「私が架け橋になりたい」30年前に出演した“ポルノ映画”の配信差し止め請求 原告女性が「訴訟」選んだ理由とは

13日、自身が過去に出演したわいせつ動画が有料動画配信サービス「FANZA」上でストリーミング配信されているとして、ストリッパーとして活動する女性が「FANZA」の運営会社に対し動画の配信差し止めやデータの廃棄、150万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提起した。

特定の劇場向けに承諾も、ウェブ検索の上位に…

同日、原告の有賀美雪さんと代理人の諸橋仁智弁護士が会見。提訴に至った背景や、裁判で明らかにしたいことについて語った。

有賀さんと諸橋弁護士はそれぞれ「ストリッパーというのはあくまで表現行為」(諸橋弁護士)、「ストリッパーというのは裸になる行為ではありますが、私としては裸になって表現をするということでの芸術的な、パフォーマンス的なお仕事だと思っている」(有賀さん)と説明。

その上で諸橋弁護士は有賀さんがわいせつ動画に出演したきっかけについて以下のように話した。

「有賀さんは当時ストリッパーとして活動しており、舞台で踊って表現をするアーティストであって、わいせつな動画には本来出演したくなかった。

しかし、30年ほど前に若かったこともあり、知人からの誘いを受け劇場作品のポルノ映画に出演することを承諾。

当時は特定の映画館でしか上映・鑑賞されないと聞いており、そういう承諾しかしていなかった」(諸橋弁護士)

そして時が過ぎ、有賀さんが再び舞台に戻ろうとインターネットで自分の名前を検索したところ、当時のポルノ映画が検索上位に出てきたことに驚くとともに傷つき、配信差し止めについて諸橋弁護士に相談したという。

法施行前の作品も、AV新法による差し止め「認められる」と主張

諸橋弁護士は、今回の裁判の争点とその根拠について、まず映像の差し止めに関してAV新法の15条をあげた。

「30年ほど前に撮影した作品なので、もちろん法律の施行前であり、原告は何らかにサインした記憶があるものの、契約書も残っていません。こうしたケースについて、AV新法に基づいて差し止めることが認められるか、という争点が考えられます。

そもそもAV新法の目的は、出演者が回復不可能な名誉のダメージを救済することにあります。その趣旨に照らせば、施行前の作品であっても、きちんとした契約に基づかない作品であれば差し止められるはずです」

さらに諸橋弁護士は、本件が「法の不遡及(ふそきゅう)」の例外であるとも指摘する。

「本来法律は、法が規定される前のものには該当しないとされています。しかしAV新法では、差し止め請求権を法の不遡及の規定から除外しています(法附則第2条)。

その点から、法施行前の作品についても差し止めを望めると解釈しており、AV新法による差し止めが有賀さんの出演したポルノ映画にも認められると考えています」

また、わいせつな動画が配信されていることで、有賀さんの人格権やパブリシティ権を侵害していることから、損害賠償も求めることにしたという。

会社への“削除依頼”ではなく「訴訟」を選んだ理由とは?

さらに会見では、今回の裁判の持つ意義についても語られた。

「有賀さんと相談したうえで、今回は“当然の権利”として配信の差し止めを求められることを明らかにしたいとの思いから、サービスの運営会社にお願いして動画を消してもらうのではなく「訴訟」という手段を選びました。

また、今回の訴訟で、有賀さんの出演していたポルノ映画がAV新法の規定する『性行為映像制作物』(※)に当てはまるのかについて被告側が争うのであれば、今後のためにもしっかりと、その基準を明らかにしていきたいです」(諸橋弁護士)

※ AV新法はその対象を「性行為に係る人の姿態を撮影した映像並びにこれに関連する映像及び音声」と定義している

有賀さんも「何十年とたち、泣き寝入りしている元AV女優はたくさんいると思う。そういう方の第1歩として私が架け橋になり、お願いをしなくても法に基づいて配信を差し止められることを知っていただきたい」と述べた。