更年期の動悸・息切れの主な治療法
生活習慣を見直すだけでは症状が治まらないこともあります。更年期の場合は特にその傾向が強くあります。そんなときには医学的な治療法を試すことも対応策といえます。主な治療法はホルモン補充療法、漢方薬、エクオールの摂取になります。しっかりと医師の指導を受けて治療しましょう。
【1】ホルモン補充療法(HRT)
更年期における動悸や息切れは、日常生活に大きな影響を与えることがあります。これらの症状を緩和するためには、ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬、エクオールを含むサプリメントなど、さまざまな治療・ケア方法が存在します。
まず、ホルモン補充療法は更年期症状を和らげるための最も一般的な治療法の1つです。この治療では、エストロゲンの補充でその低下に伴う症状を改善させ、同時に子宮体がんの予防としてプロゲステロンの併用が必要です。従って子宮を摘出している女性にはプロゲステロンは不要です。HRTは特に、自律神経の乱れによって引き起こされる動悸や息切れ、ホットフラッシュに効果的であることが知られています。開始する前には医師との詳細な相談が必要です。
※ホルモン補充療法を5年以上使用する場合は乳がんのリスクが上がるといわれていたため、通常2~5年くらい使用しますが、5年で必ずやめなければならないということではありません。そのリスクと治療効果を考慮しながら検討します。いきなりやめるとまた症状が出てしまうこともあるので、生活環境を整えたり、セルフケアなども取り入れながら、だんだんと減量し、ゆっくりやめる方向へ持っていきます。
※2004~2005年に厚生労働省研究班が調査をおこない、ホルモン補充療法経験者が乳がんになる危険性は、ホルモン補充療法未経験者の半分以下だったという結果を公表しています。その後の研究でも、ホルモン補充療法が乳がんの発症に与える影響は、肥満やアルコール摂取、夜勤の仕事などが与える影響と同程度の小さいものであることがわかっています。
また、最近では張り薬や塗り薬は使っていてもいなくても、乳がんや血栓症を発症する確率は変わらず、逆にホルモン補充療法をしている人のほうが全体のがん発生率が下がるといわれています。
【2】漢方薬
漢方薬も更年期の症状緩和に用いられることがあります。漢方では、体質や症状に合わせて複数の生薬を組み合わせた処方が特徴です。例えば、「加味逍遥散」や「当帰芍薬散」は、ホルモンバランスの乱れによる心身の不調を整えるのに役立つとされ、動悸や息切れ、その他の更年期障害に対して推奨されることが多いです。これらの漢方薬は副作用が少ないという利点もあり、自然な治療法を求める人に適しています。
【3】エクオールの摂取
エクオールは大豆イソフラボンを代謝して生じる物質で、特に日本人女性の間でその効果が注目されています。エクオールはエストロゲン様の作用を持ち、体内のエストロゲンが不足しがちな更年期において、ホルモンをサポートすることで心身の症状を和らげます。エクオールを含むサプリメントは、ホルモン補充療法の代替として、または補助的な手段として用いることができ、動悸や息切れに対する治療として利用されています。
これらの治療法はいずれも、更年期に伴う動悸や息切れを管理する上で有効ですが、使用する前には専門の医師と相談し、自分の健康状態や体質に最適な方法を選ぶことが重要です。それぞれの治療法のメリットとリスクを理解し、適切なケアをおこなうことで、更年期の質を向上させることが可能になります。
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動悸・息切れが考えられる更年期症状以外の病気
突然の動悸や息切れは、更年期の典型的な症状の1つです。ただ、動悸や息切れがすべて更年期に原因があるわけではありません。実際には高血圧や心不全、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)といった他の深刻な健康問題が背景にある場合があります。
これらの状態は、未治療のまま放置すると健康に重大なリスクをもたらすだけではなく、命にも大きな影響を与える可能性もあります。そのため、動悸や息切れを経験した際には「更年期の症状の1つ」と自己診断することなく、他に要因があるかもしれないと認識することが重要です。
特に症状が急激に現れる場合や、他の症状が伴う場合は、速やかに循環器内科の診察を受け、適切な検査をおこなうことをおすすめします。正確な診断を受けることで、適切な治療が可能となり、健康状態を正しく管理するための第一歩となります。