文具のとびら編集部

「COPY CORNER(コピー・コーナー)」と聞いて、コピー機と用紙が並べられた無機質な空間をイメージしてはいけない。

コクヨが、2024年4月17日に開業した東急プラザ原宿「ハラカド」の3階に出店した「COPY CORNER」(関連記事)。オープンから1カ月ほど経った5月中旬に編集部員が取材を行った。そこで出会ったのは「リソグラフ印刷」。1枚の紙を何度もコピー機に通して、1色ずつ版画のように印刷していく工程からして通常の印刷とは全く違う。刷り上がった印刷物はレトロな風合いで、独特のザラつきがなんとも魅力的!

そんなリソグラフ印刷を使ってクリエイターさんが作った商品を楽しんだり、なんと自分でもリソグラフ印刷を体験することができるのが「COPY CORNER」。罫線がぐにゃりと曲がった「キャンパスノート」や時間を確かめるという概念を越えた時計、複雑な立体など「COPY CORNER」で出会った面白いものや、体験できる内容なども紹介していきたい。

リソグラフ印刷を体感できる場所

「COPY CORNER」は、リソグラフ印刷を中心としたファクトリーとショップの両機能を持ち、デザイナーをはじめとする作り手と、クリエイティブなものごとに関心を持つ人々を結ぶプラットフォームとなる5.5坪のファクトリー。コピー機(リソグラフプリンター)を囲むように、作業台とインク、紙などの素材や、オリジナルプロダクトが所狭しと並ぶ。
「一片の紙がアイデア次第でトランプに、ラベルに、ノートブックになるように、日々誰もが当たり前に手にする日用品は、装い次第で道具に、贈り物に、クリエイションの原点になる」をコンセプトに、多様な視点をもつクリエイターとコラボレーションし、印刷を通じてアイデアを出力。「プリント/コピー/印刷」を単なる出力や商品生産のプロセスとしてではなく、作り手と使い手をダイレクトにつなぎ、アイデアと技術をブレンドすることで日用品の装いを「リ・カバー(カバーし直す+回復)」し、その価値を創造・再定義する活動や体験を提供する。

「COPY CORNER」に設置されているリソグラフプリンターで行うリソグラフ印刷とは、色ごとに版を作り、一色ずつ色を重ねて刷る版画のような仕組みの印刷方法。

大容量のインクを入れ替えながら、色ごとに印刷していく

通常の印刷と比べるとややザラつきのあるレトロな仕上がりで、版を重ねるうちに生じる多少のズレや色の重なりも独特の風合いを醸し出す。同じデザインを印刷しても、1枚1枚色の乗りやズレ具合が違うのもリソグラフ印刷ならではの魅力。1色ずつ色が重なっていく過程も見ているだけで楽しい。

同じ色のインクを使用しても、濃淡によって表現できる色は異なるので、使いこなすには技術と経験が必要。慣れないうちは、1色ずつ色を重ねてイメージ通りの色を表現するのがとても難しいのだそう。今は出来上がりのイメージ画像から色を抽出することもできるそうだが、実際の仕上がりはやってみないとわからない。実際に商品になっているものも、何度も印刷して色を調整したのだと伺った。職人技だと思う。

版画のように、1色ずつ色を重ねて印刷する

そんなリソグラフ印刷を体験できるイベントとして「COPY CORNER」では「オリジナルポストカード制作ワークショップ」(税込3,300円)を2024年5月現在、週2回ほど開催している。リソグラフ印刷の基礎を学べる「マスタークラス」(同11,000円)も、2024年6月以降に開催予定。

「オリジナルポストカード制作ワークショップ」では、オリジナルのイラスト素材を組み合わせて、2色のインクを使ったオリジナルのポストカードを作る体験ができる。子どもでも参加が可能。1回の体験で20枚のポストカードを作ることができるため、早くも来年の年賀状を制作した人もいたそうだ。

「マスタークラス」では、リソグラフの基礎知識や操作方法を習得し、自分でデータ作成~プリントまでの基礎的な工程をできるようになるクラス。1.5時間のクラスに2回参加する必要がある。なお「マスタークラス」受講者は「COPY CORNER」のリソグラフプリンターを1時間単位で予約し使用できる「セルフプリント」サービスを利用できるようになる。

