May.24 – May.30, 2024

Saturday Morning

Title.
Synaphai
Artist.
Iannis Xenakis 現代音楽の伝説であり、様々な逸話が存在するこの楽曲。はじめて聴いた時には、衝撃を受けた。
心地良さはないのに、取り憑かれたように聴いてしまう。音楽は美しさで心を震わせるが、時に恐怖や緊張感で絶望を感じさせる。
僕はある時期、目覚ましがわりに毎朝聴いていた。このカオスを。土曜日の朝、強制的に悪夢からはじめる。外はもう遥かに明るい。でも、絶望からはじまる朝はいい。あとは這い上がっていくだけだ。
僕はこの曲を、理解したいのに理解できない。理解が深まるどころか、謎が深まる。やがて思考停止に陥る。それでもまた、聴きたくなる。聴いてしまう。理解できない曲を、拒絶してしまいそうになる曲を、聴こうとする自分が、もはや狂っているのか、自分が知らない自分が現れる、そんな曲かもしれない。(柳平)
アルバム『Xenakis, I.: Orchestral Works, Vol. 3』収録。

Sunday Night

Title.
12 Songs, Op. 21: V. Lilacs (Transcr. Rachmaninoff for Solo Piano)
Artist.
Sergei Babayan 日曜の終わりに佳い休日を振り返りながら、この楽曲のきらめく光の中に花の香りが漂うような響きに包まれたなら、とても心地が良いだろう。
ロシアの作曲家セルゲイ・ラフマニノフの『12の歌曲op.21』の第5曲で、1913年頃にピアノ独奏用にラフマニノフ自身が編曲した。
ロシアでは5月にリラ(ライラック)の花が咲き乱れるという。自然溢れる環境で美しい花々に囲まれた清々しい季節に作曲されたのが伝わってくる。原曲の詩では、明け方の露に濡れた草の上を歩き、朝の空気の中で咲くリラの花が描かれているが、あえて日曜の夜に次の朝を想いながら聴くのも良いかもしれない。(磯部)
アルバム『Rachmaninoff: Préludes; Études-Tableaux; Moments musicaux』収録。

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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音楽家 いろのみ

柳平淳哉(Piano)と磯部優(Programming, 17strings)によるユニット。ピアノと弦楽器、そして有機的なエレクトロニクスによって「季節のさまざまな色の実を鳴らす」ことをコンセプトに活動する。これまでに〈KITCHEN. LABEL〉〈STARNET MUZIK〉〈涼音堂茶舗〉〈ironomi rec〉より計12枚のアルバムをリリース。2015年12月には中島ノブユキ、沢田穣治、haruka nakamura、Aspidistrafly をはじめとする様々なコラボレーターを迎えた7thアルバム『虹』を〈KITCHEN. LABEL〉よりリリース。2024年3月には、12作目となるアルバム『四季』を〈ironomi rec〉よりリリース。冬から春に移り変わる景色、初夏の瑞々しさ、秋の実りの喜びと染まっていく山々。それらの色が巡り、星へと瞬いていく物語。活動16年目にして初めて「四季」をテーマに作品を制作。