西海岸で巡るシネマな旅「iconicな風景 in アメリカ【サンフランシスコ編】

そろそろ海外にも行きたい。そう考えている方も多いことだろう。では、どこに行こうかと思案したとき、ふとお気に入り映画のワンシーンを思い出したりしないだろうか。思わぬステイホームを強いられ、「いつか行きたい」と思っていたあの場所へ行けることは、決して当たり前なことではないと知った今、私が思い描いたのは大好きなあの作品の、美しいロケーションを訪れる旅。サンフランシスコで巡り合えた、憧れのシネマティックな風景をご紹介したい。

チャップリンも愛した歴史あるホテル

今回、旅の拠点となったのも、映画と縁ある歴史的な建造物だ。ユニオンスクエアに位置するThe Westin St. Francis San Francisco on Union Square。創業は、1904年。1906年の大地震で大きく被災し、1907年に再び開業した。

多くのセレブリティゆかりのホテルということで、毎週土曜日に宿泊者向けに歴史ツアーも開催されている。案内担当は、元ホテルマンでホテル・ヒストリアンのHoward Mutz氏。かつてホテル内すべての時計を統べていたという歴史あるマスタークロックの前で記念に撮影させていただいた。

代々受け継がれているホテルマンの誇りが感じられる紳士で、この場所が歴代の米国大統領を始め、エリザベス女王、昭和天皇らロイヤル・ファミリー、ソーシャライトらを迎えた歴史の舞台だったと話してくれた。ホテルがアメリカの歴史の一部であることが強く感じられる話ばかりだ。

映画絡みでは、『カンバセーション…盗聴…』(1974)、『愛という名の疑惑』(1992)、『男が女を愛する時』(1994)、『迷い婚 -すべての迷える女性たちへ-』(2005)、『ミルク』(2008)など、数々の作品に撮影場所を提供してきた人気ロケーションだ。

撮影された作品の多さだけでなく、宿泊、パーティで訪れたセレブリティも数知れず。シャーリー・テンプル、マリリン・モンロー、ルイ・アームストロング、チャールズ・チャップリン、サルバドール・ダリ、アーネスト・ヘミングウェイ、そしてビヨンセに至るまで、ここではとても紹介しきれないほどの数のそうそうたる面々に愛されてきた。Mutz氏のお気に入りは、気さくに接してくれたベティ・デイビスだという。

この3月にはホテル内に小さな博物館The St. Francis Museumがオープン。シャーリー・テンプルやチャールズ・チャップリンの写真なども展示されている。

リノベーションが進み、部屋やレストランは姿を変えていることも多いが、ホテルに宿るエレガンスや風格が、古き良き時代から続くアメリカ映画の伝統との強いつながりを感じさせていた。

https://www.marriott.com/en-us/hotels/sfouw-the-westin-st-francis-san-francisco-on-union-square/overview/

久々に訪れたサンフランシスコは、洗練された文化をたたえた、映画に愛される街だった。丁寧に伝説が語り継がれ、多くの人がそれを宝物のように感じている。まるで街全体が映画スタジオ。そんな場所に来れば、誰もがお気に入りの映画へと簡単にアクセスできる。

1日過ごしただけでも、いかにこの街の文化が華やかで、作家たちを刺激する街であるのかを再発見することができた。

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【映画好きならぜひここに立ち寄って編】

John’s Grill

映画『マルタの鷹』のダシール・ハメット原作の小説に登場するレストラン。主人公のサム・スペードがオーダーしたというメニュー、ラムチョップが有名。「Sam Spade’s Lamb Chops」はベイクド・ポテト、スライスド・トマトがついて$35.95(2024年2月時点)。にぎやかな雰囲気から、地元の人気店でありつづけていることがわかる。料理をいただけば、ラムの抜群の焼き加減やそのやわらかさ、素材を活かした味わいに、理由が大いに納得できた。サンフランシスコの歴史と古き良き時代の粋を今も五感で体感できる、そんな店だ。
https://www.johnsgrill.com/

San Francisco Movie sets & Location Tour

映画好きにはたまらないロケーション・ツアー。2時間半~3時間に及ぶツアーでは、ゴールデン・ゲート・ブリッジやチャイナタウン、坂道、カラフルな家が立ち並ぶ住宅街など、代表的な観光地を巡りながら、数々のロケ地を教えてもらえるので、時間が限られた観光客にぴったり。車内では、ロケ地が近づくと実際にその場所で撮影された映画のクリップを流してくれるので、窓の外の風景と、シーンを見比べることができてとにかく楽しい。英語のみのツアーだが、言葉がわからなくても楽しめるように工夫されている。

この日は、参加者の要望に応えて、スケジュールになかった、元「ルーカス・フィルム」、現「ONE LETTERMAN」へ。等身大のヨーダの噴水を見学できたほか、フィッシャーマンズ・ワーフ(『007/美しき獲物たち』『終身犯』)、ゴールデン・ゲート・ブリッジ(『めまい』『ゴジラ』『スーパーマン』)、アラモスクエア(『卒業』『アメリカン・グラフィティ』、ドラマ『フルハウス』)、パシフィック・ハイツ(『桑港』『ミセス・ダウト』『9か月』)、シビック・センター(『ミルク』『ウェディング・プランナー』)、ノブ・ヒル(『ブリット』『ザ・ロック』)などを見学。サンフランシスコがいかに映画人に愛されてきたか、そして主要な映画の中心地のひとつであることを体感することができた。写真はアラモスクエア。
https://sanfranciscomovietours.com/

Merchants Exchange Building

重厚な柱が何本も並ぶビルはとてもクラシックな趣。中をのぞいていると守衛の方が来て、1906年の大地震と、それによって引き起こされた火事を生き抜いた歴史あるビルだと教えてくれた。働く者にとってもこの建造物が誇りであることを感じさせる。インテリアの装飾がとても美しく、元銀行だった場所にはクラシカルな窓口や壁画など華麗なインテリアが保存されていて、結婚式でも人気の場所とのこと。近代的な街でありながら、歴史ある建物がしっかり保存され、現役として活躍している様子からは、サンフランシスコの美学が感じられた。同様のことはWestinやJohn’s Grill、ヴィクトリアンハウスなどからも感じ取ることができ、美しい自然、アイコニックな風景だけではない、映画人を魅了する“何か”に少し触れることができた気がした。ここでは、『マトリックス レザレクションズ』『ヴェノム』などが撮影された。
https://clintreilly.com/the-merchants-exchange/


※許可を得て撮影

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