「ひょっこり男」は論外だが…「自転車危険行為」“前科”つく可能性がある15のケース

千葉県柏市内で、自転車で対向車線にはみ出すなど、危険な行為を繰り返したとして、〝ひょっこり男〟ことA容疑者(36)が9日、道交法違反(あおり運転)の疑いで千葉県警に逮捕された。

Aは、4年前の2020年にも、埼玉県桶川市で自転車によるあおり運転を繰り返し、逮捕されていた。その後、さいたま地裁で懲役8月、罰金20万円の実刑判決を受けていた。

まったく懲りない男なのだが、Aの容疑は、2020年6月に改正された道路交通法の「妨害運転罪」。今回も刑が確定すれば、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されることになる。

悪質な場合は〝赤切符〟が切られることも

ニュースでドライブレコーダーの映像が何度も流されていたので、〝ひょっこり男〟のことを知っている人は多いはずだが、実は、自転車の「危険行為」は、Aのような妨害運転だけではなく、以下の15項目が道交法などで定められている。

①信号無視
②通行禁止違反
③歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)
④通行区分違反
⑤路側帯通行時の歩行者の通行妨害
⑥遮断踏切立入り
⑦交差点安全進行義務違反等
⑧交差点優先車妨害等
⑨環状交差点安全進行義務違反等
⑩指定場所一時不停止等
⑪歩行通行時の通行方法違反
⑫制動装置(ブレーキ)不良自転車運転
⑬酒酔い運転
⑭安全運転義務違反
⑮妨害運転

その取り締まり方法については、「自転車指導警告カード」によるものと、悪質な場合は、より重い処分である「違反切符(赤切符)」が切られることもある。夕刊紙事件担当記者はこう話す。

「赤切符を切られた場合、上記のいずれもが、最小で〈2万円以下の罰金〉、最大で〈5年以下の懲役または100万円以下の罰金〉といった懲役刑や罰金刑が課されます。さらに、相手にけがを負わせた場合などは、刑法の『過失傷害罪』や『業務上過失傷害罪』などにも問われます。2022年2月には、飲食宅配代行サービスの配達員が自転車で歩行者をはねて死亡させた事故で、禁錮1年6か月、執行猶予3年の有罪判決が出ています」

法曹関係者が補足する。

「赤切符が切られた場合、運転免許証を持っている場合は、『自転車運転者講習』を受けなければならなくなり、違反については、刑事罰の対象となります。つまり、送検→起訴→裁判などいう流れになります。〝ひょっこり男〟のように悪質な場合は、逮捕に至ることもあり得ます。注意しておきたいのは、罰金刑の場合、罰金を納付することで刑罰そのものは終了しますが、そこで安心してはいけません。

罰金も法律で定められている刑罰のひとつなので『前科』がついてしまいます。警察や検察庁といった捜査機関に前科の情報が記録されてしまうだけでなく、職業・資格などにも制限がかかってしまう可能性があるんです。ただし、赤切符を切られたから即前科が付くという訳ではなく、もちろん不起訴となれば、前科はつきません」

特に免許がなくても乗ることができる自転車で〝前科〟がついてしまうことは避けたいものだが、これは「警告カード」を無視した場合など、よほど悪質なケースだという。「赤切符」は、違反金さえ払えばハイ終わりの自動車の「青切符」などに比べて、それだけ重いということだ。

スマホを見ながら、イヤホン、傘差し運転も反則金の対象!?

一方、自転車の取り締まりは年々強化されているが、背景には、自転車の悪質な交通違反が増えている現実がある。警察庁の資料によれば、「交通事故件数全体に占める自転車が絡む事故の割合」は 23.3%で、2017(平成29)年以降、増加傾向にある(図表①)。また、「自転車と歩行者の事故」は2020(令和2)年に、一度、減少したが、その後は再び増加に転じている(図表②)


【図表①】自転車関連事故件数(自転車第1・第2当事者)及び全交通事故に占める構成比の推移(『自転車関連交通事故の状況』警察庁)


【図表②】自転車対歩行者事故件数の推移(『自転車関連交通事故の状況』警察庁)

そして、さらに今回、自転車の交通違反に反則金を納付させる、いわゆる「青切符」による取り締まりが導入される。その内容を盛り込んだ改正道路交通法が5月17日に可決され、2年以内に施行されることが決定した。法案は、16歳以上に適用され、113の違反行為が対象となる。どういうことか。

「具体的には、信号無視、一時不停止、右側通行、徐行をせずに歩道を走ることなど多岐にわたっており、スマホを見ながらの運転、イヤホンをつけての運転、傘を差した状態での運転なども含まれます。反則金は今後、政令で決まりますが、違反した場合は、自動車やバイクと同じように、5000円から1万2000円程度の反則金が課せられるとみられています。もちろん悪質な場合は、前出の赤切符が切られます」(前出の法曹関係者)

自転車の交通事故の割合が増加する中、自転車運転者はますます交通法規を守ることが社会全体で求められている訳だ。〝ひょっこり男〟など、もっての外である。