動悸や息切れは日常生活の中で突然、襲い掛かってくることがあります。例えば、買い物中や会議中など、何の前触れもなく急に心臓が激しく打ち始めたり、息苦しさを感じてしまったり。初めて経験したときには、このまま心臓が止まってしまうのでは、と感じた人もいるのではないでしょうか。ましてや、ただ座っているときや、ゆっくり歩いているにもかかわらず、動悸や息切れがあったら、なおのこと不安は増すばかりです。
これらの症状も更年期症状の1つとされるものです。どうしても外部からは見えにくいため、なかなか他人には理解されず、孤独感や不安にさいなまれてしまう人もいることでしょう。
ここでは、更年期に起こりやすい動悸や息切れの原因や症状、対処法、そして実際にこれらの症状を経験した人の体験談を紹介します。
動悸や息苦しさって自律神経に関係あるの?
呼吸や心拍に大きく関わっている自律神経
呼吸のスピードや深さなどはある程度自分で調整できますが、「止めてしまう」ことはできません。心拍数についても激しい運動をすると増えますが、自分の意志で「早く動かす」ことは無理です。
このように、私たちの体が自動的に機能するための重要な神経系を「自律神経」といい、交感神経と副交感神経の2つの部分から成り立っています。
交感神経が優位になると体は活動モードに入り、心拍数が上がり呼吸が早くなるなどの反応を示します。これに対して、副交感神経が優位になると体は休息状態に落ち着き、リラックスします。この2つの神経のバランスが健康的に保たれることが理想的です。
しかし、誰もがいつも万全な状態であるわけではありません。熱はなくても少しの疲れがあったり、元気なのに心配事があるなど、ほんのちょっとしたことから交感神経と副交感神経のバランスが崩れることがあるのです。
そうなると動悸や息切れといった不快な症状が現れることがあります。きっかけはほんのちょっとのこと。だから自覚がないことも多いのです。自覚がないと症状の出現がさらなる不安要素になってしまうことも。このように、自律神経の安定は心身の健康維持にとって非常に重要なのです。
動悸・息切れを起こすメカニズムに更年期が関わっている理由
女性ホルモンの1つであるエストロゲンは自律神経の調整に重要な役割を担っています。更年期に入ると、このエストロゲンの分泌が急激に減少してしまうのです。この変化が自律神経の機能に深刻な影響を及ぼし、神経系のバランスを崩してしまうのです。その結果、突発的な動悸や息切れが引き起こされやすくなります。
このような症状は更年期の女性に多く見られますが、男性でも加齢に伴うホルモンバランスの変化が自律神経に影響を与えるため、似たような症状が現れることがあります。したがって、更年期や加齢による自律神経の不調を理解し、適切な対処をすることが重要です。
加齢だけじゃない、自律神経には生活習慣が関与
ストレスが多い現代社会において、多くの人々が不規則な睡眠や慢性的な疲労といった問題を抱えています。これらの心身の状態は、自律神経のバランスに深刻な影響を及ぼしかねません。
自律神経は呼吸や血液循環、消化など、人が生きていく上で欠かせない生命活動を維持するために、休むことなく働き続けています。自律神経の働きが弱くなったりうまくいかなくなると、心拍数の異常増加や呼吸の困難といった症状が引き起こされることがあります。
特に、ストレスは交感神経を過剰に刺激してしまい、常に活動状態、興奮状態になってしまい、正しい睡眠が取れなくなるリスクもあります。また不規則な睡眠は副交感神経の活動を妨げるため、これらが組み合わさることで自律神経の不調が顕著になるのです。
動悸や息切れといった症状は、更年期はもちろんですが、更年期とじょうずに付き合っていたとしても、生活習慣による自律神経の乱れで起こることも多く、日々の生活の中でストレスを管理し、規則正しい生活を心がけることが重要です。
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自律神経のバランスを保って更年期も気分よく!