また、さまざまなフィールドで活動するクリエイターとのコラボレーションを発信するレーベルとして、オリジナルプロダクトも展開。大量生産では難しいクリエイティブな視点を反映させた多様な商品群をプロデュースしている。

店頭で目を引いたのは、アート作品のような装いのキャンパスノート。ノートの中紙の罫線がぐにゃりと曲がっている「忙しい線」や、蛍光マーカーで色を塗ったような画風をリソグラフ印刷で表現した「bird」、「butterfly」など、まさにアイデアと印刷技術がブレンドされた商品がたくさん陳列されていた。ひとつひとつのコンセプトや印刷によって生み出された新しい価値は興味深く、現代美術を鑑賞しているような気分。こんな「攻めた」アイテムが作れるのはファクトリーでもある「COPY CORNER」だからこそ。


おおつきしゅうと氏の作品「忙しい線」


(写真左から)矢後直規氏の作品「bird」、「butterfly」

他にも時計やパズル、展開図から複雑な形の紙箱を作っている本山真帆氏とのコラボレーションしたPAPER BOXをラインアップ。

写真(下)の時計は、短針と長針それぞれ1時間ごとにLUCKEY、NEW、SKYなどの言葉が割り当てられている。その時々で短針と長針それぞれが指している言葉を合わせることで「BEAUTIFUL SKY」など、言葉の組み合わせを楽しむことができる。通常時計は時間を確かめるためにあるものだが、この時計はそれだけではない価値が付加されている。 「COPY CORNER」が掲げる「日常品の価値を再定義する」とはこういうことなのか、と妙に納得してしまった。


クリエイターそれぞれのコンセプトをリソグラフ印刷で表現

どうしたらそんな展開図を考え出せるのか知りたい!本山真帆氏の作品「PAPER BOX」

また、リソグラフ印刷を行う上で、スタッフが実際に使っている便利な文具「コピーコーナー・レーベルコレクション」も展示・販売している。
例えば「MONO zero」というスティック型消しゴムは、誤って紙の印刷箇所以外にインクが付いてしまった場合に使用するそうだ。印刷したばかりのインクは消しゴムで消すことができるという。

コピーコーナー・レーベルコレクション

今までリソグラフ印刷に全く縁がなかった編集部員だが「年賀状を作った人がいた」という話を伺って、オリジナルの包装紙やシールを作ったり、意外と身近なことにも使えるかも…と俄然興味が湧いてきたのであった。
これから「セルフプリント」サービスを利用する人たちは、どんなアイデアをリソグラフ印刷で形にするのだろうか。クリエイターとのコラボレーションでは、今後どのような作品が生まれるのだろうか。まだスタートしたばかりの「COPY CORNER」から目が離せない。

ショップ名: COPY CORNER (コピー・コーナー)
所在地:東京都渋谷区神宮前六丁目31番21号東急プラザ原宿「ハラカド」3階
店舗面積:5.5坪
営業時間:11:00~21:00
WEBサイト: https://copycorner.kokuyo.co.jp/index.html
Instagram:https://www.instagram.com/copycorner_tokyo/

【参加クリエイター】
安里貴志、有本怜生、nico ito、王睿宇 Company 2、おおつきしゅうと、金井あき、小林千秋、佐々木拓、陳文亮 Company 2、永尾仁、藤田佳子、鳳崎 優和、前田麦、本山真帆、矢後直規、湯浅良介(五十音順)

【制作チームクレジット】
プロデュース:YOHAK DESIGN STUDIO(ヨハク デザイン スタジオ)(コクヨ株式会社)
企画:YOHAK DESIGN STUDIO、相樂 園香 、西山 萌
運営企画:コクヨ&パートナーズ株式会社
空間デザイン:YOHAK DESIGN STUDIO
アートディレクション&デザイン:YOHAK DESIGN STUDIO
テキスト:西山 萌
製造協力/テクニカルアドバイス:株式会社タカタレムノス、有限会社篠原紙工、株式会社やのまん 、コクヨKハート株式会社

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