相談相手を準備しておくことの重要性

このような事態を避けるには、事前準備をしておく必要があります。個人の健康面もさることながら、自社の状態を正確に把握し、経営判断の際の選択肢をより多く持っておくことで危機を乗り越えることができると考えております。

さまざまな相談先や相談内容がありますが、金融機関や主要取引先に加え、筆者は3つの機関と良好な関係を構築しておくことが重要であると考えております。理由を含め、以下に記載いたします。

1.顧問税理士との関係構築

経営者として、顧問税理士がおられないケースはまずないと思います。重要なのは、正確な経営数字の把握です。

現在、月次試算表はどのタイミングで入手できていますでしょうか。ベストは随時把握ですが、月末から10日程度で手元で確認できる状態であることが理想です。逆に、試算表の作成までに1ヵ月かかってしまうような状態では、情報の鮮度が落ちており、経営判断を誤る可能性が高まってしまいます。会社の情報をタイムリーに共有し、スピーディなフィードバックを得られる関係性を築いておくことが重要です。

2.優秀なM&Aアドバイザーとの関係構築

意外に思われるかもしれませんが、M&A仲介会社とも良好な関係を築いておいて損はありません。優秀な担当者と知り合えれば、自社にとっての有用な提携先の情報が得られる可能性があります。

(1)の顧問税理士は情報の質を得ることが目的であるのに対し、日々多くの企業と接点を持つM&Aアドバイザーは豊富な情報を持っています。守秘義務があるため一定の制限はあるものの、大手M&A仲介会社や証券会社などは大規模な情報データベースへアクセスできたり、社内に士業メンバーを抱えており、最新の業界動向などの情報を得られる可能性が高いです。

優秀なアドバイザーと関係が構築できれば、豊富な情報をもとに、貴社の経営判断材料を増やすことが可能です。

3.中小企業診断士との関係構築

中小企業診断士もうまく活用できる存在です。(1)の税理士とのあいだで正確な会社の財務・会計情報を把握し、(2)のM&Aアドバイザーから業界動向などの情報を得たうえで、中小企業診断士と内部・外部分析を行い計画をたて、補助金や税制などを上手に活用することで、貴社の経営判断の向上と成功確率をより高めることが 可能になると考えております。

上記の3つの機関を確保し適切なコミュニケーションを取っておくことで、自社の置かれている状態を正確に把握することができます。既存事業を伸ばすのか、既存事業を維持しつつ新規事業分野へ進出するのか、他社を買収するのか、子息に会社を継ぐのか、第三者へ譲渡するのか、等重要な意思決定に十分な時間をさけるようになります。

会社は成長軌道を常に描くことができるようになり、ヒト・モノ・カネ・情報などの経営基盤はより一層強化されていくことでしょう。

豊田 元幹

アイエスピー合同会社