サボテンの王様とも例えられる金鯱。黄金色のトゲに覆われたダイナミックな姿は一見して育てるのが難しそうにみえますが、ちょっとしたコツさえつかめば楽しく育てられるため、むしろ初心者の方にこそ、マイ・ファーストサボテンとしておすすめなんです!

今回はそんな金鯱の魅力をたっぷりとご紹介します。

金鯱はサボテンの王様


所有者:

世界で2,000種類以上あるといわれているサボテン。西部劇でお馴染み、円柱状に成長していく柱サボテンと、球状に成長していく球サボテン(海外では樽型を表すバレルカクタスと呼ばれる)がお馴染みですが、今回は球サボテンの中でも最も著名な「金鯱(キンシャチ)」というサボテンをご紹介します。

黄金のトゲをまとうその巨体から「サボテンの王様」とも呼ばれ、世界中の栽培家から絶えず羨望の眼差しを向けられる存在です。

自生地における野生の金鯱は、国際自然保護連合(IUCN)が2013年に絶滅危惧種としてに記載しています。
このため現地では厳しい管理下に置かれており、分布地域も公開されていません。

現在日本国内で流通しているものは日本で生まれ育った株のため問題なく栽培することができますが、種としては絶滅の危機に瀕しているサボテンなわけですから、手に入れたら大切に育てたいものですね。

金鯱は、長く育てていると直径が最大で1mを超えることもあり、スペインで帰化した株の中には、なんと100歳を超えたものが現存しているそうです!

(広告の後にも続きます)

サボテン金鯱の主な特徴とは

金鯱の基本情報

学名:Kroenleinia grusonii-Lodé(クレンレイニア・グルソーニ-ロデ)
英名:golden barrel cactus(金の樽サボテン)、golden ball(黄金球)、mother-in-law’s cushion(義母の座)
和名:金鯱(キンシャチ)
科目:サボテン科
属名:クレンレイニア属※
※以前はエキノカクタス属であったが、後年の系統学研究の結果、樽型サボテンのフェロカクタス属とエキノカクタス属のハイブリッド種であることがわかった。このため、独立した種として2014年4月にクレンレイニア属になった。ただ、現在もほとんどがエキノカクタス属として販売されている。
初登記:1891年
登記者:ハインリヒ・ヒルドマン(ドイツのサボテン栽培家)
原産地:メキシコ中部から東部。
大きさ:鉢植えで最大直径3〜40cm、地植えで最大直径1m。
メキシコ北西部からアメリカ南西部に広がるソノラ砂漠では高さ3mの野生種が確認されている。


自生地メキシコの金鯱。写真の株は直径70cm、高さ170cm(写真提供:熱川バナナワニ園 清水秀男氏)

寿命:野生種での最長はスペインに帰化した株の100年。
園芸においてはその半分の40~50年が最長とされている。  

名前の由来や伝説、花言葉

【名の由来】

金鯱が日本に初めて持ち込まれたのは明治時代後期で、中国を経由したといわれています。
持ち込まれた時に、既に金琥(チンフー)という名が付いていました。
金琥(チンフー)とは、虎が死後に黄金の琥珀になって富をもたらしたという故事を表す言葉。

日本では名古屋城の天守を飾る金の鯱鉾(しゃちほこ)が縁起のよいものとされており、両者の綴りも似ているため、金鯱(キンシャチ)になったのではないかといわれています。

それにしてもメキシコ→中国→日本とは、当時の輸送手段を考えると、ものすごい長旅をしたものですね。

学名の由来は以下の映像で解説します。

映像でも解説しているように、エキノカクタス属からクレンレイニア属に変更になったたのですが、属名変更が宣言されたのが2014年と最近のことなので、実際にはいまだにほとんどのケースでエキノカクタス属の金鯱という認識で扱われているのが現状のようですね。

ジョエル・ロデ氏本人が、自身の研究について2017年の講演で述べているので参考までに(タイムラインの40:00からが金鯱の系統についての解説です)。

【花言葉】

アメリカやメキシコの先住民たちの間で、サボテンには神秘的な力が宿るという言い伝えがあります。

金鯱の自生地ソノラ砂漠に住むセリ族たちにとっては、球状で鋭いトゲが密集し、長寿を誇る金鯱に対しての思いは強く、災いから家族を守ってくれる永遠の魂の象徴として、彼らは金鯱を崇めてきました。
そんなエピソードに由来して、金鯱には「永続」や「繁栄」という花言葉があります。

また、王冠の形をした黄色い花が太陽のように見えるため、「光と喜び」という花言葉もあります。

形状や花の特徴

【形状】


所有

園芸店で販売している実生5〜10年未満の株は基本的に球型ですが、原産地で自生しているものの中には、前出の自生地メキシコでの写真のように過酷な環境に順応した結果、円柱状に変化したものも存在します。

茎※には体内の貯水量によって伸び縮みする蛇腹のようなリブ(稜)があり、天頂にはクリーム色、あるいは黄色で綿状の、トゲを生成するための器官「アレオーレ(刺座=しざ)」が密集しています。

※サボテンの本体は一般的な植物の茎に相当する。


所有

トゲは、生え始めのうちは薄いクリーム色で、成長とともに美しい金色へと変化していき、リブに乗って根に近づくにつれ、茶色く褪色していきます。

【花】


Pix:imageBROKER.com/shutterstock.com

金鯱は、実生20年以上経過し、ようやく開花株となります。
開花株となった金鯱は、日照や温度、湿度、風など、開花に必要な諸条件が整うと、天頂のアレオーレの中に茶色い蕾が現れ、やがて黄色の美しい花を咲かせます。

花弁の直径は約5cm。金鯱本体がかなり成熟してからの開花のため、金鯱の大きさに比べると、花があまりにも小さいので、そのミスマッチ感が珍妙で面白いですね。


Pix:SN Photograph/Shutterstock.com