2024年3月、麻布台ヒルズに誕生した「ジャヌ東京」。タイのプーケット島から始まり、現在では20カ国に34軒のリゾートとホテルを展開するラグジュアリーホスピタリティブランド、アマンの姉妹ブランド「ジャヌ(Janu)」が世界で初めてオープンしたホテルとして、多方面から注目を浴びています。

麗しいアフタヌーンティー。エレガントな曲線で美しいスタンドの上段二段を彩る、スイーツ。小さなケーキは一つ一つ細部までこだわりつくし、唯一無二のクリエイションを施すのはペストリーシェフの野口ゆきえシェフ。ホテルのペストリーシェフの役職に女性シェフとして就任し、更には新しい洋菓子技術・技能の研鑚と、それを担う若い菓子職人の育成および業界全体の技術向上を目指して活動をしている「内海会」の理事に就任するなど、業界全体の新しいロールモデルとして注目されています。

これからの食の未来や野口シェフ自身がどんな発信をし、どんな活動を目指していくのか、貴重なインタビューをお届けしていきます。

シグネチャーケーキである「タルニー」の持つ意味

Q.まずシグネチャーケーキである「タルニー」にはどんな意味が込められていますでしょうか?

野口シェフ「サンスクリット語で『薔薇』を意味します。このケーキをシグネチャーとした背景には、私が植物が好きであることが理由の一つです。この麻布台ヒルズのある港区の花ってなんだろう?と調べたときに、薔薇が出てきたんです。薔薇って女性らしくていいなと思いました。ケーキの形も、お花の型を探して試作しましたがしっくりこなくて。薔薇の形は、すべて手でクリームを絞って作っています。

味の構成でいうと、上から下まで一気に食べたときに一体感があって“美味しい”と感じることを心掛けています。食感のアクセントに、土台をフィアンティーヌ(薄い焼き菓子の生地)を混ぜてサクサクとした食感にしました。」

このタルニーはクレームブリュレとローズ風味のラズベリージュレを、ベリームースとミルクチョコでコーティング。薔薇の部分はホワイトチョコといちごのクリームで構成され、口に運ぶと口どけのよさとその美味しさに驚く。それぞれの素材の味や香りがバランスよく広がるのが特徴的です。さらに野口シェフがおっしゃる食感のアクセントもポイントで、次、また次へとフォークを持って口に運ぶ手が止まりません。そんな野口シェフの新しい挑戦は、ヴィーガンの世界に。

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プラントベースのお菓子が持つ、新たな魅力と挑戦

ホテル自体がウェルネスに力をいれている「ジャヌ東京」。外国人の利用者も多く、グルテンフリー、ヴィーガンのお菓子や料理もそろっています。ジャヌ パティスリーにはグルテンフリーの焼き菓子も。特に野口シェフの視座はプラントベースで作られたヴィーガンのお菓子の世界に。

写真の「ヴィーガンチョコレートムース」は、そんな野口シェフの想いが詰まったケーキに。プラントベースのチョコレートに、クリームはアーモンドミルク。中にはプラントベースのブラウニーやナッツ、ソイパフや季節で変わるフレッシュなフルーツが。

Q.なぜプラントベースのお菓子、ヴィーガンの世界に興味を持たれたのでしょうか?

野口シェフ「あるときに食べたプラントベースのムースがすごく美味しくて、新しい可能性を感じました。ここ『ジャヌ東京』は世界中の人が集まり、ウェルネスに力を入れているところに共感し、ここで働くことを決意しました。“グルテンフリー、ヴィーガンに力をいれているところに入りたい”、“クリエイションしたい”と思ったんです。

ヴィーガンのお菓子の世界は、私がイメージしていたヴィーガンのお菓子とは異なりました。“飲みこめない、ぼそぼそしている”それが従来のイメージ。フランス発の植物性代替卵のYUMGO(ユンゴ)など、新しい食材にもたくさん出会えました。」