フランス在住のアーティスト、イザベル・ボワノさんが新著『フランス田舎暮らし12カ月』を上梓しました。

フランス西部の小さな街・アングレームで暮らすイザベルさん。

季節の移ろいを感じながら、その季節の花を愛で、旬の食材を味わうライフスタイルは、ゆったりと丁寧な空気に包まれています。

今回発売された『フランス田舎暮らし12カ月』には、そんなイザベルさんの暮らしが、イザベルさんの美しいイラストと共に綴(つづ)られています。

四季を通じて、イザベルさんはなにを感じ、なにを大切にしているのか?

じっくりとお話を伺いました。

イザベル・ボワノ

フランス在住のアーティスト、イラストレーター。雑誌や書籍、雑貨、広告などさまざまな分野で活躍中。著書に『シンプルで心地いいパリの暮らし』(ポプラ社)、『わたしのおやつレシピ』(小学館)、『パリジェンヌの田舎暮らし』『おとしより パリジェンヌが旅した懐かしい日本』(パイ インターナショナル)などがある。

Instagram:@isabelleboinot

「どの季節も好きだけど、8月生まれだから夏が好き」

―今回の書籍は12カ月の暮らしが日記のように綴られていますね。イザベルさんがもっとも好きな季節はいつですか?

どの季節にもそれぞれの魅力がありますが、地球温暖化が進む今、季節を語るのはそう簡単なことではないですね。

昔からずっと夏が好きでした。8月生まれだからかもしれないし、なにより夏は、自然の中で遊んだり、果物や野菜を摘んだり、長い休みの1日を満喫したり、プールや海で泳いだりと、子どもの頃の思い出がたくさんあるからです。

夏は今も好きですが、フランスも外でなにかするのをためらうほど暑い日も多いので、より気温が穏やかな春や秋に惹かれ始めています。

冬には冬の魅力がありますが、正直なところ、どこかの動物みたいに冬眠できたらいいなと思います(笑)。

年々、冬が長くなっているように感じるし、日光が足りないと気力もやる気も下がってくるからです。

 

イザベルさんが「衣食住」で大切にしていること

―この本では、イザベルさんの「衣食住」について紹介されています。まずは「衣」について、イザベルさんのワードローブはナチュラルで着心地の良いものが多いですよね。服やアクセサリーはどのような視点で選んでいますか?

生活にまつわるさまざまな側面と同じように、私にとって、自分がなにを消費するかはとても重要です。

ファッション産業による環境汚染が気になるので、買うものにはとりわけ注意を払っています。

なるべく長持ちするような、ウールやリネン、シルクなど、上質な天然素材のものを選びます。

着心地が良いと毎日着たくなるので、よく同じ服を着ていますね。

リネンやヘンプの、質の良いアンティーク生地を使った服をよく自分でも縫います。

食べ物と工芸品、本以外のものは、実はフランスではあまり買いません。形や素材が好みで、私の体型に合う服が見つかるのは日本なのです。

とくに『フォグリネンワーク』の服が好きです。

 

―次は「食」について、この本でもおいしそうなレシピがたくさん紹介されています。レシピはどこで学びましたか?掲載されているレシピで1番のおすすめも教えてください。

毎日自炊していますが、たいそうな料理ではなく、質の良い食材や、季節の野菜や果物の素材を生かしたシンプルなメニューを作っています。

それらは母や祖母、友人から教わったレシピで、自分なりにアレンジしたもの。

また、家にあるものを使って新たなレシピを考えるのも好きですね。

キッチンはクリエイティブな空間で、食べることは私にとって最大の喜び1つです。

なかでも1番よく作るのはパンケーキ。

キウイやイチゴなどの新鮮なフルーツ、レモン、シナモン、アカシア蜂蜜を添えた朝のパンケーキが大好きです。

とても簡単に作れるので、季節を問わず、少なくとも1週間に1度は食べています。

―続いて「住」について、とくにイザベルさんが選ぶ雑貨は、日本でもとても人気です。暮らしの中で使用する生活雑貨を選ぶときのこだわりはなんですか?

私は、日々使うもの、そして大切にしたいものだけを自分の家に置くようにしています。

調理器具や仕事道具は便利で実用的であってほしいですが、もちろんオブジェとしての美しさも大事です。

なぜなら眺めるだけでうれしくなるような道具を使うのは、とても気持ちが良いものだから。

買うものすべてに言えることですが、私はものの由来や産地に注目し、できるだけ職人が手作りした道具やオブジェを買うようにしています。

日本の陶磁器、木のお盆やお皿、銅鍋を眺め、お手入れしていると、シンプルな喜びを日々新たに感じます。

イラストレーターとして、美しい紙やノート、水彩絵の具、上質な筆を選び、使うこともこの上ない喜びですね。

 

イザベルさんにとっての“花”と“日本”

―挿絵として掲載されているお花のイラストがとても素敵です。イザベルさんにとって花はどんな存在で、どんな時にインスピレーションを受けてイラストを描きますか?

花は見る者に喜びを与え、生命や活力、多様性の象徴であると同時に、はかなさの象徴でもあります。

現在は、気候変動や現在進行中のさまざまな戦争への悲しみや不安に駆られることが多くあります。

そんなとき、花を見るとより命の美しさや不思議を思い出すのです。

花のデッサンをしていて「実物に1番近いのはどの色かな」と考えながら水彩で色を塗っていると、気分が良くなってきます。

子どものころから変わらない、絵を描く楽しさを再発見できる時間ですね。

 

―日本の文化にも造詣の深いイザベルさんですが、日本の文化の魅力、好きな場所、お土産で購入する雑貨の選び方を教えてください。

日本の自然の中を歩くのが好きです。

植物が生い茂る空間では、フランスにはないような苔や草木、花が見つかることもあります。本当にすばらしいひとときです。

陶器やかご細工、年代ものの生地などを堪能できる蚤の市も好きです。

毎回、スーツケースいっぱいに食べ物や工芸品、本などを詰め込んで日本から帰ってきます。

お土産は、友人1人1人の好みに合わせたものをあげるのが好きです。

緑茶、陶器、羊羹の詰め合わせ、かご細工、裁縫用のはさみ、美しい本、手ぬぐい……お土産を選びながら、なにが喜ばれるか、なにをあげれば驚かれるかを想像する時間はいつも楽しいです。

 

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1年を通して、その季節ごとに心地よく穏やかに暮らしているイザベルさん。

この本には、好きなものに囲まれて大切にすることの素晴らしさが詰まっています。

ぜひお手に取って、暮らしのヒントにしてください。

 

■書籍情報
『フランス田舎暮らし12カ月』(パイ インターナショナル)
著者:イザベル・ボワノ
翻訳:トリコロル・パリ
価格:¥1,980

 

インタビュー翻訳|トリコロル・パリ

撮影|イザベル・ボワノ