今後は金利政策が焦点に
それでも政府が何兆円という規模で円を買い支えたら、短期的には相場をそれなりに動かせるだろう。しかしそれは、価値が低い商品(円)を無理に高く売ろうとするようなこと。効果には限界がある。
財務省の役人は、介入に大した効果がないことなどもちろんお見通しである。しかし、政治的なプレッシャーを受けるなか、彼らは円安をただ傍観しているわけにもいかず、なにがしかのアクションを起こさないとならない立場にある。その苦悩が彼らの表情から読み取れる。
今後また160円に近づいたら、再度の介入の可能性が高まるだろう。しかし、これからはむしろ金利政策が焦点になっていくと考えられる。円金利を上げることで円高に誘導する方が、円買い介入よりも本質的な対応であり、大きな効果をもたらすとみられるからだ。一方で金利を上げると、日本経済に大きなダメージを与える可能性もある。当局のかじ取りは、ますます難しくなっていきそうだ。(小田切尚登)
筆者プロフィール
おだぎり・なおと 幅広い分野で執筆活動やレクチャー等を行っている。バンク・オブ・アメリカ等大手外資系投資銀行数社で勤務した後独立。クラシック音楽サロン「シンフォニー」代表。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。『欧米沈没』(マイナビ新書)。