【自分の事は自分でやる 自分の事は自分で決める 自分が決めた事は自分で責任を取る】
自らが運営する愛知県東海市の自立支援施設『粋塾(いきじゅく)』のHPでそう語っていた同塾の代表・氷室優容疑者(46)ら2名が、入所する当時10~13歳の少年ら4人を働かせていたとして労働基準法違反容疑で逮捕され、その「責任」を取らされることとなった。
20歳で親の借金を背負い、返済を余儀なくされていたという氷室は、建設会社を経営の傍ら、自身の経験を活かし約6年前から引きこもりやニート、家庭内暴力などの問題を抱える人らを受け入れる『粋塾』を立ち上げたという。
両極端だった塾の評判
入所者は原則全寮制としていた同塾。マニュアルはなく、それぞれの状況に合わせながらスタッフが一人ひとりに寄り添うスタンスで、自立を後押ししていた。
独特の支援スタンスには絶賛する声がある一方で、違法行為による訴訟を抱えるなど、問題を指摘する声もあり、その評判は両極端だった。
匿名の情報提供から事件が発覚
社会部記者が事件について説明する。
「事件の端緒となったのは時期不明の匿名の情報提供者からの愛知県警への相談でした。『粋塾』は、愛知の本校のほかにも熊本や長崎などにも施設があり、今回の事件の舞台となった愛知の本校に県警が立ち入った際には約30名の入所者がおり、うち20名が未成年でした」
氷室らは、2023年4月~24年3月にかけ、少年ら4人に自身が経営する建設会社の作業場で運搬や掃除をさせていた。なかには無免許で油圧ショベルカーを運転し、廃材を運搬していた11歳の少年もいたという……。
「少年がどのようにしてショベルカーの運転を覚えたのかは今のところわかりません。氷室とともに逮捕された会社の工事部長は少年らに労働させたことを認めつつも、ショベルカーの運転については否認しています。そのことから、氷室が少年に運転を教えていた可能性も考えられます」(同前)
いくら自立支援施設だとはいえ、11歳の少年に油圧ショベルカーを運転させるとはいささか〝自立〟させすぎだろう。
入所者の両親からは高額の月額費用も
今回働かせていた少年らの入所にあたり、氷室は高額な入塾金や準備金、月額費用を両親らから受け取っていたという。
前出の記者が続ける。
「『粋塾』のHPを見ると、長期入塾の場合、入塾金は20万円、準備金として15万円がかかり、月額費用は年齢によって差異はありますが、10代なら月16万5000円~27万5000円。30代~なら24万円~40万円もの費用がかかります。そのような高額な費用を受け取りながら、無償で少年らを労働搾取していたとすれば悪質性は高いといえます」
その後の調べで、少年らに労働の対価として、数千円程度を現金で渡していたという情報もある。
過去にはその活動をメディアなどで取り上げられたこともある氷室容疑者――。県警は児童らへの金銭の授受の有無や過去にさかのぼり他にも労働をさせていた少年らの有無を調べるとともに、動機についての捜査も慎重に進めている……。
「人の基本はありがとうごめんなさい」
HP上で塾代表としてそうメッセージを送っていた氷室容疑者。法を逸脱した自立支援を主宰した責任を、どんな形でとるのだろうか。