子宮頸がんを9割予防できる「HPVワクチン」

接種対象年齢の人は、性別を問わずHPVワクチン接種の検討を

――「みんパピ!」では男性のHPVワクチン接種も推奨されていますが、なぜ男性にも必要なのでしょうか?

稲葉:HPVは子宮頸がんだけでなく、咽頭(のど)や外陰部、膣、陰茎、肛門にできるがんの原因となることが分かっています。

咽頭がんの中でも、特に男性の罹患数が多い中咽頭がんにHPVが関わっているといわれているほか、女性への感染を防ぐことで、将来のパートナー子宮頸がんの予防にもつながるため、男性にとってもHPVワクチンは重要なのです。

この他、陰部に「できもの」ができる性感染症「尖圭(せんけい)コンジローマ」の予防にもつながります。

アメリカやオーストラリアなどでは男性もHPVワクチンの公費接種の対象になっています。日本では9歳以上の男性に4価ワクチンの接種が承認されていますが、残念ながら公費負担の対象にはなっていません。私たちは、現在も男性への定期接種化についての検討を国に提案しています。


男性がHPVワクチンを接種することは、自身だけでなく、間接的に女性へのHPV感染を防ぐことにもつながる

――HPVワクチンはどこで接種することができますか?

稲葉:産婦人科が中心ですが、内科や小児科などでも接種することができます。対象の方には自治体から個別に、予診票と接種を実施している病院やクリニックの一覧が郵送されるので、行きやすい場所を選んで予約してもらえたらと思います。

中学・高校生にとって産婦人科はちょっと行きにくい場所かもしれませんが、一人では不安でしたらお友だちや保護者の方と一緒でも大丈夫ですし、ついでに生理痛やPMS(月経前症候群)など、気になることを相談しても構いません。女性にとって産婦人科は、生涯にわたってお付き合いする場所。ぜひこの機会に、かかりつけの産婦人科を見つけてください。

また、中には周りの大人からワクチン接種を反対される人もいるかもしれません。16歳以上であれば保護者の同意は不要で、自身の意思で接種できますし、それ以下の年齢で接種を希望される方は、保護者の方と一緒にクリニックへ足を運んで、産婦人科医から直接話してもらうのも一つの手です。


かかりつけの産婦人科医を見つけ、HPVワクチンのことだけでなく、日頃抱えている体の悩みを気軽に相談してみよう

――HPVワクチンが普及し、子宮頸がんにかかる人を少しでも減らすために、私たち一人一人ができることはなんでしょうか?

稲葉:HPVワクチンは、あなたの未来を守るためにできることの1つとして、じっくり検討した上で接種するかどうか、選択してもらえたらと思います。

また、これまでの調査で、医師よりも身近なお友だちから話を聞くと行動変容につながることも分かっているので、例えば接種した方から「HPVワクチン打ってきたんだ。思っていたほど痛くなかったよ」と体験談を伝えたり、ご自身が接種の対象でなくても、身近な若い世代の方に「〇〇年生まれなら、キャッチアップ接種の対象じゃない?」と声をかけたりしてもらえたら嬉しいです。

編集後記

インターネットやSNSで知りたい情報がすぐに得られる現代。一方で、拡散されている情報の中には正しくないものもたくさんあります。HPVワクチンについてもっと知りたいという人は、ぜひ「みんパピ!」のサイトを訪れてみてください。難しくなりがちな医療の情報を、10代の人にも分かりやすいよう、専門用語をあまり使わずに解説しています。

自分自身が接種対象かどうかにかかわらず、一人一人が正しい知識を身に付けることが子宮頸がんで苦しむ人をなくすことにつながるのではないかと思います。

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〈プロフィール〉

稲葉可奈子(いなば・かなこ)

産婦人科専門医・医学博士。京都大学医学部卒業後、東京大学大学院で博士号取得。産婦人科診療の傍ら、 子宮頸がんの予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や、正確な医療情報とリテラシーについて、メディア、企業研修、SNSなどを通して発信している。「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」代表、メディカルフェムテックコンソーシアム 副代表、フジニュースα・Yahoo!・NewsPicks公式コメンテーター。4児の母。
みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 公式サイト(外部リンク)