤玉土など無機質の用土に植え込みましょう。鉢の表面3㎝を無機質の土で覆うだけでも効果があります。ちなみに鉢ごと丸一日水没させて、土の中の虫や卵を窒息死させる方法も。意外と盲点なのは、葉が乾燥し虫が棲みつくパターン。日々の葉水も欠かさずに。

ハンギングの植物がだらっとして、
締まった樹形に育ちません。

ハンギングは元々、海外のグリーンカルチャー。この形でよく育てられる植物はローメンテナンスプランツと呼ばれ、水も日照も少なくて済むのが特徴です。とはいえ日本は環境が違うので、日照が足りなかったり、湿度が高すぎたり……。特に冬の室内は暖かい空気が天井に溜まり、茎や枝が間延びする〝徒長〞を促進することも。ハンギングでも基本に戻り、日当たりと風通しが大切。育成灯もおすすめです。

葉が変色したりカールしたりして、
きれいな色と形を保てません。

葉が薄い緑色に、つまり葉緑素が減ったときは栄養失調の可能性大。肥料や植え替えで対処できます。カールは脱水症状の現れで、これからの時季に増えるのは高温障害です。葉に小さな黒点ができたと思ったら一気にカールして干からびてしまいます。そうなる前に真夏は涼しい場所に移動させ、不在時はサーキュレーターで空気を回しましょう。ちなみに全体の10%程度の落葉なら代謝ですから、大丈夫です。

思い切り家具に枝をぶつけて
ポキッと折れてしまいました。

断面が綺麗、つまりスパッと折れているなら繋げる方法があります。折れた面をぴったり合わせてマスキングテープやラップで固定するだけ。乾燥を防ぐためにしっかり密閉してください。植物は傷にカルスという細胞の塊を作り、これが互いをくっつける接着剤の役割を果たしてくれます。ひと月くらいで繋がりますよ。断面が割け、ギザギザならくっつけるのはほぼ不可能。剪定して形を整えましょう。

土の表面に苔が生えてきました。
放っておいて大丈夫でしょうか。

苔自体は悪いものではありませんが、一面に広がると土がコーティングされたような状態になり、水をあげても土の中まで行き渡りにくくなります。幹の根元のカビや腐りの原因にもなりますので、取り除くのがベターです。土の表面に違う種類の植物を育て、カバーのようにするのは問題ありません。ポイントは植物同士の根が干渉しないこと。広く浅く根を広げるものと、深く伸ばすものを合わせましょう。

昨年はきれいな花が咲いたのに、
今年は開花の気配がありません。

原因のほとんどは肥料不足です。「肥料は必要最小限に」と強く意識している人もいますが、これはいわゆる観葉植物の話。花や実をつける植物には、適切な量の肥料を年中使うくらいでOKです。開花などに必要なリン酸は植物自身では作れず、多くを肥料に頼るしかないんです。ちなみに、状態が悪いときにも最後の力を振り絞り、花実をつけることがあります。急に花が出てきたら気にしてみてください。

しばらく動きのない苗、
元気なのか様子がわかりません。

幹から出る枝をしならせるように曲げてみましょう。パキッと折れたら水が上がっていない証拠です。その部分は残念ながら枯れています。その際はより根に近い幹や枝も曲げてみて、干からびた部分は剪定しましょう。一見乱暴なようにも見えますが、桜などの落葉樹でも使われるポピュラーな方法です。それでも動きがない場合、原因は根詰まりであることが多いです。植え替えをして様子をみてください。

トラブル時に確認すべき、基本の3+2か条。

  緑を育てる上での基本は、土の表面が乾いたら水をたっぷりあげて、カーテン越し程度の明るさの日照を与え、風通しのいい場所に置く。たいていはそれで十分。だから「トラブルが起きたときは、まずこの3つがうまくできているか振り返ってみてください」と『プロトリーフ』の佐藤健太さん。

「3、4年うまく育ててきたのに突然不調になった場合は、肥料不足、あるいは根詰まりの可能性が高いです。しかし例外もあります。メジャーな観葉植物のひとつであるベンジャミンは環境の変化にとても敏感で、長年育てるなかで少し場所を変えたり、健康な株を買って家に持ち帰ったりすると高確率でほとんどすべての葉が落ちます。でも新しい環境に慣れれば、その場所に合わせた量の葉を出すのでご安心を」

 基本はありつつも、品種によって育て方は様々なのが植物。

「初めて買う品種については店頭で特徴を尋ねると安心です」

佐藤健太 

Kenta Sato

『プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店』 スタッフ

園芸用土メーカーの直営店。現店舗は2024年5月19日に閉館。秋頃『玉川髙島屋』本館屋上に移転オープン予定。東京都世田谷区瀬田2‒32‒14‒2F 03‒5 7 16‒8787 10時〜20時 無休

protoleaf.com

illustration : Hiroko Shono text : Ryota Mukai

&Premium No. 126 Life with Flowers & Greens / 窓辺に、花と緑を。

人はなぜ、こんなにも花や草木を愛するのでしょうか。植物と触れ合うことは、その美しさを愛でるということにとどまらない大きな喜びを、私たちに与えてくれます。植物とともにある生活は、毎日が発見の連続。 季節の移ろいに敏感になるだけでなく、住まいや暮らしそのものを、心地よく、健やかにしたいと願う気持ちまでもが、ふつふつと湧いてくるように思います。さらに、私たちの中に潜む原初的な感覚の扉をそっと開き、心にやすらぎをもたらしてくれるのです。今号は、花を飾ること、植物を育てることを楽しみながら、心地よく暮らす人たちを訪ねました。

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