1976年に創設された「ロレックス賞」。人間の限界を押し広げ、歩み続ける現代の革新者たちを支援するこの賞を通して、「ロレックス」は自然環境や人類の課題と向き合っている。2023年度の受賞者5名のパイオニアたちが今、「ロレックス賞」とともに新たな希望への一歩を踏み出す。
よりよい地球の未来のために──これは、「ロレックス賞」に掲げられた最初の矜持(きょうじ)である。「ロレックス賞」は、「ロレックス」が1926年に発表した世界初の防水腕時計「ロレックス オイスター」の誕生50周年を記念して創設された賞である。世界を変える力を秘めた独創的なプロジェクトに取り組むパイオニアたちを支援し、人類の知識と福利の向上を目指す永続的なプログラムであり、これまでに37,000人以上の応募が寄せられ、160名の受賞者が選ばれてきた。
「ロレックス オイスター」は、イギリス海峡を泳いで横断した英国人女性メルセデス・グライツの冒険の物語とともに知られる時計でもある。「ロレックス オイスター」に始まる同賞は、その事実から革新性を追求する「ロレックス」の企業精神の象徴として受け継がれてきたと言ってもいいだろう。また、賞の創設当初から既存のスポンサーの支援などを受けることが難しいパイオニアたちに目を向けてきたその姿勢から、同社の先見の明が窺(うかが)える。当初1回限りの予定であった「ロレックス賞」だが、その大きな反響から現在に至るまで、2年に一度開催される長期的なプログラムとなった。「ロレックス賞」はコーポレート フィランソロピー(企業の社会的貢献)の先駆けとして、世界的な範を示したのである。
2023年度「ロレックス賞」の受賞者の1人、デニカ・リアディニ=フレッシュがサポートするインドネシアの農村の女性たち。農家から織物職人、そして裁縫職人まで、1,400人以上もの人々が彼女のプロジェクトの影響を受けている
2019年からは自然環境保護に取り組む人々を支援する「パーペチュアル プラネット イニシアチヴ」の一環として行われている「ロレックス賞」の授賞分野は「環境」のほか、「科学と医療」「応用技術」「文化遺産」「探検」と実に多岐にわたる。2023年度の受賞者もケニアでの水資源の開発やインドネシアにおける女性たちの生活の改善など、それぞれのアイデアで現代の問題と向き合っている。
こうした「ロレックス賞」の受賞者たちは、それぞれの研究分野から互いの知識を交換し合い、そしてまた新たなるステップへと進むコミュニティを形成している。「ロレックス賞」が結ぶ深い絆がさらなる未来への礎を築き、次世代のパイオニアたちを生み出しているのである。
Beth Koigi
ベス・コイギ
大気からの水の抽出
ケニアの社会起業家 ベス・コイギ
ケニアの社会起業家ベス・コイギ。人口の半分が清潔な飲料水を利用できていない現状を危惧し、国内の10の地域、およそ3,000人への清潔な水資源提供を進めてきた。彼女が開発した大気水生成装置(AWG)は、大気中の湿度を利用することで水を抽出し、ろ過後、ミネラル化するという、太陽エネルギーを動力源とした一体型装置だ。2017年のスタートアップ以降、20万リットル以上の清潔な水を1,900人以上に提供してきた。コイギは次の試みとしてケニア北部でも極度の乾燥地帯に向け、生成した水を適正な価格で販売する「ウォーターキオスク」を計画している。
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Denica Riadini-Flesch
デニカ・リアディニ=フレッシュ
伝統農業の再生、女性の雇用と生活の安定
インドネシアの社会起業家 デニカ・リアディニ=フレッシュ
インドネシアのデニカ・リアディニ=フレッシュが掲げるのは、世界初となる、再生可能な“Farm-to-Closet(農場からクローゼットへ)”というサプライチェーン。サステナブルな方法で調達したコットンに始まり、土壌を再活性化し、伝統的な技術や天然染料を使用することで300万リットル以上もの有毒染料の廃棄を防いできた。“幸福”を意味する「スッカチッタ」を設立し、村内の工芸学校で伝統的な農業と織物の生産技術を用いて収益へと結びつけるビジネススキルを学ぶ場を提供。農村の女性職人をはじめとする女性のエンパワーメントへの強化へと取り組む。