リラックス効果も!腹式呼吸で動悸・息切れ予防
動悸や息切れに対処するための効果的な方法として、腹式呼吸が推奨されています。この呼吸法は、ストレス反応を抑え、自律神経のバランスを整えるのに役立つのです。自律神経のバランスが崩れた場合は、何より副交感神経を意識して優位にすることでリラックスができ、結果として自律神経のバランスを取り戻しやすくなります。
・腹式呼吸の方法
①まずリラックスできる静かな場所で座姿勢を取ります。
②片手をおなかに置き、ゆっくりと鼻から息を吸いながらおなかを意識的に膨らませます。
③次に、息を口からゆっくりと吐き出しながらおなかをへこませます。
これをゆっくりと意識しておこなうと、じんわりと汗ばんでくることでしょう。特に吐くことを意識すると、さらにリラックス効果が増すともいわれています。
・腹式呼吸のメリット
このプロセスを繰り返すことで、心拍数が自然と落ち着き、呼吸も整います。腹式呼吸を数分間おこなうだけで、動悸が軽減し、息切れも和らぎます。日常的にこの呼吸法を取り入れることで、緊張状態の解消にもつながり、ストレス耐性が向上します。
しかも副交感神経が優位になると、リンパ球が増えるといわれます。血液中に存在するリンパ球はウイルスや細胞などが体内に入ってきたときに、防御してくれる働きを持っています。正しい腹式呼吸を続けることで、免疫力アップも期待できるのです。
規則正しい生活は、自律神経のバランスを保つ
・規則正しい生活リズムを整える
規則正しい生活リズムを保つことは、自律神経の安定にとって非常に重要です。特に、毎日同じ時間に起床し就寝する習慣は、体内時計を整え、1日のリズムを正常に保つのに役立ちます。昼食後に短時間の休息を取ることも、午後の活動に向けてエネルギーを再充電するのに効果的です。
・就寝前のスマホを控える
また、寝る前にスマホを見る時間を減らすことで、目に刺激を与えるブルーライトの影響を避け、より深い睡眠を促進できます。朝の日光浴も同様に有効で、自然光を浴びることによって体内時計がリセットされ、日中の活動性が向上し、夜はより快適に眠りに就けるようになります。これらの習慣を日々の生活に取り入れることで、自律神経のバランスが保たれ、心身の健康が維持されるのです。
生活環境・習慣を見直してみよう
仕事などでパソコン画面を見続けたり、満員電車に乗り続けるなどストレス要因が複数あるような生活環境や日々の習慣は、自律神経に大きな影響を与えます。自律神経の健康を維持する上でこれらはとても重要です。どんなに順調な生活をしているとしても、これらを一度見直してみましょう。
・カフェイン摂取は1日400mgまでに
例えば、自律神経にあまりいい影響を与えないといわれているものにカフェインがあります。カフェインは交感神経を刺激し、動悸や不安を引き起こす可能性があるからです。今は何の症状も出ていないかもしれませんが、日ごろ、カフェインを過剰摂取していませんか? 健康な成人で1日のカフェインの摂取量は最大400mg程度といわれています。マグカップ3杯弱に該当します。
毎日コーヒーだけでもそれ以上飲んでいたら、もしかしたら自覚ないままに自律神経のバランスが崩れ始めている可能性があります。予防的な意味でも、生活の見直しは大切です。
・定期的な運動をおこなう
また定期的な運動も重要です。運動を習慣化することで体内のストレスホルモンが減少し、自律神経のバランスが改善されます。仕事とプライベートの時間をしっかりと分け、適切な休息を取ることも、精神的なストレスを減らし自律神経を安定させることに役立ちます。アルコールの摂取も同様に見直すべき点であり、適度な量を守ることで睡眠の質を保つことができます。
・リラクゼーションの時間をつくる
リラクゼーションの時間を意識的につくることも大切。心身ともにリフレッシュし、自律神経の健康を促進することができます。これらの生活習慣の改善は、日常生活において自律神経の調和を保つための基盤となるのです。